M-1グランプリ2023の感想

去る2023年12月24日に開催された「M-1グランプリ2023」。僕はリアルタイム配信で観て興奮も興奮。2024年1月30日現在も関連動画を漁っている有様なので、遅ればせながら感想をしたためてみた。
まず全体の感想から入り、それぞれのネタの感想を書いていく。
*ネタの内容に触れたものになりますので、ご留意ください。

全体の感想|観客の心を巧みに掴んだ勝利

令和ロマンの優勝で幕を閉じたわけだが、後から振り返ると、まさに観客の心を巧みに掴んだ戦略の勝利だったように思う。トップバッターでありながら、全員の記憶に残り続けFinal Stageの切符をつかみ、最良と自負するネタで優勝するとは、なんと鮮やかなことか。
最後まで基準であり続けたがゆえの後続の点数の伸びなさは、旧M-1を彷彿とさせた。「トップバッターは不利」という賞レースの常を見事に打ち破り「次のM-1はどうなるんだろう・・?」と思わせるような、新しいフェーズに入っていったように感じた。

・・とまぁ、終わってからなので何とでもいえるが、僕は令和ロマンが好きで応援していた。だから、トップバッターを引いた時は「終わった・・」と思ったし、残り9組の点数が出るたびに胃が痛かった。10組目が終わって点数が出て、Final Stage進出が決定した時は心が躍り上がったし、ラストの結果発表はアドレナリンどばどば脳汁ブシャーだった。

ここ数年のM-1で最も感情がジェットコースターであった。

結成6年目でかつトップバッターの令和ロマンが優勝したことは、インパクトが大きく、ターニングポイントにもなり得る大会なのではないかと思う。

それぞれのネタの感想

First Stage|1組目:令和ロマン

漫才コントや歌を使ったネタが主軸な印象だったため、観客に問いかけるようなしゃべくり系は見ていて新鮮だった。
せり上がりからのおふざけ、丁寧なつかみ、
最初の1分くらいでグッと観客の心を掴んだし、僕も掴まれたうちの一人だ。

素人なので技術的な部分は言えないが好きな件を挙げたい

  • 歩くタックスヘイブン

  • 日体大

  • これあんまり面白くない...

結果、トップバッターでの新M-1だと最高得点だとか。僕らの令和ロマンくん、すごすぎる。
得点が出た時に「モグライダーさんより高いよね」といったようなことをくるまさんがつぶやいていて、相当覚えてるなと思った。

First Stage|2組目:シシガシラ

本ネタは準決勝で披露したネタだった。準決勝ではかなりウケていたが、決勝ではいまいち行ききらなかった印象。
かなり丁寧な構成に感じた。よくある安直なハゲいじりで笑いを取るのではなく、漫才の構成の中にハゲが入っているというのが、2018年のギャロップのネタにも通じる巧妙さを受けた。

なぜそこまでウケなかったのか...
令和ロマンの勢いにおされた格好なのかもしれないが、それにしてもウケなかった。

First Stage|3組目:さや香

2023年の準優勝者がここで登場。何となく、2019年のかまいたちや和牛を思わせる順番に感じた。

本当に熱量があって、パワーを感じる漫才だった。個人的には前回のネタの方が好みだが、段々とヒートアップしていく掛け合いは見事の一言。

お前がコンビニ側だ、とかライト兄弟のくだりが個人的に好きなところだ。

準決勝でも相当なウケだったし、準々決勝でも圧巻だったと聞く。熱の入った掛け合いで彼らの右に出る若手はいないだろう。

First Stage|4組目:カベポスター

カベポスターの魅力は、ゆったりとした入りからの後半の心地よいテンポと綺麗な伏線回収だ。今回も後半にかけてのテンポ感はとても良かった。
カベポスターが得意とする伏線回収的な部分はそこまでという感じだった。
自分は2022年の大声大会や3回戦でやったあだ名のネタの方が好きだった。

ところどころのワードはすごくいい。
「ズッゼリ」は頭に残った人も多いのではないだろうか?アホアホすぎて笑ってしまった。

First Stage|5組目:マユリカ

ずっと決勝を望まれていたコンビ。自分も決勝の場で見ることができることが嬉しい。2022年の敗者復活のネタもとても好きだった。
個人的にはかなりワクワクしていた。
決勝では、準決勝と違うネタをしていた。
人間関係がギスギスしているという設定は、ともすればピリピリしていて入りにくいかなと思ったが、逆に、緊張と緩和というかボケが際立って見えて気にならなかった。

