【#短編小説】私より足のサイズが小さな子が羨ましかった
私より足のサイズが小さな子が羨ましかった。不自然ではない高い声が出せるよう部屋でこっそり練習をした。だから私は、どんどん私ではなくなって、友達とふざけた写真を撮るようになってしまったのだ。
「友達の正体は友達ではなく、友達らしきものであることは、ずっと、ずっと、わかっていたのに」
そんなことを思ってしまう私は、性格が悪いのだろう。でも、あの子たちのグループに入れたのだから、まあまあマシな顔をしているのだろう。
「そんな私も」
いつか母親になり、父親を名乗る人と暮らすのだろうか。
「そんな私が?」
マンション? 一戸建て? 私は働きに出ているのかな?
「そんな私は?」
世帯年収は? 近所付き合いは? 家族の寿命は?
猫は、飼っていますか?
「え? ごはん? 私まだあんまりお腹すいてないし、やらなきゃいけないこともあるんだけど……え? ああ、今日あいつ塾だっけ。はいはい、弟のことあいつって言ってすみませんでした!」
そんなことより、そんなことよりさ。私は、明日友達モドキたちと遊びに行くための服を決めないといけないんだよお母さん。嫌だなぁ。憂鬱だなぁ。みんな、私より細くて足が小さいんだもん。
「死ねばいいのに」
痛みなく安らかに誰も悲しむことがない“奇跡”が起きて死ねばいいのにね。友達モドキたちか、私の、どちらかがさ。
「なに? あーうん! もうすぐ選び終わるから先に食べてて。え? あー。うん。わかったってば。後にする後にする。後にするって。塾でしょ? わかってるって!」
でも。なんだかんだ、なんだかんだね。
「お母さん、本当に昔私と同い年だったの? それとも時代が……あーごめん! 怒らないで怒らないで。お母さん大好き、みんな大好きだから」
あいつらと遊ぶのって、楽しいんだけどね。これって実は、友達、ってやつなのかな。
おしまい
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