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リモートでハードウェアのユーザビリティテストができるか?

▪️リモート調査の普及

最近、ユーザー調査でもリモートインタビューが増えてきました。国土の広いアメリカではもともと一定程度普及していたようですが、日本ではコロナで一気に普及した感があります。初めはオンライン会議システムが、安定した環境で確実に実査を行うためには不安要因に思えたものですが、現場で調査参加者に応対しなくて済むなど、調査会社側の負担は全体で見れば軽くなったとも言え、また日本全国から調査参加者を募集できるといったクライアント側のメリットもあることから、ポストコロナにおいても定着しそうな印象があります。

▪️ハードウェアの場合

コロナで対面調査ができなくなったとき、インタビューはともかくとして、ハードウェアのユーザビリティテストをリモートで行うことが可能なのか戸惑ったものですが、周囲の人の意見を聞くうちに、ハードウェアのユーザビリティテストは直接対面でないと無理という結論に至りました。コロナの流行中はハードウェアのユーザビリティテストはできないことを意味しますが、一方で自分の考えが裏付けられて安心したのを覚えています。

なぜハードウェアのユーザビリティテストをリモートで行うことが不可能なのかと言えば、リモートのカメラ映像は画角が狭すぎて、十分に観察できないためです。ハードウェアのユーザビリティテストでは、操作する調査参加者の手元とともに、ハードウェアと調査参加者を大きな視野で捉え、調査参加者の姿勢や体勢、表情や視線の向きなども観察する必要があります。(そのため、実査のストリーミングや録画は、手元の拡大映像と引きの全体映像のPicture-in-Pictureにするのが通常です)。ウェブカメラではそうした映像を撮ることはできず、調査参加者にカメラ2台のセットアップを依頼するのも現実的ではありません。

さらに、テストのモデレーターと調査参加者が一緒に評価対象のハードウェアを前にして、「あれは」「これは」と指差しながらやり取りすることもよくあります。これもリモートではスムーズに行うことができず、テストの効率を悪くし、評価対象物の使用に関するインサイトの掘り下げが甘くなるでしょう。無理をしてリモートでユーザビリティテストを行なっても、費用に対する十分な成果は得られないというのが、現時点での結論です。

▪️将来は?

しかし、今後もずっとそうだとは限りません。VRでの調査が可能になるかもしれません(メタバース?)。ただ、単に調査方法だけを変えれば済むのではなく、製品開発プロセスがデジタル化し、例えばメーカーでプロトタイプをVRで製作するようになって初めて、そのプロトタイプを使ったユーザビリティテストの具体的な方法が検討されることになるでしょう。ハードウェアのユーザー調査は、メーカーの開発プロセスや開発技術のありかたと共に進化するのだと思います。

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