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ノースカロライナのコールスロー(糖質制限)

ノースカロライナは私の聖地だ。学生時代に人生が変わるようなひと夏を過ごした。

一言で言ってしまうと語学留学をしたのだが、いろんな国から来たいろんな人たちと大学の寮に滞在し、カフェテリアで三食ごはんを食べ、大学内で英語を学び、平日の夜や週末は、ミュージアムや植物園や野球を見に行ったり、本当に盛りだくさんの毎日だった。真剣に学び、遊び、忙しかったけれど、大変だったけれど、学ぶよろこび、お互いを労い認め合うよろこび、など、魂がふるえる体験をした。一瞬たりとて無駄にすごした時間がなかった。最後はみんな、先生たちまで泣いていた。みんなの愛や思いやりがそこにはあった。英語が学びの途中でも、文化は違っても、意見が違っても、心は通い合わせられる、そして気の合う人というのは、国やことばを越えても存在し、人それぞれ違う、という気づきもあった。

そんな聖地に、2年前に再訪した。

あれから四半世紀あまり。私も変わったが、キミも変わり果てたなぁ。行ってみてまず驚いたのが、キャンパスの大きさ。大きな国の大きな大学のキャンパスなのに、ほんの小さなエリアで生活していたことに驚いた。初めての外国で当時は何とも思っていなかったけれど。なつかしい円形校舎を探したが、見つからないまま寮に到着。あれ?たしか、寮から徒歩10分もないくらいじゃなかったっけ?だって、お昼休みはみんなで歩いて帰ってランチをとっていたから。おぼろげな記憶を頼りにうろうろ歩き、やっと、校舎がなくなり庭園になっていることに気づいた。時間が経ちすぎ、周りの風景が変わっているのと、自分の記憶もあいまいなのでセンティメンタルにもならず、正直、拍子ぬけした。

アメリカだけでなく、世界中の街がどこも似たような感じになってきていると、他の人も言っていた。この場所に戻ってきたら、あのときの感情が蘇ってくるか興味があったけれど、場所が問題なのではないと気づいた。あの日〜あのとき〜あの場所でキミに会えなかったら〜、ではないけれど、私の魂のふるえる体験は、あのとき一緒に過ごしたゆかいな仲間たちと作り出したもので、本当に特別でミラクルな体験だったのだとあらためて思った。

キャンパスを歩きながら、私のアタマ(ココロ?)の中にはいろんな思いがめぐった。ほんの数時間の滞在だったけれど、実際の目で見たものよりは、アタマとココロの旅の方が深かったけれど、それでも行ってよかった。その後、この旅のメインイベント、数年前に移住した夫の親友、ジョージを訪ね、Ashville に向かった。Ashville はグルメでオシャレな街なので、いろいろおいしいものをいただいた。当時はまだ炭水化物を普通にとっていた。

ノースカロライナといえば、バーベキューとクラフトビール!ジョージがまずは地元の有名なバーベキューレストランに連れて行ってくれた。私はベイビーバックリブが好きだ(った)。子ぶたちゃんのことを思うと心は痛むけれど、柔らかいお肉が好きだ(った)。最近はまったくごぶさたなので、今でも好きかどうか、定かではない。正直、そのお店で覚えているのはコールスローだけ。マヨネーズを使っていないのが衝撃だった。ノースカロライナはバーベキューソースもビネガーベースでサラサラしている。ここのコールスローは、日本の甘酢漬けみたいだった。

ノースカロライナの旅は素晴らしかった。雨が多かったけれど、食べものはいちいち全部おいしいし、人々は気さくでいて、リスペクトを感じる。サザンアクセントも何だか耳に心地よい。でも他の州からの移住者もたくさんいる。地元のブルワリーにも行き、変なラーメンまで食べた。食べてばかりいる訳にもいかないので、ハイキングもした。山の頂上まで行ったら、霧で視界ゼロだった。夫とジョージはフライフィッシングにも行った。地元ではよく一緒に行っていたので、積もり積もる話を楽しんだらしい。私は気を利かせて一人でハイキングに出かけたのだが、ジョージの方が私を気にかけ、お守りにとごっついナイフを貸してくれた。「これでどうせえっちゅうねん?」 と思ったが、心配してわざわざ持ってきてくれたという心遣いがうれしかった。こっそりポケットにしのばせた。夫はいつもどおり、まるで根拠のない「大丈夫」の一点張りなので、ポケットに手をしのばせた(うそ)。それぞれがそれぞれに楽しい時を過ごし、別れは少々つらかった。

