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ビデオゲームは「中年の危機」を救ってくれる、という話

40歳前後になると、多くの人がいわゆる「中年の危機」(ミッドライフ・クライシス)の状態に陥るといいます。
つまり、人生の後半を迎えて、「自分の人生はこれでいいのだろうか」と思い悩むことによって自己肯定感が低下したり、自分のアイデンティティが揺らいだりする状態です。

僕は1982年生まれで、今月(2024年7月)もうすぐで42歳になります。
基本的には毎日楽しく過ごしているつもりですが、日によってはそのような気分に近づくときもあります。

仕事では、優秀な若手たちに対して、僕自身の能力が自分の職位に見合っていないと感じることもありますし、家庭では、育児のままならなさに無力感を覚えることもあります。

僕にとって、そんな気持ちを和らげてくれるのはビデオゲームです。

ビデオゲームには単なる時間潰しや気晴らし以上の効用があり、中年の危機において起こりがちな「自己肯定感の低下」を救ってくれると感じています。本記事ではそのことを書きます。


自己肯定感の低下を和らげてくれる、ビデオゲームの効用

ビデオゲームにはさまざまな魅力がありますが、僕がここで強調したいのは「コツコツとした努力が報われること」と「他人とのささやかな繋がりを実感できること」の2つです。

1. コツコツした努力が報われること

ビデオゲームほど、人を巧みにモチベートしてくれて、そしてその努力に正当に報いてくれる存在はありません。

ビデオゲームの中では目的が明確に示されるので、方向を間違えてそれまでの努力が無駄になることはありません。
そして、そういった努力によって何かが達成されれば、それはハイスコアや貴重なアイテム、トロフィーや実績といった形で報われます。

ちなみに、僕が今まで遊んだ中で、「コツコツした努力が報われる喜びを味わう」という点で一番素晴らしい作品は『Stardew Valley』だと思います。

現実世界の仕事や家事だと、投入した労力に見合う成果が実感できなかったり、問題が複雑に入り組んでいて、そもそもどういう方向で頑張ったらいいのか分からない場合も少なくありません。

そんな現実世界に疲れてしまったとき、「やるべきことがきちんと明示され、努力すればきちんと報われる」ビデオゲームの世界は、癒しになります。

これは、おそらくほとんど全ての作品に当てはまります。
たとえ『SEKIRO』や『ELDEN RING』のような高難度の死にゲーであっても、「今日はこのボスの第2形態までいけた」とか「この攻撃を見切ることができた」といった感じに、努力と成長を実感できると思います。

『SEKIRO』より。今までで一番難しいゲームだったかもしれません。毎日の努力の果てについにラスボスを撃破した時は、ものすごく嬉しくて、自己肯定感がブチ上がりましたw

2. 他人とのささやかな繋がりを実感できること

現代においては、ビデオゲームで遊ぶことは「他者とのコミュニケーション手段」としてすっかり定着しています。

オンライン対戦・協力プレイは言うに及びませんし、ゲーム実況や配信によるプレイヤーと視聴者との間のコミュニケーションも盛んに行われています。
また、僕よりも少し下の世代だと、とくにゲーマーというわけではなくても、友だちと一緒の時間を過ごす手段としてゲームをプレイするということを、若手の同僚から聞いたりします。

僕自身はそういった彼らよりももう少し世代が上ですので、オンラインのフレンドと一緒に遊んだり、ゲーム配信をしたり、といった直接的なコミュニケーションを取ることはあまりありません。

それでも、X(Twitter)などのSNSを通じて、他の方とのささやかな繋がりを実感することができています。

僕は、日々のゲームプレイの記録をスクリーンショット付きでSNSにポストしています。それに対して、さまざまな方が「いいね」のリアクションをしてくれます。時にはリプライをいただくこともあります。

そんな時は、たとえ憂鬱な日だったとしても、少し楽しい気分になれます。
客観的に見ると僕はただゲームをプレイしただけなわけですが、自分を肯定してもらったような気持ちになるのです。

SNS上でのそんなささやかな繋がりが、僕の精神衛生上とてもポジティブに作用していることを実感しています。

「中年の危機を救ってくれる」ゲームジャンルの代表例

上で述べたように、「ビデオゲームで遊ぶこと」には、中年期に起こりがちな自己肯定感の低下を和らげてくれる、とても良い作用があると思います。

では、どのようなゲームが、そんな作用をもたらしてくれるのでしょうか?

僕の考えだと、仕事や家庭生活に忙しい我々中年世代に特に適しているのは、「短編インディー」と「ローグライト(ローグライク)」ジャンルの作品だと思います。

1. 短編インディー

短編インディーは、1人〜数人程度のチームによって制作され、プレイ時間が1〜数時間程度の小規模な作品を指します。

プレイ時間が短いので、忙しい中でも1日〜数日程度でクリアすることができ、「1本ゲームをクリアした!」という達成感(そして自己肯定感アップ)を手軽に得ることができます。
それでいて、文学性や芸術性を追求した素晴らしい作品が多いので、「単なる時間潰しではない有意義な体験をした」と実感することができると思います。

僕が今まで遊んだ作品ですと、恋愛のささやかな喜びを描く『Florence』、鳥の少女が山の山頂を目指す『A Short Hike』、短いストーリーの中にもSFのセンスオブワンダーが凝縮された『ファミレスを享受せよ』などは、今でも忘れ難い作品です。

『ファミレスを享受せよ』より

2. ローグライト(ローグライク)

また、「ローグライト(ローグライク)」と呼ばれるジャンルの作品も、おすすめです。

数十時間を費やして長大なストーリーを描くいわゆるAAA作品とは異なり、これらの作品における1周のプレイ時間は1時間前後の場合がほとんどです。

また、「死んだら最初からやり直し」というルールは一見シビアですが、プレイを重ね、徐々にスキルを伸ばして、だんだん先に進めるようになってゆく、というゲームデザインは、努力と達成の楽しさを際立たせてくれます。

忙しい毎日の中でも、たとえば1日1周だけプレイして、「昨夜のプレイはこんな感じだったから、今晩はあれを試してみよう」といったことを考えながら過ごせば、昼間の大変なことも乗り越えられる…かもしれません。

『Slay the Spire』『Hades』など、このジャンルにはたくさんの名作が生まれているので、きっと自分に合う作品を見つけることができるでしょう。

『Slay the Spire』

まとめ

この記事では、いわゆる「中年の危機」における代表的な症状である「自己肯定感の低下」に対して、ビデオゲームで遊ぶことがそれを和らげてくれる、ことを書きました。そして、特に効果的なゲームジャンルとして、「短編インディー」と「ローグライト(ローグライク)」を例に挙げました。

我々中年世代は、仕事でも家庭でも中核を担う世代ですから、ビデオゲームで遊んでばかりしていてはいけないことは、理解しています。たとえば、「仕事以外の時間も自己啓発やスキルアップに励みなさい」というのも、もちろん正しい意見なのだと思います。

ただ、それらはすべて、精神的な安定あってこそのものです。腹が減っては戦ができぬように、自己肯定感やアイデンティティに不安がある状態では、頑張ることは難しいです。

そんな時ビデオゲームは、心の緊張を和らげてくれ、精神の安定を図ってくれました。これからも、ビデオゲームは僕の人生に安定と彩りを添えてくれるのだと思います。

(了)

2024.7.14 Itaru Otomaru


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