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「大金持ち」のためのお城ってどうよ

最近は、なかなか行けていませんが、数年前までは、よくお城巡りなんかをしていました。

日本中、お城はあちこちにあります。「え?あんなところにもお城が?」というくらい、お城だらけです。

例えば、うちの近くで有名なお城と言えば、小田原城です。

小田原城

天守閣もあって、それは新幹線や高速道路の上からもみえます。

ただ、こうした天守閣や櫓があるものだけが、お城ではありません

横須賀城

石垣だけのお城だってあります。天守閣や櫓はありません。こういうお城は、公園になっていたり、メジャーなお城だと県庁に使われているケースも多いように思います。

いや、石垣すらないものもあります。

諏訪原城

堀や虎口のような跡しかないといった感じです。諏訪原城や山中城は、堀のかたちが独特なので、何となく「あー、お城だね」と分かりますが、そうでないと「うん?ただ溝があるだけ?」くらいに見えるものも多いはずです。

それもまだいい方で、もはやただの山というのもあります。

玉縄城

このレベルになってくると、近くに住んでいる人すら「へぇ~、お城があったんだね?」くらいなことになります。

ともあれ、そうやって日本全国にお城があって、それらをあちこちで楽しめるというのは、とても良いことだと思っています。歴史の勉強にもなりますし、どこの地方でも楽しめるので、お城巡りは立派なエンタメとして、いろいろな方にお勧めしたいです。

そんなお城巡り、私がとくにエンタメとして良いと思っているのは、お城というのが、昔は一部の限られた人たちしか出入りができなかったというところです。当時は、権力者やその関係者しか立ち入れなかった場所(建物)に、今は、何の関係もない庶民たちが、気軽に立ち入ることができるというのが、楽しみ方のひとつとしてあるように思います。

天守閣のような立派な建物に立ち入って、そこから城下を見下ろすなどという体験は、当時、なかなか難しいことだったと思われます。ところがは、そういうことが自由にできるわけです。それこそが、現代的な楽しみ方です。なんかこう・・・「お城が庶民のものになった」みたいな感じです。

例えば、名古屋城などは、鉄筋コンクリートの建物でつまらないという人もいます。

名古屋城

分からないでもないです。しかし、どんなかたちであれ、今は、そんな立派な天守閣に、私たち庶民が上がって、街を見下ろすことができるというのも、なかなかに楽しい体験なのではないかと思うのです。

そんな素晴らしさを感じるお城のなかで、それとはちょっと真逆な動きをみせるところがあります。

三重県伊勢市にあるテーマパーク「伊勢安土桃山文化村」の中にある「安土城」の実物大レプリカが、超高級ホテルに生まれ変わる。お値段、1泊500万円也

デイリー新潮
「1泊500万円「安土城ホテル」 新たな“国主”が意図を語る」
2017年4月9日より引用

若干、昔の記事ではありますが、伊勢にある安土城(レプリカ)が、1泊500万円のホテルになるという話がありました。

その後、ほとんど続報を聞かないため、それがどのように進捗しているのかは分かりません。ただ先日、伊勢に行ったときに、その安土城が見えたので、ちょっとそれを思い出しました

伊勢にある安土城(レプリカ)

今、「お城が庶民のものになっている」のに対し、こちらの安土城では、それを庶民の手から取り上げ、一部のお金持ちのものにしようという取り組みがなされているわけです。

私は、そのテーマパークの名称が「伊勢安土桃山文化村」だったときに、何度か足を運んだことがあります。当時、その安土城のなかでは、信長の一生を紹介する展示がなされていました。文字通り、庶民たちのものでした。

それが一部の金持ちのものになるというのは、ちょっと残念です。他人様のビジネスに口を挟みたくはありませんが、あまり気持ちのいいものではありません

「レプリカとはいえ開村当時70億円を投じて建てられたものですから、佇まいは本格的。お客様には単に宿泊だけではなく、殿様気分を味わってもらいたい。馬に乗り、大勢の従者を引き連れて園内を回る大名行列や、食材から器まで贅を尽くした会席料理を堪能していただきます。送迎にはロールスロイスやヘリを用意するつもりです」

デイリー新潮
「1泊500万円「安土城ホテル」 新たな“国主”が意図を語る」
2017年4月9日より引用

伊勢安土桃山文化村」、できれば応援したいテーマパークでした。しかし、こういうのをみると、まったく近寄りたくなくなります

仮にそこに遊びに行ったら、そのなかを実際の「大金持ち」が大名行列を組んで練り歩き、宿泊している天守閣では、私たち庶民が遊んでいるのを上から見下ろしているということでしょう???

いやー、絶対に関わりたくありません(笑)。

安土城に限っていうと、当時の信長は安土城を庶民に一般公開していたという話があります。

信長は、この安土城で戦国期の当時では前代未聞の一大事を敢行しています。それは『安土城を有料で一般公開をした』ということであります。つまり信長は『城をビジネス』として利用したのであります。

戦国武将と民衆時代考証
「織田信長にとって城とは何だったのか?」より引用

つまり、当時の城というのが、一部の権力者のものだった一方で、信長は安土城の天守閣を「庶民のもの」にもしたわけです。安土城というのは、それだけ画期的だったわけです。

そう考えると、伊勢の安土城(レプリカ)は、現在、その信長の安土城とは、まったく真逆の考え方に突き進んでいるのかもしれません。

お金持ちに媚びる世界・・・

何となくそんなものを感じてしまうのでした。

まぁ、お金があること自体、悪いことではないと思います。お金でいろいろ買えるのだから、その価値を中心に据えて、「大金持ち」のためのテーマパークを作るのも悪いこととは言いません

けれども、なんとなーくそういうモノの考え方や価値観が、日本のなかでいろいろなものをぶっ壊してしまっているのではないかと思うのでした。


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