旭鉄工のDXは「IoTを使ったデータドリブン経営による競争上の優位性確保」

勘と経験の経営は遅いし的外れ

 私が来るまでの旭鉄工の経営判断は勘と経験でしかなく、判断は遅いしやることは的外れだし、経験の無いことはできないので従来通りのやり方をひたすら踏襲していました。
 旭鉄工はIoTを使った改善事例として知られています。しかしながらともするとIoTのシステムだけに注目したり、木村社長だからできるとか旭鉄工の従業員が優秀だからできる=自社ではできないと考える経営者が多いようです。なぜ旭鉄工が効果を出せているかというと、IoTシステムを自社開発したということより「データドリブン経営を行う仕組みを作り上げた」おかげです。
 データドリブン経営とは「データを活用して意思決定を行い、業績向上を目指す経営手法」と言っていいでしょう。しかしながら「様々なデータを収集・分析してパターンや傾向を把握し、その結果に基づいて戦略や施策を立案・実行する」といった解釈も多いようです。マーケティングなどはそういうことになるでしょうし、製造業でもそういった考え方ができる部分もあるでしょう。しかし、旭鉄工はもっとシンプルに、より経営に近い部分に適用しています。

デジタルと現地現物でPDCAを回す

旭鉄工のデータドリブン経営とは
P デジタルで問題を確認
D 現地現物で対策
C 効果をデジタルで確認
A 現地現物で次のアクション
を回すことであり、高速化のためにIoTを使っています。

iXacs(IoT)でPDCAが速く回る

従来のアナログな経営でももちろんPDCAを回すことはできます。
しかしながら、IoTを活用することで
・人手に頼らないので低コストで問題を発見でき
・問題の大きさが定量的に把握できるので優先順位付けができ
・数値の中身がドリルダウンできるので詳細を確認できる
ため、短時間で安くPDCAを回すことが可能になります。

IoT活用は製造現場にとどまらない

この「データドリブン経営」は製造現場のカイゼン活動のみを対象としているわけではありません。製造現場がIoTデータを活用して労務費低減活動を行うのはもちろんですが、各種経費の削減、最近ではCO2排出量の削減に活用しています。また、IoTを使って製造ラインの実力が正確に把握できることでこれまで丼勘定だった原価把握も正確になりました。そしてほぼ全ての製品の原価を確認し売価と比較したところ多くの部品が赤字であることが判明、徹底的な黒字化のためのカイゼンを行いました。営業は正確な見積もりを作成によりしっかり利益を出す受注が可能になりました。その交渉においてもしっかりしたデータがあるため交渉力も向上してます。昨今の電力料金や材料費の高騰に伴う値上げ交渉を行っている会社も多いと思いますが、その際にキチンとしたデータがあるかないかは大きく影響します。
 このようにデータを活用してPDCAを回すやり方が全社的に浸透しており、旭鉄工のDXは「IoTを使ったデータドリブン経営による競争上の優位性確保」と言えます。

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