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原材料の考え方(砂糖編)

抹茶に合う砂糖というのは、シンプルなグラニュー糖や、含蜜糖とも相性は良いと思います。普通の抹茶スイーツならばそれでも良いのですが、MATCHA FIRSTであるからにはスイーツとしてのクオリティも高めつつ、抹茶を最大限生かせる。そんな絶妙なあんばいの砂糖が必要なのです。

砂糖を試していく

一番最初に使っていたものは通常のグラニュー糖です。抹茶との組み合わせを考えると、シンプルに抹茶をひきだすためにはすっきりとした味わいのグラニュー糖を使うのが良いのではないだろうかと思ったからです。もちろんこれは合わないはずはなく、一番無難な選択として考えておきます。
含蜜糖は黒糖や赤糖、きび糖などがあります。
黒糖はやはり独特な味わいがどうしても残ってしまい、抹茶を最大限生かせているとは言えないような出来になってしまいます。赤糖も同じように砂糖自体の主張が少し強すぎていまいちの結果になってしまいます。
きび砂糖は一番穏やかな味わいで、含蜜糖系では一番テリーヌにあってはいましたがコクの出かたがイメージとは若干違ってしまい、グラニュー糖のほうが合っているかなという印象でした。

サトウキビの産地とてんさい糖

材料選定の途中から抹茶にあわせて、なるべく国産の原材料でいこうという方針にしました。そうなってきたときにグラニュー糖がひっかかります。今までわざわざグラニュー糖の産地を考える機会はありませんでした。グラニュー糖に使われているサトウキビは日本のものも入ってはいますが、様々な国のものも入っています。おそらく沖縄産~のように産地の記載が入っていないものは、けっこうな割合で日本と海外の混合だと思います。もちろん製糖会社さんがしっかりと検品しているので品質どうこうは問題ありませんが、テリーヌのコンセプトとしては国産にこだわろうというところです。
そして国産のグラニュー糖は何かというとてんさい糖ということになります。蜜が残っているタイプもありますが、精製されたビートグラニュー糖はサトウキビのグラニュー糖と味わいとしては何も遜色ありません。試作で使ってみても問題なかったのでこれでいこうと思っていましたが、ある思いが残っていました。日本の伝統製品である和三盆糖を試さなくても良いのかと。

日本の伝統製品「和三盆糖」

最初に試していた含蜜糖があまりおもわしい結果がでなかったので一番確実なグラニュー糖にしていましたが、やはり試さないで終わることは出来ないと思い和三盆糖を探し始めます。市販の和三盆をいくつか試しますが、グラニュー糖より良いメリットがある結果を得られるものがない。それ以前に裏の原材料表記を見ると、サトウキビ、砂糖・・・?
今まで和三盆といえば高級で良い砂糖と思っていましたが、何と混ざりものもあるのかと驚きました。そこから和三盆糖についてもしっかりと調べることにしました。

服部製糖所と「大無類和三盆糖」

本物の和三盆糖とは何なのか、そのことの答えをしっかりと記してくれているサイトがありました。それが服部製糖所さんです。ホームページを読む重要なキーワードがありました。「竹糖」と呼ばれる日本の在来種であるサトウキビです。沖縄などで育てられている大きなサトウキビとはちがい、背丈も低く細いのです。おのずと収穫量も少なくなり、そこから作られる本物の和三盆糖は大変希少なものになるということでした。服部製糖所さんは竹糖100%で阿波和三盆糖を作っているのです。
そしてホームページに書いてあった言葉に「いいものを作らなければ、作り続ける意味がない」とありました。自分がスイーツをつくるうえで一番大事にしていることです。こういった考えをもった生産者の方の原材料を使いたいと思い、すぐに取り寄せてみました。
竹糖の一番絞りから取った最上質和三盆、「大無類和三盆糖」を使って見ることにしました。やさしく上品で華やかな風味は抹茶を生かしつつ、テリーヌのクオリティをあげてくれる理想の砂糖。これが本物の阿波和三盆糖かと納得させてくれる味わいでした。

本物を伝える

実際に現地を見てみたく服部製糖所さんを訪問させていただきました。このときはまだ竹糖の育ち始めという感じでしたので、生い茂っているようなことはありません。
ただ自分の目で見て、生産者の方に直接お話をお伺いできるというのは大変貴重な機会でした。
竹糖の畑には除草剤が撒けないので生えてくる雑草の処理。四国ということもあり台風の影響も多くあるので、細い竹糖は倒れたりしてしまいます。それを一本一本起こす作業や対策のためにパイプを組んだりと。ようやくの収穫も手作業で根本から折っていく。ほとんどが手作業で行われていくのです。その後も丁寧で妥協のない仕込みが続いていきます。
収穫量が少なく、非常に手間がかかる。どうしても価格も普通の砂糖に比べれば高くなってしまいます。さらに混ざりものを和三盆糖といって安価に販売するところもある。こういったことを知らない人からすれば安いほうを買う人も多いでしょう。
まさしく抹茶と一緒なのです。粉末茶のようなものを抹茶というように販売し、抹茶はそういうものだと思われてしまう。本当に良い抹茶をつくれば価格があがってしまい買われづらくなる。本物を伝えたいという信念を持っている生産者のかたはそれでも作ります。
阿波和三盆糖も抹茶と同じように、日本の伝統的で残していかなければならない製品です。服部製糖所さんのように伝統をしっかりと引き継いでつくられている、そんな本物の阿波和三盆糖を後生まで残していくべきだと思います。ぜひ一度味わっていただきたいものです。

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