日本のアニメーションの歴史をまとめてみる~戦前~

Web上に日本のアニメーションの歴史が簡単にまとまった資料があまりないと思ったので、ざっくりまとめてみる。

一から書くのは骨が折れるので、日本を代表するアニメーター井上俊之さんが過去にまとめた下記の年表をベースにする。

今回はこの年表の一番左、1960年代より前の部分を扱う。

元は2013年に行われたアニメーション業界人向けの講座で使用された資料だ。年表の元ファイルは

注意点として、上記のリンク先にもあるように、あくまでこの年表は井上俊之さんの作画史観に基づいて作成されたものであり、したがって数あるアニメに関わる役職の中でも作画、つまりアニメーターから見た歴史であるということを断っておく。

また、私はこの講座には参加していない上、専門家ではないので、年表に関して、井上さんとは違う説明をしてしまうかもしれないし、間違っていることもあるかもしれない。
そういったことがあったら、どなたかに指摘してほしい。

さらに、私はあくまで年表を軸にしてまとめていくだけであり、本文はその補足として書いていくものだ。
分かりやすさを重視するため、いくつか出来事を省略することもあるし、人物名がなるべく少なくなるように調整することもある。
この点はご了承願いたい。

すべて書くと長くなるので、今回は手始めに戦前から1950年代までのアニメーションをざっくりとまとめる。

戦前のアニメーション

いきなり年表には存在しない話で申し訳ないが、まずは日本で最初のアニメーションについて書く。

日本で最初の商業アニメは1917年に公開された『凸坊新畫帖 名案の失敗』(下川凹天)だと現時点ではされている。

この辺は不確定な要素が多いので、今後変わるかもしれない。
一昨年まではずっと『芋川椋三玄関番の巻』(下川凹天)だと言っていたのに、去年出されたで、実は『凸坊~』の方が公開が早かったんじゃないかということになった。

1917年には他にも、『猿蟹合戦 猿と蟹』(北山清太郎)、『なまくら刀(塙凹内名刀之巻)』(幸内純一)などがある。
この下川凹天北山清太郎幸内純一の3人を日本で最初のアニメーション作家とするのが一般的だ。

これらの最初期のアニメーションは実験的な意味が大きかった。

当時いくつか海外の短編アニメーションが封切られ、それらに触発された映画プロデューサーたちが、新しい技術を試してみようと、漫画家や美術家を呼び寄せて作らせたものが、たまたま同時期に登場したのだ。

この後のアニメーションは、劇場映画の前座としての短編教育映画に活路を見出し、多数の作品が作られていく。

それらの中でも特筆すべき作品が、『くもとちゅうりっぷ』(政岡憲三)だ。

『くもとちゅうりっぷ』は1943年に公開された作品で、戦中にありながら戦意を高揚させるような表現はなく、年表にもあるように、シンプルな線立体的なフォルムで、てんとう虫とそれを狙うクモを描いた叙情的な作品だ。

この作品を制作した政岡憲三「日本のアニメーションの父」と言われる人物だ。
日本動画研究所設立の後、松竹動画研究所に招かれてこの作品を制作した。

当時は切り絵によるアニメーションが多かった中、全編セルで制作されたフルアニメーションというハイクオリティな作品は好評を得、その後もいくつか作品が制作された。

しかし、戦況の悪化から1945年、松竹動画研究所は閉鎖されてしまう。
同時に政岡憲三は独立する。

年表では「日本動画研究所→東映長編」となっているが、実際にはもっと複雑だ。ここではいくらか省略して紹介する。

戦後間もなくの1948年、政岡憲三は日本動画株式会社を設立する。
この会社は主に教育映画を製作していたこともあり、成城高校の教室を間借りしていたそうだ。

しかし、会社の業績と視力の悪化を理由に政岡憲三は途中でアニメーションからは引退してしまう。

日本動画はその後、日動映画株式会社に商号を変える。

この頃の日動映画を支える人物は主に4人いる。
年表に出てくる森やすじ、その他、山本善次郎藪下泰司大工原章だ。

1956年、日動映画は東映に買収され、東映動画(現・東映アニメーション)株式会社になる。
日動映画の業績が振るわない中、東映の社長(当時)に買収してくれないかと持ちかけたのだという。

当時は戦後になってディズニー映画が国内で見れるようになっていた。
そんな中、「東洋のディズニー」を目指すことで見解が一致し、東映動画の誕生と相成ったのだ。

次回に続く(かも……)


戦前の作品たち

戦前の作品はというサイトで多く紹介されているので、興味がある方は一度見てみるのがおすすめだ。

他にも、この頃のアニメーションの研究者であるさんや、さん、渡辺泰さん、山口且訓さん(現在は宝くじ研究家)、津堅信之さんの著作を追うと、詳しくなれるかもしれない。

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