勝ち組女子の古い靴下 how to use


はじめに

 今回は、足フェチというか靴下フェチな話。

 最近パソコンのデータ整理をしていたら、「靴下コンペ」という名前の謎ファイルが見つかった。最終更新は1年以上前。いったいなんじゃこりゃ。そう思いながら開いて読んでみたら……自分でいうのもなんだけど、これがけっこうおもしろかった。というわけで、せっかくだからnoteにアップしてほかの人にも読んでもらおうと思った次第。

「靴下コンペ」は約2千字の文書。このファイル、R18小説のフォルダ内に紛れこんでいたものの、けっして小説ではない。TwitterのDMの下書きとして保存していたものだ。たぶん、保管場所に迷って、なんとなくR18小説フォルダに突っ込んだんじゃないかな。2千という字数は、小説としては短いけど、DMとしてはかなり長い。ぼくがその長さのDMを突然もらったら、ちょっと面食らだろうな。

 もちろん、そんな長文DMを唐突に送りつけたわけではない。ましてや送り先は女性だからね。そんな迷惑になるような真似はしない。

 しかし、長文になるのは致し方ないところでもあった。なんといっても「現役国立大生であるハイスぺ女子が中学時代に履いていたスクールソックスの使い道をできるだけ詳細に書きなさい」というのが、そもそもの募集要項だったわけだからね。ある程度の長さになるのは避けられない運命だ。しかも「気に入った人に(優勝賞品として)そのスクールソックスを差し上げます」と続くわけだから、これはもう力が入らないはずはない。

 若い女の子が自分の下着や靴下を売ってお金をかせぐなんてたいしてめずらしいことでもない。そんなの何十年も前からあったことだ。でも、自分が履いていた靴下の使い方を作文させて競わせるなんていうのは、ちょっと聞いたことがない。そのときは特に不思議にも思わなかったけど、いま振り返ればけっこう変な話だよね。

 もっとも、そういう「変さ」も当時のぼくがその人に惹かれていたひとつの要因ではあるかもしれないな。ほんとうに大好きなアカウントだった。SというかDom気質で、ツイートもその手の内容が主だった。

 マゾを煽るようなアカウントなんていまどきSNSにあふれ返っているくらいなんだけど、そのなかでも彼女はちょっと毛色がちがっていた。性的嗜好が合っているというのは大前提としてとうぜんありつつ、言葉の響きががすごくよかったんだよな。ツイートを読んでいて気持ちがよかった。だから、たまに鼻歌をうたうみたいに音読してた。

 ちなみに(というと、ついでみたいになっちゃうけど)、顔立ちも整っていた。けっこう頻繁に画像をアップする人で、なかには横顔を写したものもあったから、なんとなくの雰囲気はわかる。きっとモテるんだろうな。実際、男友だちとのツーショットとかものせていた気が……しかし、1年以上前のことでもあり、ここらへんは記憶があいまいだ。ぼくの記憶ちがいかもしれない。画像を保存しとけばよかった……とかいまさら思ってもあとの祭り。ぼくの手元に残っているのは、たまたまスクショしていた(たぶん音読用)お気に入りツイートのいくつかだけ。まあ、それが残ってるだけでも幸運というべきなんだろうね。本人の許可を得ていないので、ここに掲載できないのが残念。

 さてさて、前置きはこれくらいにして、そろそろ「靴下コンペ」の中身に移ろうかな。あらかじめ断っておくと、noteに載せるにあたって、かなり加筆修正した。オリジナルとは別物といってもいいくらい。ファイル名も「靴下コンペ」から「勝ち組女子の古い靴下how to use」に変更した。ちなみに、文中では「真琴さま」となっているハイスぺ女子のアカウント名も、実際はまったくちがうものだった。

 最後にこれだけ付け加えさせてね。

 コンペの締め切りから数日経って、真琴さま本人が「もしもわたしが君たち負け組の立場ならこういう使い方をする」という旨のツイートをした。いわば、模範解答の一例を披露したわけ。その内容というのは「ナプキン代わりにして食事の際に口元を拭く」というものだった。ねっ、ちょっと変でしょう。

