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三角、四角、丸で考える

論理的思考とかロジカル・シンキングとかはビジネスパーソンの必須スキルと言われていますね。
私がこの言葉を聞くようになったのは2000年くらいからでしたが、なんだか型にはめて考える窮屈で面倒くさいもののイメージがあり、苦手感がありました。
もともと感性の思うままに自由に考えたい方だったので、余計にそう思ったのかもしれません。

論理的思考が鍛えられたなと思ったのは管理職になった頃のことで、さまざまな立場やスタイルの人がいる中で、ややこしいと思えるようなことを如何にしてわかりやすく伝えるかというところからでした。そう、論理的であるとはわかりやすくすることでもあるのです。
また、そのあたりから「思考を型にはめる」ための論理的思考ではなく、「思考を展開する」ための論理的思考なのだと考えるようになりました。

論理的思考について私自身は研修とかで教えることはありませんが、考え方の紹介をするときに、「三角、四角、丸で考えて物事をわかりやすくする」ことなんだと説明すると苦手意識がある人にも面白そうだと思ってもらえています。

どういうことなのか、整理してお伝えしますね。

三角で考える

「三角で考える」はずばりロジック・ツリーのことです。
言わば、ロジカル・シンキングやクリティカル・シンキングで必ず出てくると言って良いものですね。
木が枝を広げてゆくように、一つの要素から別の要素が分岐して、広がってゆくようになるとその全体像は三角形になります。ピラミッド・ストラクチャーと呼ぶ人もいますね。

ロジック・ツリーというと言葉としては新しいですが、ロジック・ツリーについては学校教育でも国語の時間で習ってるはずのもので、「帰納法」と「演繹法」のことです。
上位階層の主張をサポートするデータや根拠が下位に展開してゆく構造で、下位情報が不十分であると上位の主張には無理がある、論理的に不十分であるとなります。

MECE(Mutually Exclusive Collectively Exhaustive)という言葉もありますね。漏れなくダブりなく論理構造が構築されているかが重要で、この構造を作るので苦しんでしまう人もいるのではないでしょうか。
なんのためにMECEでなくてはならないのか、を考えてみると頑張れるかもしれません。MECEであることはそれがチェックリストとして機能することを意味しています。

例えば、旅行に持ってゆくもののチェックリストでも、機械の点検のチェックリストでも良いのですが、漏れていると忘れ物や事故につながりますし、ダブっていると二度手間が発生します。MECEなリストができていたら、上から順番に確認をすればそれで間違いはないのですから。

私がロジック・ツリーを使うのは、物事を因数分解的に分解する時に使います。
アウトライン・プロセッサやマインドマップのようなものを活用して、頭の中にあるアイディアを展開し、そのアイディアを階層化させるのです。
最初からMECEなツリーにはもちろんなってくれません。出てきたアイディアをまとめて行く過程で階層構造ができ始め、上位の主張をサポートするために足りないことがわかるようになります。

分解するときのコツは、まず二つに分けることでしょう。YES(肯定的=であるか)かNO(否定的=ではないか)で分けてみて、その次にYESでもNOでもない三つ目を捻り出します。

フレームワークを使うのも有効ですね。
3C(自社(Company)、顧客(Customer)、競合(Competitor))や4P(Product(製品)、Price(価格)、Promotion(宣伝)、Place(売り方))とか、心・技・体人・モノ・カネ・情報といった一般的なフレームワークでまずは分解すれば、少なくとも第一階層での漏れが出るのを防ぐことができます。

四角で考える

「四角で考える」は、ニ軸のマトリックス分析のことです。
コンサルタントとかがよく使ったり、マーケティングのポジショニング・マップなどでよく出てきますね。

縦と横の2本の評価軸を用意して、それを組み合わせてできた四象限で物事を4つのタイプに強制的に分割する考え方です。強制的に4つに分けているので、MECEになりますし、ロジックツリーよりも簡単かもしれません。
が、切れ味の良いマトリックスを作るのはそれほど簡単ではないですね。

意思決定スタイルのマトリックス

上のマトリックス図は、意思決定するときに人によってスタイルが違うのをマトリックス図で表しています。この詳細な説明は別noteで書いています。
横軸が何を持って最小・最大なのかがはっきりしていないと切れ味の悪いことになりますが、全ての情報を求めるか/求めないかで分けて考えるとスッキリするかもしれませんね。

マトリックスを作る時にはまず軸を作ります
軸を出す時にはできれば二律背反あるいは両極端に分けることができるようなものがよく、どちらもありだというものだと切れ味が悪くなります。
最も単純なのはYESかNOかです。
上のマトリックスでいうと縦軸が選択肢を表わし、それが「一つなのか」「複数なのか」になっているので、はっきりと振り分けることができます。こういうのが切れ味の良い軸ですね。