家に帰って、衝撃のコールスローを再現しようとレシピを探した。油をぐらぐら煮てキャベツにかける!? 衝撃だった。その夏はすっかりハマって、何度も作って食べた。ただ、おいしいけれど、なぜかもやもやする。これは何なのだろう、とずっと思っていた。

そしてこの夏、そのもやもやの原因がわかった。Keto 用にレシピを変更し、今までサラダ油と砂糖を使っていたところ、アボカドオイルと砂糖代用甘味料に切り替えた。すると、もやもやを感じなくなったことに気づいた。前は「サラダ油と砂糖?こんなに入れるの?」とギョギョギョと思いながら作っていた。ギョギョギョの気もちか調味料か、どちらが真の原因かはともかく、調味料を変えたところギョギョギョと感じなくなり、食後もすっきりしていた。もう一つ、大きな違いはキャベツをまるごと入れた。もちろん切り刻んで。アメリカではサラダバッグをいうのを売っていて、シーザーサラダ、アジアンサラダ、コールスロー用といろいろ種類がある。コールスロー用はキャベツとにんじん、たまに赤いキャベツも混ざって刻んだものが入っている。量が少なめで刻む手間が省けるので便利なのだが、「このキャベツ、いつの?」というくらい鮮度と味が落ちる。二人暮らしの我が家でキャベツやレタスを一玉買うと、うさぎのように食べるしかなくなる。

アメリカで一般的なキャベツはまんまるでかたいので、そのままザクザク切って料理する。日本でおなじみのキャベツは、台湾キャベツと呼ばれている。ノースカロライナのコールスローはアメリカキャベツで作った方がシャキシャキとおいしい。日本のキャベツだとしんなりしすぎてしまった。シャキシャキ派の方は、手早く混ぜて、油が早く冷めるようにするといいだろう。

ノースカロライナのコールスローのレシピ
材料
キャベツ 半分
にんじん 1/4本、たまねぎ 半分、ピーマン 1個(いろどり)
アボカドオイル 1/3 カップ (ニュートラルな油)
アップルサイダービネガー 1/3 カップ (まろやかな酢で代用可かも)
砂糖代用甘味料 油と酢と同量(私には甘すぎたので、大さじ2?お好みで)
塩 小さじ1
こしょう 小さじ1/2
セロリシード 小さじ3/4(なかったら、セロリを刻んでも入れてもよいと思う)

作り方
キャベツを細かく刻んでボウルに入れる。 
にんじん、たまねぎ、ピーマンも細かく刻む。
アボカドオイル、アップルサイダービネガーを小鍋で中火にかける。沸騰したら、砂糖代用甘味料、セロリシード、塩コショウを入れて混ぜる。
弱火にしてにんじんとたまねぎを投入、1分煮る。
ピーマンを入れてさらに1分煮る。
刻んだキャベツを入れたボウルに、小鍋の中身を投入。熱いうちによ〜く混ぜ、キャベツがしんなりするまで放置。半日置くと味がしみてぐー。

我が家には、アロルースという砂糖のような粉と、ステヴィアの液体がある。アロルースは砂糖と同量で使えるので便利で料理に使うが、砂糖よりは甘く、ステヴィアよりはまろやか。ステヴィアは1滴で小さじ1以上の甘味があり、かなり甘ったるいので慎重に。パウダータイプもある。

このコールスロー、独立記念日の集まりに持って行って好評だった。 

独立記念日はクックアウトと言って、庭や外でハンバーガーやバーベキューをして、家族や友人で集まる人が多い。私たちはハンバーガーとコールスロー、ポテトサラダやポテトチップスも食べた。久しぶりでおいしかった。1週間ほどたって、自分の気もちが落ち着いて元に戻ってきたことに気づいた。祝日の後で心が荒れていたのは、うちの狩猟犬の教育をめぐる夫婦間の意見の対立だと思っていたのだが、はて、食事も関係があったのか、と今になって思う。

地元のポテトチップス。魅惑のポテトチップス。原材料はじゃがいも、塩、油だけ。サラダ油だけど。おいしかったな。次回、また様子を見てみよう。食べたいものは感謝して楽しくおいしく食べる。たまにはいいさ〜。

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