 それでは、「勝ち組女子の古い靴下how to use」としてぼくが考えたことはというと……。 

勝ち組女子の古い靴下 how to use

 
 ぼくの考えた靴下の使い方について説明させていただきます。いくつかのプランがございます。

① 性具として

 ひとつめです。これは至って単純、オナニーの際に性器にかぶせる使い方です。靴下のなかに精液を出します。靴下を性器と見立てた、いわば疑似的な中出しです。しかし、あくまで疑似は疑似。とうぜんのことながら、女性の体のなかに出す本物の中出しとはまるでちがいます。本来のセックスならやわらかい体と愛情で包まれるはずのところが、汚れた足(無礼な表現をお許しください)の汗や脂でしか受け入れられないわけですから。受精の可能性などあるはずもなく、後に残るのは「使い古した靴下で果ててしまった」という暗い敗北感のみ。負け組の人生に広がる将来なんてせいぜい靴下の爪先が行き止まりだと悟ることになります。高学歴ハイスぺ女子の足元にも及ばないという事実を、文字通り身をもって実感する結果になるはずです。

 しかし、この方法の問題点は、一度使うと精液で靴下が汚れてしまうということです。また、たとえ疑似行為とはいえ、自分より格上の相手に中出しなどしてよいものかという疑問が残ります。

そこで、次の②です。

② 保護具として

 真琴さまは、歯を食いしばるような激しいスポーツをされたことはありますか?

 一瞬で爆発的な力を発揮する競技(ラグビーや野球など)の選手のなかには、インパクトの瞬間の強い噛みしめのせいで歯に大きなダメージを負ってしまう人も多いそうです。

 ぼくは以前、オナニー中に奥歯が欠けてしまったことがありました。「恋人できないの悔しい」「セックスできないの悔しい」「底辺職で貧乏なの悔しい」……そういった悔しさを嚙みしめる自慰スタイルが、知らずしらずに歯に負担をかけてしまったのだと思います。口内保護として、枕を噛んだりマウスガードを着用したりしましたが、どうもいまいちしっくりときません。

 そこで靴下の出番です。履きつぶされた靴下を口のなかに突っ込みます。そうすれば、いくら「悔
しぃ悔しぃ」したところで歯の損傷を防ぐことができるはずです。同時に、悔しさも倍増します。自分がもうすこし賢く生まれていたら、もうすこしまともな性癖だったら、もうすこし人生成功していたら……そうしたらいまごろはどこかきれいなホテルで恋人とキスマークでもつけ合っていたかもしれません。おたがいの唇を貪り合っていたかもしれません。しかし現実の自分は、賢くもなく、性癖は歪み、人生の成功は縁遠く……恋人とのセックスなど望むべくもありません。そもそも、ぼくの経済力では、ホテルに泊まるお金を捻出するのにも一苦労な惨状なのです。せいぜい、狭いアパートで、自分より賢くて成功に近い女子が履き捨てた靴下に歯形をつけるのが関の山。国立大学への進学を果たし、すでに勝ち組のレールに乗った真琴さまが、近い将来大きな成功と豊かな生活を手にしても、負け組はいつまでも社会の下層で敗北を舐めるばかり。そういう激しい格差を和らげるためのクッションとして、未来の勝ち組候補の靴下をいただきたいのです。

 しかし、このプランにも問題が。

 口にふくむ以上、やはり靴下の汚損は免れません(精液よりはまだマシだとしても)。それに、悔しさが増長した結果、嚙む力が強まって靴下に穴を開ける結果にもなりかねません。

 そこで、つぎの③となります。

③ 象徴的存在として

 ①②を経て、そもそも触るのはおこがましいのではないか、という考えに至ります。

「直接の接触は極力禁じ、靴下さまをただ眺めるのみ」それがいちばん正当な使い方である気がしてきます。そもそも、自分に真琴さまの靴下に中出ししたりキスしたりする度胸があるものか、甚だあやしいものです。

 もちろん、ただ漫然と眺めるだけではありません。

 昔の西洋絵画で死の象徴として頭蓋骨が描かれ、その鑑賞者が象徴を介していつか必ず訪れる死を想った(メメント・モリ)のと同じように、自分より優秀な真琴さまの用済みになった靴下を身近に置くことで常に敗北を想うことができるようになるのではあるまいか。そんな風に想定しています。

