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相手のリテラシーに合わせて話すということ

皆様,リテラシーという言葉に聞き覚えがありますでしょうか。今回のテーマにもある,この"リテラシー"とは

「物事を正確に理解して活用できること」

と定義されています。

平たく言うと,「識字率」みたいなのがリテラシーにあたるみたいです。読み書きがしっかりできて,それを活用できる能力のことです。

例えば,インターネットを使って情報を得て,適切な場面で適切に発信する,とかできる人は,"情報リテラシーが高い"や"ネットリテラシーが高い"という言い方をします。

医療リテラシーとは

なんでも"リテラシー"って後ろにつければそれらしくなりますが,"医療リテラシー"という言葉もあります。医療の情報をネットや本などから正しく得て,それを自らの体や生活に活かす力のことですね。例えば,病院選びや自分が飲んでいる薬の知識,ワクチンを打つかどうかの判断などは,医療リテラシーの高さと大きく関わってきます。

様々なところで,"日本は医療リテラシーが低い"ということがよく言われています。僕自身は,海外で医療リテラシーの高さに触れる経験がないので,根拠を持って言えないですが,常日頃の診療でも"医療リテラシーの低さ"を感じる場面はあります。

例えば,自分が今,どんな病気にかかっていて,どんな薬を飲んでいるか。自分が飲んでいる薬はどんな効果があるか,などを知らない患者さんも結構いたりします。「あの朝に飲んでるオレンジの粒の薬やけど,なんの薬やったかなぁ」とかいう場面は日常茶飯事だったりします。

おそらく,「国民皆保険制度」という制度が,よくもわるくも"医療リテラシーの低さを作る出している"と思います。日本だと,医療について個人で学んで選択しなくても,ある一定レベルの医療を平等に受けることができますよね。欧米の方が代替医療を含めて選択肢が多いため,自分で学ぶ必要が出てくるのだと思います。

相手の医療リテラシーに合わせて話すことがなぜ大事か

医療リテラシーを高めることはもちろん大事ですが,僕は"相手のリテラシーに合わせて話すこと"がより大事だと感じています。医療リテラシーが低いからといって,自分の病気の知識がないからといって,「理解しない方が悪いんだぁ!こっちはちゃんと説明したよ!!」というのでは身も蓋もないですよね。

そこからさらに踏み込んで,相手がどれくらいの医療リテラシーを持っていて,どれくらい知りたがっているかを常に把握する必要があると感じています。自分の検査結果を全部知りたい人も入れば,ざっくり知りたいだけの人もいると思います。

ドクターは良くも悪くも賢い?人が多いので,「専門的な言葉で説明さえすれば良くて,相手に理解されなかったら仕方がない」というスタンスの人も多いかもしれません。でも,話をして理解されなければ,患者さんの持って帰れる情報はゼロになっちゃいますよね。

例えばどんな風に相手のリテラシーに合わせて話すか

例えば血液検査で悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が高い人がいたとします。「悪玉コレステロールは血管を詰まらせるので,心筋梗塞や脳梗塞の原因となります」という説明で納得する人がいたとします。一方で,「動脈の傷ついたところに炎症が起こり,そこにLDLコレステロールが集まってきて,さらなる炎症が起こり血管内にプラークというデキモノができて,その結果として血管が狭くなります」というメカニズムまで説明しないと納得しない人もいます。

僕はなるべく,相手の反応を見ながら,話す内容を変えるようにしています。これがなかなか難しいところですが,相手の中に入りやすい情報を渡す上で,最も重要なポイントだと思っています。

このような"他者目線"に立って,目の前の患者さんが理解して,持って帰れる情報をなるべく多く提供したいと思うこの頃です。

繰り返しになりますが,全体の医療リテラシーを高めることはもちろん大事ですが,相手のリテラシーに合わせて話すことがもっと大事だという話でした。

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