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乃木坂46の楽曲を一日一曲語る。5日目『失いたくないから』

_______【この記事の構成】_______
▼今日のこばなし

本題の伏線になる時とならない時がある雑談

▼『○○』の基本データ
作編曲、歌唱メンバー、MV等の情報

▼『○○』を語る
愛と飛躍に溢れた考察

▼おわりに
総括とキメ台詞



▼今日のこばなし 

「教室のストーブ」

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少し前のことだが、大学のキャリア教育の一環で現役小学校教員の講演を聞く機会があった。
教職のブラックな実態や深刻化する登校拒否について包み隠さず話してくれる先生で、とても興味深かったのを覚えている。

しかし、そんな中で最も印象に残ったのは、その先生が務める小学校の教室にある、備え付けの石油ストーブの写真であった。
その時の率直な感想はこうだ。

「乃木坂の歌詞に出てきそうだなぁ」

そのストーブは教室の後ろに設置されていて、筒状のパーツと直方体のパーツを合体させた構造になっていた。周囲は金網で囲われていた。
かなり大きくて燃費の悪そうなフォルムは古めかしさを帯びていて、冷えた体を温めようと児童たちが教室の後ろに集まってくる風景を切り取った写真に、筆者はノスタルジーを感じた。

ストーブ

https://comfylife.info/f-stove/

秋元先生、次のシングルにぜひ!


▼『失いたくないから』の基本データ

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▼収録 / 発売日
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1stシングル『ぐるぐるカーテン』Type-C / 2012年2月22日

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▼作詞 / 作曲 / 編曲
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秋元康 / 蛯原ランス / 塩川満己

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▼歌唱メンバー
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生田絵梨花、生駒里奈、市來玲奈、井上小百合、川村真洋、齋藤飛鳥、斉藤優里、桜井玲香、白石麻衣、高山一実、中田花奈、永島聖羅、中元日芽香、西野七瀬、能條愛未、橋本奈々未、畠中清羅、深川麻衣、星野みなみ、松村沙友理

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▼センター
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生駒里奈、生田絵梨花

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▼MV(ミュージックビデオ)
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 監督:丸山健志


▼『失いたくないから』を語る

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・名前をつけてやる

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この曲の登場人物は二人。わかりやすくするために、名前をつけておこう。

コンバースボーイ・・・奥手な男の子。

白シャツガール・・・コンバースボーイが思いを寄せる相手。

『失いたくないから』はコンバースボーイの内なる葛藤を歌った曲である。


・斜めに見える青空?

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水道の蛇口
顔を近づけ
冷たい水
喉に流し込む
斜めに見える
あの青空が
どんな時も僕の味方だった

- 出典『失いたくないから』/ 作詞:秋元康 作曲:蛯原ランス

「斜めに見える青空」とは一体なんだろうか。筆者はこう解釈した。

蛇口をちゃんと上に向けないで、顔をひねるように近づけて水を飲んでいるときに、まるで空が傾いているように見える。

なんと圧倒的な青春感であろうか!
『失いたくないから』にはこの他にも「学生鞄」や「体育館」などの青春を連想させるモチーフが散りばめられている。

これらのモチーフがもたらす効果については、“春”さんという方がnoteの記事で的確に示している。

歌詞の内容は、具体的な場面を時系列的に描くのではなく、断片的に風景やモチーフを各所に配置することで、聴いているうちに(勝手に)自分の体験を呼び起こして重ねてしまうようなものになっている。

引用元:https://note.com/springisintokyo/n/ne86012b899a9?magazine_key=mb1e2f16fd13b

『失いたくないから』は聴き手の「青春時代の思い出・後悔」が魂となって乗り移りやすい曲なのである。

そして、それは筆者も例外ではない。。。


・友情と恋情のジレンマ

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心の中に
静かに風が吹き始め
ふと本音が騒ぎ出す
誰かを好きになるのは
一人になりたくないから

- 出典『失いたくないから』/ 作詞:秋元康 作曲:蛯原ランス

わかり味が深すぎてつらい。

コンバースボーイを悩ませているのは、「好きと言う勇気が出ない」ことではない。

彼は、「好きということを認めて恋にしていいのか」悩んでいるのだ。

 
彼にとって一番の幸せは、白シャツガールと一緒に居られることである。これは、恋情より友情に近い。

しかし、不意に彼女への「好き」の気持ちがあふれてしまう瞬間があるのだ。
もしその気持ちを恋だと認めてしまったら、その先には「告白」が待っている。

無事に恋が実れば万々歳だが、場合によっては友達ですらいられなくなる可能性もある。

「一人になりたくないから誰かを好きになるのに、それを恋と認めて告白したらその人を失ってしまう可能性がある」

この友情と恋情のジレンマがコンバースボーイにとって、いや、筆者を含む全宇宙の奥手な男子にとって普遍のテーマなのである。


コンバースの紐
直す振りして
君のことだけ
ずっと見ていたよ

- 出典『失いたくないから』/ 作詞:秋元康 作曲:蛯原ランス

 上記のジレンマに悩まされるコンバースボーイに今できることと言えば、靴ひもを直すフリして白シャツガールのことをずっと見るくらいなのだ。
しかし、それがなおさら彼の純粋さを際立たせている。
『コンバース』という絶妙なワードチョイスとも相まって、サビは不思議と爽やかな印象に仕上がっているのだ。

 

ひっくり返した
バケツの後で
体育館の上
虹が架かってる
一緒に眺めた
僕らの空は
恋の仕方 教えてはくれない

- 出典『失いたくないから』/ 作詞:秋元康 作曲:蛯原ランス

「ひっくり返したバケツ」は土砂降りの雨の比喩である。

コンバースボーイの理想は、

彼女を好きな気持ちはただ自分の胸の内にしまっておけばそれでいい。恋愛じゃなくていいから彼女と一緒にいたい

といったところだろう。

しかし、こんな悟りの境地みたいなことが実際に可能なのだろうか?

答えはNOだ。
少なくとも虹を一緒に眺めているとき、「恋」や「告白」の言葉が彼の脳裏をよぎっているに違いない。
だからこそ、頑張って悟りを開こうとしていた時は「僕の味方」だった空が、虹を見ている時には「恋の仕方 教えてはくれない」のだ。  


▼おわりに

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一応言っておくと、今回は説明しやすいようにコンバースボーイ白シャツガールとしたが、これはコンバースガールの可能性もある。
『失いたくないから』は誰が聴いても懐かしく思えるから名曲なのである。

『失いたくないから』が帯びるノスタルジーと懐の深さは、「教室の後ろのストーブ」のそれに近いのかもしれない。

では、また明日。stay tuned!



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