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蘇 生 へ る 魂 「銀の壺」第九號
□ 蘇 生 へ る 魂 草 川 義 英
いまはただきみばかりなるわが心もえてあはねばかくも悲しむ
ものはみな秋の冷氣にしづもりてかくも淋しきおとづれになく
はろばろとゆくへもわかぬ澄空を見つゝ密林の細道にいる
ゆるされぬ罪をおかせしひと時のわがくちびるを君よせむるな
雨ぐものひくくもおりて密林のおぐらきあなたはや雨のあし
密林のしぐれの昔よなつかしとふたりのこゝろいやもえまさる
さつさつとしぐれの音よ密林の秋の細みち濡れ遠く見ゆ
しぐれ遠くはしりて去れる密林の土の匂ひをなつかしむかも
(「銀の壺」第九號 大正八年十二月廿五日發行より)
□草川よ
久しい間、君の便りも歌も見なかつた
な。先日僕は君から突然に手紙を貰つ
て、ほんとになつかしくうれしかつた。
そして、興奮して了つてあんなわけの
わからぬ返事を上げたのだ。この後と
も、永く銀の壺を愛してくれ。
都にも秋は來てるだらう。
折角御自愛あれ。
(保坂哀鳥)
□冬が來る。あのふるえてゐる寒空か
ら今にも雪が降って來さうだ。
第九號の編輯も終へた。原稿が非常
に多かつたので随分苦しんだ。
雜誌をだすなんて、けつして容易い
仕事ではないと今更しみじみ感じた。
まあとにかく號を重ねる每にしつかり
したものになつてゆくやうな氣がして
うれしい。
前夜光詩社の同人だつた草川義英が
本當に久しぶりで歌を見せて呉れた。
うれしくつてならない。
まだやつと九號である。行くべき路
はまだまだはてしない。
岩手のやまくにゝある草三郎、北見
の寒村にある香三郎、それから東京の
銀座に住ふ達夫。自分は今これを書き
つゝ君等のことを思ひつゞけてゐる。
(十一月九日 中野くさゆめ)
#函館 #函館商業高校 #夜光詩社 #短歌 #保坂哀鳥 #砂山影二
※義夫は卒業後に「銀の壺」に寄稿したとみられる。
※草川義英は與志夫の函館商業学校時代のペンネーム、同学校の生徒
を中心に結成された夜光詩社という短歌クラブに所属していた。
※[解説]夜光詩社について
※中野くさゆめ=砂山影二のようです。
砂山影二 - Wikipedia
※「坊ちゃんの歌集」砂山影二
※これで「夜光詩社」関連(函館時代)の記事はおしまいです。
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函館市中央図書館、国立国会図書館、所蔵
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