痛みだけがわたし

うれしかった。どうでもいい人に傷つけられるよりも大好きな人に傷つけられたい。うれしかった、うれしかった。
傷つくたびに、この痛みがどうか永く続きますようにと思う。そしてあっさり失くして、なめらかになった胸をさする。痛みを探している。

日々にわたしの皮膚はあり、毎日誰かが爪を立てて引っ掻く程度の傷をつける。そうしてささくれた体を、たまに頭から被るくらいの絶望が包み込んでくれるときに、ようやくわたしは安堵して横になることができる。そのくらいわたしを悲しませるものは一つしかないからだ。その種だけが頼りである。

乾いた落ち葉を踏むような「ぱり、」という音がわたしの奥に聞こえた。明確に傷ついたとき、傷つきたいときにはっきり耳にする音だ。この瞬間にわたしが傷ついたことを心に留めさせる音だ。この音と共におとなになってきた。この音「だけ」がわたしをおとなにしてきた。

あなたのためにならまだなんでもできる
と思って横になった昨日の晩。

もう切れた。痛みを探している。

痛みだけがわたし。

身体だけ見ないで。そのわたしは半透明。半透明にしないで痛みを見て。一番ほしかったのは、わたしを遠く拒絶するときに「きっと傷つくだろうな」って想うこと、ただそれだけ。

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