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イチローの引退試合はまるで映画をみているようだった

3月21日、僕は東京ドームに足を運んだ。
この時はまだ引退はまだ先だと思っていて、日本で見れるのは最後だよなぁくらいの軽い気持ちだった。

初めて見る生のイチロー


僕自身、生のイチローを見るのは初めてだった。予想以上に興奮した。
一塁側のかなり近い席から見る事ができた。
イチローは試合前のバッティング練習から何本もスタンドにボールを運び、なぜ試合で打てていないのだろうと、本当に45歳なのかと思うほど素晴らしいものだった。
試合直前にはエキサイティングシートにいるファンに対して多くのサインを書いていた。サインをもらったファンの人は忘れられないギフトをもらっていて正直羨ましい。どうか、どうかオークションに出店するなどの愚行をしないでいただきたい。

衝撃の通知

試合は静かに始まり、マリナーズがホームランと菊池雄星の好投で優位に進めていた。試合が中盤に差しかかろうとした頃、ちょうど2-3杯目のビールをつまみを片手に飲みながら、うまい、うまいと友人と話していた時、携帯が鳴った。「SmartNews」からの通知だった。そこには、

【号外】イチロー本日の試合をもって引退を表明

衝撃だった...。球場に入ってからの空気でなんとなくそうなんじゃないかという空気は確かにあった。オープン戦でも確かに結果は出ていなかった。でも練習であれだけのバッティングができるならまだまだやれるんじゃないか?と正直に思っていた。
一方でイチローが引退する試合を見る事ができているという事実に感動し、来る事ができて本当によかったと思った。だからこそ、この幸せを噛み締め、打席の動画を取り、自分が「イチローの最後の試合をその場でみていた」という事実を残そうと思った。

イチロー交代

イチローは8回で交代した。しかし、交代時の演出に球場にいる全員が感動した。
通常、交代する選手は守備位置にはつかない。でも今日はイチロー含め、一度ナインが守備位置についた。そのあとにイチローの交代が告げられたのだ。交代と同時にマリナーズの選手やスタッフ全員がベンチ前に集まりイチローを迎え入れた。

これはマリナーズからの花道だった。。

イチローはベンチに戻る最中、ファンへ手を振ることを辞めず、相手チームであるアスレチックスへの敬意も忘れずベンチへ戻っていった。ベンチに戻ると迎え入れてくれた各選手・スタッフとハグをかわし一人一人に声をかけていた。

イチローを敬愛している事で有名なゴードンは「お辞儀」をしてイチローを讃え、今シーズンからメジャーに渡り初先発で堂々のピッチングをした菊池雄星は号泣していた。

感動の一言だった。球場には涙するファンが大勢いた。

試合はマリナーズが5-4で勝利!接戦を見事に制し、イチローのラストゲームを白星(開幕二連勝)で飾った。
結局イチローのヒットこそ見れなかったものの、8回まで守ってくれたこと。4回も打席をみれたこと。それを現地でみれたことが何よりも幸せで、イチローの最後を見届ける事ができた。これは一生の宝になるんじゃないと思うくらい素晴らしい場面を体験する事ができた。野球をやっててよかったと思う瞬間だった。

最後まで待った甲斐があった

試合終了後、普通であればみんな帰宅の途につくのだが今日は異様な雰囲気だった。だれも帰ろうとしない。
アーティストのライブでアンコールを待つかのように、イチローの再登場を待っていた。声援はとてつもなかった。
その期待に応えるようにイチローは再度姿を表してくれた。球場を一周しながら声援を送るファンに丁寧に応えてくれた。

最後はマウンドとセカンドベースの間付近に止まり全方面に帽子をとって挨拶。イチローらしい軽快な動きでベンチに戻っていった。。。

待っている時間は長かった。。結構な時間待っていたからなのか、徐々に帰り出す人々もいた。僕自身も終電が間近に迫っていた。
でも待っている間、「イ、チーッロー!イ、チーッロー!」と大きな声援が止まずウェーブを作り出すほどまでになっていた。こんなことってあるのか。。。と、たとえイチローが登場しなくてもそれだけで待っている価値があったのかもしれない。
イチローが出て来ないわけがないと球場全体が思っていたに違いない。

これは映画だ

この日を振り返るとまるで一本の映画をみている感覚に近かった。
バッティング練習から始まり、試合途中での引退表明、交代時の演出、試合終了後の再登場。
よくよく考えれば、確かに引退の可能性は十分に考えられた。でもそれだけ試合にのめり込んでいたんだろう、イチローをずっとみていたのだろう。

球場で流れる音楽、感動的な演出、この球場で過ごせた約6時間、野球人としてこの場にいれたことを本当に誇りに思う。

日本球界9年間、メジャー19年間、日米通算28年間の努力や残してきた功績の結果が交代のシーンと試合終了後の出来事に繋がっていることは間違いない。

新しくファンになったプレイヤー

この試合をみてマリナーズの1番セカンドを守っていたゴードン選手のファンになった。ゴードン選手はマーリンズでもイチローをプレーを共にしている。
決勝のホームを踏んだヒーロー。なにか縁を感じざる得ない。
この日は彼の涙と眼差しには大きく心を揺さぶられた。彼自身、イチローファンである1人の人間としてこの場に立っていたに違いない。


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