途切れさせない心地いいテンポ、全ボケ、ツッコミがハマっていた気がする。
最後の「ズッキンズッキンプッチン不倫ポンピーン」からの流れは見事すぎる。
こんなん笑っちゃうでしょ。
坂本さんの訳わからんフレーズや文脈のボケは本当に面白い。ネタは多分坂本さんが書いてるのかな。

あとマユリカはどちらも演技がとても上手。二人のキャラクターが毎回うまく活かされている。来年こそはファイナルまで進んでほしい。

First Stage|6組目:ヤーレンズ

こちらも初出場。長らく準々決勝止まりだったところ、2022年の準決勝や敗者復活戦でも話題になったはず。念願の決勝だった。
令和ロマンと毎月ツーマンライブを行っていたことは知っていたので、決勝に進めるというのが個人的にもとても嬉しかった。

準決勝でやったネタだったが、その時には無かったボケも含まれていて、ギリギリまで調整していたんだなと思った。
引越しの挨拶のネタだったが、軽妙なテンポでずっとボケていくスタイルは、最近のM-1決勝進出者だとインディアンスに近いものを感じるのではないか。

少し違うのは、わかる人にはわかる小ネタを挟むところや、ツッコミの出井さんのツッコミ方か。基本あまり声を荒げることなく短くツッコむが、時に乗ってあげたりと面倒くさいキャラクターに出くわすが突っぱねるほどの厳しさがなく、優しさが出てしまうという、
何とも見てみるこちらが寄り添ってしまう(入っていってしまう)感じで彼らの漫才コントの世界に没頭してしまった。

しゃがんで立つ!とか滅ぼしちゃおっかな?とか、本当にくだらない面白さに溢れていた。

サンドウィッチマンの富澤さんがかなりの高得点をつけていたが、ボケやツッコミのスタイルがかなり似ていると思う。
軽快でバカらしいボケと端的にツッコむが時折乗ってしまうツッコミという位置づけに彼らの漫才やコントを見ているようにも思った。

First Stage2位通過。ヤレロマすごいな!と思いながら見ていた。

First Stage|7組目:真空ジェシカ

3年連続決勝進出という、変態的な実力者。大喜利タイプの漫才ではトップクラスだろう。
彼らも準決勝と同じネタだったが、ところどころ変えてきており、普段の雰囲気からは考えられない本気度をみた。

そして今回はZ画館というコンセプトだったが、大分大衆にも分かりやすい題材にして挑んできたなと感じた。ここにも、彼らのM-1への本気度が見えるだろう。
それにもかかわらず、真空ジェシカ色を消さないセンスの光るボケ。

エンジンのスマホ、Z務所、ニヤ崎駿などなど
外さないし、しかも理解できる範疇の絶妙さを感じる。

映画泥棒が買ったくだりは今回の全組みのネタの全ボケで一番笑ってしまった。
準決勝では入れてなかったボケだったと思うが、それをここでバチっと当ててくるのが最強すぎる。

これで上がれないのかー!!
もっと奇抜なことをして欲しかったという評価があったが、それで点数が伸びてこなかったからな...
松本さんはいい距離感だったと言ってくれてたのが自分としては印象的だった。

彼らならきちんと全員を唸らせる内容で2024年もきてくれるだろう。絶対来年はファイナルへ進んでほしい組だ。

First Stage|8組目:ダンビラムーチョ

マユリカ、ヤーレンズ、真空ジェシカと、質の高い漫才コントが続いたあとでの歌(というよりもカラオケという言葉の方が適切か)を題材にしたネタ。

先に言うと準決勝がまぁドカンドカンと受けていた。
決勝はこんなにウケない?と思ったほど。
最初の振りの長さがポイントで、そこで掴まれると後はどんどん深みにはまっていく。

漫才コントが続いて、短いフリとツッコミというテンポに慣らされてしまったのかもしれない。そうなると確かに長く感じてしまうことがあるか。まさに順番の妙。
前半で出てたらどうなってたかと思ったコンビだ。

観客が馴染みのある曲で笑いやすいはずなのに。と思ってしまった。残念でならない。

個人的には「○○モード!!」という部分が好きだ。

First Stage|9組目:くらげ

令和ロマンでかき消されているかもしれないが、彼らも結成年で言えばかなり若い。それで決勝の場に出ることができるのは本当にすごいことだ。

彼らは毎年面白いシステムをネタに落とし込む構成力が魅力。今回もいわゆるシステム漫才だった。

固有名詞を言うだけで笑いを取れるって、やばいでしょ。渡辺さんのあの風貌であれを言うから面白い。
忘れる→列挙→思い出す→全然違うという絶対に笑えるフォーマット。

いやーこれも思うように伸びなかった。

ミルクボーイと重なったという評価もあったが、そっかー。
ニンが見えなかったというのもあったが、まぁそれは確かに。難しいなーM-1。

First Stage|10組目:モグライダー

モグライダーは準決勝で1,2を争うほどウケていた。おそらく優勝候補の一角だったはず。
いやーこんなにウケないか?と思ったが、
準決勝の時よりもともしげさんが滑舌あまり良くなかったかなーとは感じた。

