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若冲と京の美術 -京都 細見コレクションの精華-

◾️おいしいとこどりの展覧会

2022年4月23日〜6月12日、茨城県近代美術館にて開催。所在地・水戸までは特急電車に乗って、小旅行でした。茨城県近代美術館は、重厚で堂々とした建物。
本展の出品作は、すべて京都・細見美術館から。本阿弥光悦・俵屋宗達から江戸琳派、そして近代琳派の神坂雪佳まで、おいしいとこどりの充実した展覧会でした。

良かった作品を紹介していきましょう。

◾️遊楽と祭礼

入口すぐのところに展示されていた「さくら幔幕まんまく蒔絵まきえ重箱じゅうばこ」は、豪奢な花見を思わせる幔幕が風に翻る様子を蒔絵で描いており、出だしから見事な作品に引き込まれました。

「四条河原図巻」には、四条河原での興行の一つに遊女歌舞伎が描かれていて、有吉佐和子の小説『出雲の阿国』を思い出しました。

「祇園祭礼図屏風」では、祇園祭の行列が左隻→右隻→左隻と大きくうねって町の通りを進んでいき、その合間は日本画独特の金色の雲で隠されています。古今東西、行列を描いた絵画があると思うのですが、その空間表現のバリエーションはどうなっているのでしょうね。おそらくすでに何か研究があるでしょう。調べてみたくなりました。

◾️琳派

「撫子図屏風」は金地に和歌を記した背の低い屏風ですが、舞台背景のように描かれている撫子の葉の緑色と花の赤・ピンクの対照が鮮やかで、目を引きます。江戸前期の作という以外に情報がないのですが、この時代の小さい屏風には佳品がありますね。東京国立博物館の「花卉流水図屏風」を思い出しました。

狩野山雪「花卉流水図屏風」東京国立博物館 今回の出品作ではありません

本阿弥光悦・筆「和歌短冊」。金銀泥下絵の装飾料紙が墨書に良くマッチしていると思ったのは、正直初めてでした。この取り合わせは、巻物のようなサイズよりも、短冊のように限られた形状と面積のほうが向いているのではないかと、個人的には思います。

野崎真一「定家詠月次花鳥図」。酒井抱一の孫弟子にあたり、幕末から明治にかけて江戸琳派の魅力を伝えたと言われます。まさに琳派の良さをそっと盛り付けたような小品で、「一月 柳に鶯」「六月 常夏に鵜」「八月 萩に初雁」「十二月 早梅に水鳥」と、それぞれの月の花と鳥を可憐に描いています。

中村芳中「朝顔図」。「ほのぼの琳派」と言われる芳中、朝顔もひたすら丸くぽってり滲んで、可愛らしい。

神坂雪佳「四季草花図」。色とりどりの四季の花が、実に鮮やか。

◾️伊藤若冲

「雪中雄鶏図」。雄鶏の首元の羽毛の、若冲らしい緻密な表現が目を引きます。また、白い雪が2階調で表現されているのに気づきました。普通の雪は何も塗らない紙の白、厚く積もったり光を受けたりして輝く部分は胡粉か何か白い絵の具を乗せているのです。
「動植綵絵」のような着色作品は実はこれだけで、あとは墨一色の作品ばかりでしたが、濃い・薄い、滲み・くっきり・かすれ、筆勢自在な筆使いを見ることができました。

鶏図押絵貼屏風は、高精細画像による複製があって、フォトスポットになっていました。

鶏図押絵貼図屏風(伊藤若冲)複製・部分

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