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『故里人に寄する』品川陽子詩抄 (No.12)

故里人に寄する

をつむってゐると
わたしにはあなたのかほ
うみにみえて

いつかその聲は
忘れてゐたかぜのやうに
やさしく私のこゝろを
吹いてゆく

あゝに耳に
いつもなつかしい
風景ふうけいかたってくれる
ふるさとびとのあなた

「柏崎」會報No.12 
 昭和十七年五月十五日
 藤田美代編集兼發行 柏崎倶楽部


昭和17年(1942)麹町新潟県人会本部で開
催された柏崎倶楽部第一回総会に出席し、
その感想を寄せた。詩の前文として、「先夜
は思ひかけぬ愉しい集ひに寄せて頂きまし
てありがたう存じました。久しぶりに故里
の匂ひにつゝまれて忘れてゐたなつかしい
ものを一ぱいにうけました。歸宅早々お目
にかゝりました方達のお話をいたしました
ところ往昔を忍び大變に愉しさうな老父
を見ましたことは何よりの喜びでございま
した。古い詩をかき抜きまして喜びの心に
代へます。」と述べる。


(『品川陽子詩抄』平成25(2013)年10月 
            柏崎ふるさと人物館発行 より)


↑ 2023年4月に品川陽子さんの甥、品川純さんをペリカン書房に訪ねた際
 発見した、柏崎倶楽部第一回総会の集合写真。


↑左端前が一錢亭、その隣が品川陽子さん。

#品川陽子 #品川約百 #詩 #越後タイムス #柏崎 #佐藤春夫

※サムネイルの画像 出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」
杉浦非水創作図案集
(https://rnavi.ndl.go.jp/imagebank/data/post-172.html)



「故里人に寄する」は「故里の人によする」というタイトルで「婦人之友」21(12)昭和2年12月1日發行での入選作品です。




詩 選 評
              佐 藤 春 夫
 今月は幸にも佳篇に乏しくなかつた。
 品川くんは久しぶりでたくさんの佳作を示した。十篇ばかりの作はみな愛誦すべきものであつた。そのうちから三篇だけをここに掲げた。單純な言葉に複雜な思ひを籠めて、この人は天の成せる抒情詩人だと思ふ。[中略]今月は佳篇に乏しくなかつたのは選者にとつても幸福である。

「婦人之友」21(12)昭和2年12月1日發行より     
                       国立国会図書館 所蔵



品川 陽子(明治38年(1905)12月6日―平成4年 (1992) 12月12日)
本名は品川 約百よぶ
新潟県柏崎町納屋町に生まれる
詩人
佐藤春夫に師事
兄に、本郷の古書店「ペリカン書房」の品川力、弟は、版画家の品川工

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