 つまり、「敗北」「格差」の象徴的なアイテムとして真琴さまの靴下を使わせていただきたいのです。

④ 崇拝対象として

 さて、問題は置き場です。敗北の象徴たる靴下を、部屋のどこに置くべきでしょうか。

 目につきやすい場所になければいけないわけですから、タンスにしまうのはNGです。だいたい、負け組の普段着と一緒に収納するなんてもってのほかでしょう。ベッドの上というのは見やすい場所ではありますが、寝返りをうった際に下敷きにしてしまうおそれがあるので、これもいけません。

 そこで考えたのは、机の上です。机の、なるべく中央に。

 机の上にはパソコンや読みかけの本が置いてあり、また、朝晩の食事もそこでとります。いわば、日常生活の中心がそこにあります。その中心のさらに中心に、まだ垢抜けていなかったであろう中学時代の真琴さまの垢の染みついたスクールソックスを置いたらどうでしょうか(重ねがさね無礼な表現申し訳ございません)。おそらく、机で何かをしているあいだ、自分より聡明で魅力のある格上の存在を常に感じざるを得なくなるはずです。そして、将来的にさらに広がるであろう格差についても。

 ……いいえ、やはりそれではいけません!完全に血迷っていました。大変失礼いたしました。机の上?ぼくの私物と横に並べる?いったい何を考えていたのでしょう。だいたい、万が一コーヒーでもこぼしてしまったら取り返しのつかないことになってしまうではありませんか。

 ここはひとつ、靴下のための専用スペースを設けなければならないでしょう。ついては、椅子を新たに準備するべし。そう結論づけました。靴下さま専用の椅子です。神具を祀る、一種の祭壇として。もちろんその椅子は、ぼくが使っているものより高価でなくてはなりません。倍の価格?それではすこし心許ない気がします。3倍は2倍よりも抵抗なく受け入れることができます。

 その椅子は、ぼくの部屋にありながら、ぼくが座る機会は一生訪れない椅子です。それは、祭壇であると同時に、玉座としても機能するはずです。その空間でいちばん偉い人がそこに腰かけるのです。

 そこまでセッティングがすめば、自然と頭が下がってくると思います。高価な椅子に捧げ置かれた靴下さまの前で頭を床にこすりつけてひれ伏すのが毎日の日課になるのは、時間の問題でしょう。これは何かに似ていますね。そうです、偶像崇拝です。

 長々と書いてきましたが、崇拝対象として真琴さまの履きつぶした靴下さまをいただきたい。それが、ぼくの考えた最終的な使い道となります。
 
 おいそがしいなか、ここまでお読みいただきありがとうございました。前向きにご検討いただければ幸いです。寒くなって参りましたので、体調を崩されぬようご自愛ください。失礼いたしました。

おわりに

 改めて読み返してみると、20歳前後の女の子に送るにしてはけっこうキツめの内容かもね。あけすけにオナニーの話とかしちゃってるし。書いているうちに勢いづいて暴走気味に突っ走ったような箇所もある。これはまあ、いまにはじまったことではないぼくの悪癖。反省。

 だけど、自分が書いたものは大筋としてはそれほどまちがっていなかったのではないかとも考えている。つまり、それからしばらくして、真琴さまからていねいな返信が届いたわけ。けっこう気に入ってくれたみたいだ。なんと、貴重なスクールソックスもいただけることになった。やったぜ。

 I win!!!

 ただ、そのころ真琴さまが大事な要件を抱えたいそがしい時期だったこともあり、引き渡し方法やら金額やらの細かい話をつめるのは春になってからということにした(これを書いたのは冬だった)。ちなみに真琴さまは、郵送代「だけ」負担してくれればそれでかまわない、とおっしゃっていたけど、もちろんそういうわけにはいかない。こういうのは、ちょっとがんばった金額にするのがポイントだ。

 それで、春が来て、さてそろそろ……と、真琴さまに連絡をとろうと思ったら……いつの間にかアカウントが消えていた、というのがこの話のアンチクライマックスなオチ。消えた理由は不明。よくわからん底辺に私物を差し出すのが苦痛になった、とかじゃなければいいのだけれど……と心配に思う反面、多少急かしてでも早めにもらっておけばよかった、と悔やむ気持ちもある。心がふたつある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?