ダンビラムーチョと同じく振りの長さが魅力だったが、順番か...漫才コントの振りの短さとテンポにアオリを受けた形かなと思った。

モグライダーらしいいい漫才だったが、得点が伸びなかった。とても残念だ。

Final Stageの感想

Final StageはFirst Stage1位のさや香、2位のヤ―レンズ、3位の令和ロマンの3組で競い合った。出順は令和ロマン、ヤ―レンズ、さや香の順。またしても令和ロマンがトップバッターとなった形だ。

Final Stage|令和ロマン

令和ロマンは2021年の準々決勝にて披露した「町工場」のネタで勝負。
彼らが出てきた瞬間、令和ロマンの空気感になっていた。
どんな面白いことを言ってくれるのかという期待感があった。
1本目と同じく丁寧なつかみから、最初のボケはじっくり時間を使って爆笑を掻っ攫った。
First Stageでは振りの長さが仇になっていたが、すでにつかみで笑いをとれていたということもあり、そこからどんどんと世界観に引き込まれていく。
どのボケもほぼ刺さって吉本興業の件でクライマックス。悲鳴のような笑いが起きていた。

自分の2021年準々決勝でネタは見ていたが、かなり進化していたのがわかった。吉本興業の件は、自分も涙が出るくらい笑ってしまった。

少しメタ的な要素を入れて、漫才コントの世界観を現実にぐっと寄せたような印象を受けた。これは2022年のウエストランドのネタにも通ずる笑いに感じた。いやーお見事としか言えない圧巻の漫才コントだった。

Final Stage|ヤ―レンズ

2番目はヤ―レンズ。2022年の敗者復活のネタだった。その時よりもブラッシュアップされているように感じた。このネタは、何といってもオチが気持ちいい。一番好き。

彼ららしい、小気味良いテンポのボケとツッコミ。ずっと笑っていられる。

  • 椅子がない

  • んだ

  • バナナと言ったら♪丸美屋♪

  • 湯切りかっこいい

アホアホすぎて全部笑ってしまった。ベンジャミンバトンを話題に出してからのメンジャミンバトン、そしてオチの「ようこそメンジャミンバトンへ」「それは最初に言うんだよ」

アホの中に構成が光る見事な漫才だった。

Final Stage|さや香

SNS上でも大きな話題になった、さや香の2本目。今までの激しい掛け合いから一転、普段ツッコミの新山さんが五則演算と言って新たな計算方式である「見せ算」をプレゼンするというネタ。
見た人はどう感じただろうか?

自分がオンエアの際は「勝ちを捨てに行ったのか?なぜこのネタを選んだんだ?」と困惑しながら見てしまったので、あまり頭に入らなかったことを覚えている。
あまりにも毛色が違いすぎて思考停止になってしまったのだと思う。

しかし、改めて見るときちんと面白かった。構成や大喜利の面白さでなく、「なんか変なことをそれっぽく演説している、訳のわからない面白さ」。

そう思うと石井さんが見ている人の代弁者になってくれているので、きちんと役割があるなと感じる。同じリアクションをしてくれているから面白くなっている。

2022年にもし優勝していたら、見せ算が見れなかったのだと思うと、言い方が良くないが2023年も勝ち上がってきてくれてよかった笑

そして結果発表

結果発表がまたドラマチック。ヤ―レンズと令和ロマンが今後に開いていき、最後の松本さんが誰を選ぶかで勝敗が決するという初めての事態に。
手に汗握るラスト。観客側も悲鳴のような歓声が上がっていたように思う。

結果4票を獲得した令和ロマンが優勝。結成5年目という若さで王者の称号を手にすることとなった。

最後に

令和ロマンを応援していた手前、こんなにも手に汗握ったM-1は初めてだった。2024年も出場すると発言をしているが、さてどうなるのか・・。
個人的にはとても楽しみだし、またどんな漫才師がファイナリストになるのか、今からワクワクが止まらない。

First StageはLeminoとYoutube、First StageはLeminoで視聴可能だ。ぜひ見ていただきたい。

🔲First Stage(出順でリンクを貼っています)

🔲Final Stage


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