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清く、正しく、美しく生きた、昔の話

教育とは「早いうちに徹底して」やるという事だろうか。
義務教育の集大成でもある、中学校教育。
鉄は熱いうちに打てという通り、
校則や規律というお題目のもと、清く、正しく、美しく生きた私の中学校時代の話をしたい。


私の出身校は、市の名前を称することが許された歴史ある名門学校(ただの市立)であり、大変厳しい学校であった。
なおここから書くことは、「平成時代」の出来事であり、令和の現代では決してない事を心にとめておいてほしい。


ローカル憲法

学校には七不思議のように、誰が作ったか「謎ルール」というものが存在している。
これは国際法や法律よりも遵守する必要のある、憲法ようなものである。
そのローカル憲法的「謎ルール」というものを、私の体験を元に紹介していきたい。


1.帽子を被ってはならない


既にもう意味が分からないかもしれないが、文字通り、いかなる時も被ってはいけない。
日差しが強く熱射病になろうが日焼けしようが、全て自己責任である。
ただそんな中、唯一帽子を被れるのは野球部に所属する部員のみとなっている。

これについては経緯が判明しており、入学1年前に先輩方が、「生徒手帳」「髪型限定(カツオ・ワカメ)」の廃止を要求し、
その代償として、頭髪の規定を緩めるなら、頭髪チェックを行いやすくするよう、学ラン帽を含む一切の帽子の着用を教師陣が禁じたのだ。

え? 地毛の髪の色が明るい人はどうするのって?
黒以外は毎日墨汁で染めてこいと言われ、墨汁を渡してくるやさしさ。


2.他学年交流の禁止


私の出身校では、部活を除いて他学年の交流は一切禁止となっている。
また校門も三学年でそれぞれ分かれており、
下駄箱や教室棟もそれぞれ分かれている。

もし他学年の棟に用がある際は、各棟の入口両サイドに教員詰所があり、そこで名前を名簿に記入後、教員の同行で入ることができ、出ていく際にも詰所で退出時間と確認の印鑑をもらう必要がある。
また、簡単に侵入できないよう、教室は各棟の2階以上に配置しており、窓からの侵入も不可能な徹底ぶりだ。

え? 全校集会はどうしてるかって?
体育館の入場口も学年でそれぞれ別れているがなにか?


3.帰りの放送


学校によっては馴染みがあるかもしれないが、「帰りの会」の前に、放送部が校内のテレビ放送で、本日の伝達事項、落とし物情報、明日の天気や、重要な予定などを伝え放送を終了する。

なお放送が始まる5分前にはブザーが鳴り、全員着席していなければならない。
いざ放送が始まった際には、テレビモニターを注視の上、放送が終了するまで手は腰の後ろで組むか、頭の上で組む必要がある。
放送中は、生徒が手を机に置いていないか、担任が教室内を見回り、廊下からも生徒指導の先生が各教室を確認して回っている。
なお、帰りの放送開始時点で着席できてない場合は、トイレであろうと、生徒指導室に連行され反省文を書かされるのだ。

え? 頭と腰どっちが多いかって?
私の統計では、手を組むのは、頭の上派が2割、腰の後ろ派が8割となっている。


4.持ち物検査


これはどの学校でも必ずと言っていいほど実施されているだろう。
私の出身校では完全に抜き打ちでの実施を行っており、急に校内放送で持ち物検査のアナウンスが流れ、授業中であれ、一斉に廊下に出なければならない。

教師陣は買い物かごを持ち、各机、鞄の中、ロッカー、ゴミ箱、掃除用具入れなどを徹底的にガサ入れし、教室の外へ違反物をもって出てくるのだ。

なお、そのまま教室に入れる訳もなく、制服を脱いでボディーチェックを行い、終了した者から教室に入ることができる。

え? セクハラじゃないのかって?
神聖な教育機関にセクハラなんてないのだ、空港でもボディーチェックで裸になりますよね?(脳死


5.連帯責任


これほど理不尽な制度・ルールがあっていいものかと思うのだが、日本人の空気を読む集団的思考の構築には必須なのだろう。
持ち物検査で問題なものが見つかった場合は「クラス全員」、部室で見つかった場合は「部員全員」、雑巾がけの刑に処され、見つかった物によって往復数と日数(刑期)の判定が変わる。

なお当学校には90mの長い廊下があり、そこが雑巾がけのステージとなっている。
私が地獄を見たのは、所属していた部活の部員が、禁止されているものを持ってきており、夏休み(日曜を除く)毎日雑巾がけ「30往復の刑」を言い渡された。

一日の距離にして、5,400m
夏休み期間に行う、総雑巾がけ距離は27日間あるため、145.8km
、、、今計算してみて絶句である。
当時、計算しなかった14歳の私を誉めてあげたい。

体調を崩し朝から行けなかった日は、教師から家に怒号のような電話があり、夏休みが開けてから不足分を行うよう指示があった。

え? 使用した雑巾の枚数が知りたい?
摩擦で擦り切れて穴が開くため、最低でも10枚は必要である。



今回、私の出身中学の謎ルールを、公開できる範囲の「一部」ご紹介したが、この令和の時代では考えられないだろう。

もちろん私と同世代の方々と話しても、「少年院のほうがまだ人間的に過ごせるのでは?」と言われてしまう始末。
ただこの状況でも不登校者がいなかったのが不思議である。


私はこの体験を通じ、
「清く、正しく、美しく、憎しみの心」をもって、
今日まで強く生きてこれたのだろう。

この記事に一言付け加えるとすれば、
「私の担任教師が、女子生徒と理科準備室で保健の実技実習を行っていたこと、わすれません。」ただその一言を残したい。


#創作大賞2023
#エッセイ部門

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