一本目の軸ができたら、二本目の軸を出すことになりますが似たようなものにするとマトリックス切れ味が悪くなります。切り口として別の角度になっているものを出さなくてはなりません。
例えば、量に対しては質、「相手」と「自分」のように。
フレームワークを使っても良いでしょう。3Cから自社と顧客だけ抜き出して軸にし、「自社にある/ない」「顧客にある/ない」のマトリックスの中に、モノや情報などをプロットしてみると発見があるでしょう。

マトリックスで有名なものには、ジョハリの窓アンゾフのマトリックスポートフォリオ分析などがあります。
いくつか知っておいて使いこなせると便利ですし、賢くみられますね。

丸で考える

「丸で考える」はループ図です。
有名なのはピーター・センゲの「学習する組織」で出てきた因果ループでしょうか。システム思考や複雑系の解析でよく使われますね。

ロジックツリーやマトリックスと違って物事を展開させるというよりは、堂々巡りの出来事が閉じた輪のようにぐるぐる回っており、円を描くことができるため「丸で考える」となります。

ダニエル・キムの「成功の循環モデル」

上の図は、ダニエル・キムの成功の循環モデルです。
人々の関係の質が変わると色々な意見が出やすくなって思考の質が良くなる。
思考の質が良くなるとその先にある行動の質が良くなる。
行動の質が良ければ結果の質が良くなり、結果の質が良ければそれを作り出した仲間同士の関係の質がさらに良くなってゆく…
という好循環を表したものがこのモデルです。

システム思考では、このモデルのような「好循環」や逆に「悪循環」のことを「強化モデル」と呼んでいます。
それとは別に「平衡モデル」というのもあり、こちらはまるでアクセルとブレーキの間を循環しているので安定して変化が起きないというものです。

いずれにしても、現象が閉じた輪の中でぐるぐると回っている状態を表すのに使われるのがループ図なのですが、作ってみて「堂々巡りだからしょうがない」ではなく、このループ図のどこに関わる、あるいは変更を加えることでループが解けるかとか好循環に持って行けるのかのポイント、レバレッジ・ポイント(テコ入れポイント)を見つけるのがループ図の目的です。

例えば、上の成功循環モデルはどこかの質が低下すると悪循環が回り始めるリスクがあります。思考の質が低く貧弱なアイディアしか出てこないと効果的ではない行動になり良い結果につながらず、人々の関係性がギクシャクし出して余計に意見が言いにくくなってしまう…みたいに。
そうなってしまった時にどこにテコ入れをするか、で組織開発では「関係性の質」にテコ入れをすることを選択する、という具合に使っています。

ループ図は一つの円環だけでなく、二つや三つの円環がまるで歯車のように噛み合ってゆくような図として描かれることもあります。
複雑系の分析をする時にはそのような図を描いたりもしますが、「学習する組織」には複数のループが組み合わさってできるシステム原型がいくつか紹介されていますので、参考にしてみると複雑で答えがないと思っていた事象の解決へのヒントが得られるかもしれませんね。


三角で考えるか、四角で考えるか、丸で考えるか。
もちろん状況に応じて最良の考え方を選ぶのが良いのですけれど、私の場合は次のように使い分けているかもしれません。

煩雑に思える物事を分解して分かりやすい最小単位にして、その後全体の構造を見たい場合には三角で考えます。
どんなパターンがあるだろうか、ととりあえず3つか4つに分類がしたい場合は四角で考えるようにしています。
うまく分解ができなかったり軸で切ることが難しい場合には、ひょっとしたら循環してるのかもと思い立って丸で考えてみます。

でも、実際のことをよくよく考えると組み合わせているかもしれません。
最初は四角で考えるところからでしょうか。縦横で4つに切れないと表のようになってゆきます。そこからさらに階層があると分かるとロジックツリーを描いてますね。
要素が見えてきたところで、何が起きているのかの現象として因果関係を見たい時にループ図まで描いてみる…
と言った具合です。
まずは手を動かしてみてしっくりくるものを探していますね、考えてみると。

このような考え方に慣れてくると、物事を考えながら頭の中に「なんとなく三角かな」とか「ぐるぐる回ってるな」とかの閃きが浮かぶようになってきます。そこまで行くとパパッと論理的に分かりやすく物事を整理して説明することができるようになります。

まずは、練習から。
あまり難しく考えず、三角・四角・丸のイメージを楽しみながら、やってみましょう。

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