水インフラと政治の関係

はじめに
本稿の趣旨は、SDGsの目標6番の達成に向けた、具体的な解決策の提案にある。
本稿における”水”とは、主に飲用水、生活用水のことを指す。また、”水インフラ”はそれらを包括する浄化施設、汚水処理施設を含めた上水道、中水道、下水道、及びそれらに供給される水資源の源となる川や湖などを指す。また、地域によっては上水道を整備せずとも、その場で安全な水を採水可能な天然の井戸等が整備され、生活用水の源となっている場合もある。その場合、それらの給水施設も全て”水インフラ”の一部とする。

政治権力を保持・維持するために必要な人の数
北朝鮮や中国のような一党独裁体制を敷く国家からアメリカや日本などの民主主義国家も含め、世界の多くの国の国家体制は、多かれ少なかれ” トップダウン方式”といえる。いかなる政治体制の国であっても、政治は政治権力を保持、維持することが目的であるとして、その保持のために取る行動様式は同じである。指導者が権力を握るために必要な人の数は国によって異なる。例えば、日本の場合だと、総理大臣は国会議員による指名で決められる。現在、衆議院、参議院議員の定員はそれぞれ、465人, 248人であるから、ある政治家Aが総理大臣となるために必要な国会議員の議員票数は約357票となる。衆参両院ともに一人一票であるため、ある政治家Aを支持する国会議員357人を国会議員選挙で当選させる必要がある。具体例を用いると、自民党の安倍晋三氏率いる安倍政権の2017年の衆議院比例代表選挙において、全国の有権者の総数は106,091,229人で、実際に選挙に参加した有権者の数は56,947,831人、自民党・公明党の得票数は25,533,429票であった。つまり、全国民のうち、約2500万人の人々の支持が、当時安倍氏が政治権力を保持・維持するために必要な人の数と言える。
この、ある政治家がリーダーとなり、政治権力を保持・維持するために必要な人々の数、国によって大小こそあれど、例外なく存在する。これらの人々の支持さえあれば権力が握れる。言い換えれば、これらの人々の支持なくして権力を握ることはできない。

広範囲に渡るインフラ整備と政治権力の関係
政治権力を保持・維持するために必要な人数が多く、かつ、彼らが様々な地域に分散すればするほど、インフラ整備は広範囲に渡って行われる。なぜなら、先述の”ある政治家がリーダーとなり、政治権力を保持・維持するために必要な人々”に対して、リーダーは常に十分な支持に対する報酬として対価を支払わなくてはならない。この報酬とは、物品や金銭に限らず、道路や水道などのインフラ、病院などもそれに含まれる。よって、”ある政治家がリーダーとなり、政治権力を保持・維持するために必要な人々”が様々な地域に分散すればするほど、彼らの為にインフラが広範囲に整備され、”ある政治家がリーダーとなり、政治権力を保持・維持するために必要な人々”以外の人々も、そのおこぼれに与る形で、水道などの水インフラを含めた様々な公益にアクセスすることが可能になるのではないだろうか。

水インフラが整備されることで得られるメリットの一例
カメルーンの一部地域では、年端も行かぬ女の子たちが遠く離れた水くみ場まで何度も水を汲みに行くといった重労働を長時間に渡って強いられ、教育を受けることができなくなっている。カメルーンは降水量も多く、水インフラが広範囲に渡って整備されれば、多くの国民が安全な水にありつける。しかしながら、殆どのカメルーンの一般家庭に水道は無く、先述のような状況が慢性的に続いている。適切なインフラ整備が行われ、それにより重労働の水汲みから開放された子どもたちが、教育を受けることができるようになれば、カメルーンの発展のみならず、世界の発展に寄与するであろうことは言うまでもない。

あとがき
インダス川やガンジス川など、大小様々な河川があり、比較的水資源に恵まれた立地といえるインドにおいて、農村部の飲料水供給の水量や時間が限られていたり。水インフラの整備が行き届いておらず、先述の年端も行かぬ女の子たちが遠く離れた水くみ場まで何度も水を汲みに行くといった重労働を長時間に渡って強いられ、教育を受けることができなくなっている現状が当たり前のようになっているカメルーンの一部地域。他にも書ききれないほどの多くの問題が、水インフラの不足が間接的・直接的な要因としてある。これら諸問題の解決の為、しばしば先進国主導による水道設備の建設や、汚水を飲料水とするための浄化剤の提供などが行われている。しかしながら、このように、飢えた人々に魚の釣り方ではなく、魚を与えるようなやり方で、長期的な効果が得られるかは疑問である。飢えた人々がこれから先、長い長い繁栄を掴み取るためには、上から与えられた設備ではなく、彼ら自身が主体となって必要なものを作っていくことである。いわば、魚ではなく、魚の釣り方を身につける必要があるといえる。そのためには、その国、地域におけるより多くの人々の声が、国、地域の指導者のもとへと届き、その声を聞いた指導者がそれに応えるといったプロセスが円滑に実行される政治体制を整備する必要があると私は考える。

参考文献・資料など
総務省自治行政局選挙部, “第48回衆議院議員総選挙・最高裁判官国民審査結果調”
Bueno, M. B., & Smith, A. (2011). The Dictator's Handbook: Why bad behavior is almost always good politics. PublicAffairs.
松本 京子, 星野 敏, 橋本 禅, 清水 夏樹, 地域社会における飲料水管理の実態と課題, 農村計画学会誌, 2013, 32 巻, Special_Issue 号, p. 173-178, 公開日 2014/11/20, Online ISSN 1881-2309, Print ISSN 0912-9731, https://doi.org/10.2750/arp.32.173, https://www.jstage.jst.go.jp/article/arp/32/Special_Issue/32_173/_article/-char/ja, 抄録:


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