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No,264.やたらと「承認欲求を求める人」ほど幸福度が低いといったお話


はじめに

かの有名な心理学者であるアドラーはこう述べている。「人間の根源的な欲求に「承認欲求」があるからこそ、そこにすべての悩みの原因もあると考え、それゆえ「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」と。

1.承認欲求とは

承認欲求は、人間が他者から認められたい、評価されたいと感じる基本的な欲求です。この欲求は、自己肯定感や社会的なつながりに深く関わっている。

2.承認欲求の心理的背景

 人が社会的な存在である限り、周りの人か ら認められたい、尊敬されたいという気持ちと完全に無縁になることはないだろう(正木、2018)。
人が他者と共に 生きていく中で、自分の存在をアピールし、良いところを他者に理解してもらおうとする。

筆者作成

承認欲求は進化の過程で発展してきたものであり、自己肯定感が低いと、承認欲求が強くなる傾向があるといわれる。

3.承認欲求の種類

正木(2018)は内的承認欲求(自分自身の価値観、つまり人は人私は私)は自己評価に基づくものであり、外的承認欲求は他者からの評価に依存する。ソーシャルメディア(Instagram・X・Facebook)の普及により、外的承認欲求が強まる傾向がある。

また、菅原(1986)は対人的目標には①肯定的評価の獲得と②否定的な評価の回避の2種類があることを指摘している。
①他者から肯定的に評価されることは、人が他者と共に生きていく中で、さまざまな心理的、物理的メリットを伴う。
ところが、②過度に他者に自分の存在をアピールすることは、同時に他者に自分の欠点をさらすリスクを伴うことにもなる。肯定的な評価を獲得するつもりで行動していたのに、自分の欠点を露呈してしまって、結果的 に否定的な評価を得ることになっては大きなデメリットとなってしまう。
そのため、否定的な評価を回避するということが重要な目標となり得るのである。

4.現在社会と承認欲求

現代社会では、承認欲求がメンタルヘルスに与える影響が注目されている。特にソーシャルメディア(Instagram・X・Facebook)の影響で、承認欲求が過剰になり満たされない欲求が加速している。
正木(2018)は、現代の承認欲求の満たされなさを浮き彫りにしたという側面は否定できないだろう。世界中の 「誰からも認めてもらうことができる」ことは、反面「誰からも認めてもらいたい」という欲望を生むこともあると述べている。
そこに立ち止まってしまって、その満たされなさに不安を感じ、言いようのない疲労感におそわれるひとは少なくないようであると述べている。

5.ソーシャルメディア(Instagram・X・Facebook)を使い承認欲求を満たす人の闇

ソーシャルメディア(Instagram・X・Facebook)という場は、もう一度自分を賭けられるもうひとつの場所なのである。その無限性を知ったときには、むしろ自分の住む現実である学校や周囲の友人に囲まれた世界がいかに狭いものであるかを痛感するだろう。
だからこそ、ソーシャルメディア(Instagram・X・Facebook)で承認を求める行為は日常では経験できないよ うな快感を与えてくれて、ときにそれが暴走してしまい、同時にそのゴールのなさにひたすら承認欲求を求め続けるといった負のスパイラルに陥る可能性を含んでいる。

6.ソーシャルメディア(Instagram・X・Facebook)に頼らないことが先決

ソーシャルメディア(Instagram・X・Facebook)上でのやり取りは、直接対面しているわけではないため、現実の人間関係と異なるダイナミクスが働きます。これは、仮想の自分を演じることを容易にし、現実とは異なる人格を構築することが可能になる。つまり現実と仮想の境界の曖昧化につながり結果的に現実社会では承認を得られないだろう。

承認欲求を求めるの方法としては、自己肯定感を高めるための自己反省や目標設定が有効です。他者からの承認を得るためには、誠実なコミュニケーションや共感が重要である。承認欲求を理解し、健全に満たす方法を実践することで、自己肯定感を高め、より良い人間関係を築くことができるだろう。

※投稿をみる側の注意点

そもそもソーシャルメディア(Instagram・X・Facebook)は、自分自身の最も魅力的な側面や成功を強調し、ネガティブな側面や失敗を隠す傾向にある。これは「選択的自己呈示」と呼ばれる。
つまり、他人の投稿を見たとき、実際にはその人の生活の一部に過ぎないにもかかわらず、完璧な生活を送っているように見えるひともいる。

特にソーシャルメディアリテラシーの低い人などは、ソーシャルメディア(Instagram・X・Facebook)を通じて他人の成功や幸せを目の当たりにすると、自分と比較してしまう傾向にある。これは「社会的比較理論」に基づいており、他人の投稿が実際よりも理想化されていることを認識せずに比較すると、自分自身の生活に対する不満や劣等感が生じることがあるだろう。

ソーシャルメディア(Instagram・X・Facebook)上の情報は必ずしも真実ではないことを認識し、批判的に考える姿勢を持つことが重要だろう。また他人が投稿するのはしばしばその本人の最良の部分であり、それが現実の全てではないことを理解することが大切だろう。

おわりに

成田悠輔氏がXで投稿していた「InstagramやTikTokのユーザー全体の幸福度に与える影響はマイナスだったらしい。人間の幸せのためにSNSは存在しない方がいいかもね」


参考文献


小島弥生(2011)「防衛的悲観性と賞賛獲得欲求・拒否回避欲求の関連 : 2つの承認欲求がともに強い人の特徴について」『埼玉学園大学紀要. 人間学部篇』第11巻、pp67-74

正木大貴(2018)「承認欲求についての心理学的考察 : 現代の若者とSNSとの関連から」『現代社会研究科論集 : 京都女子大学大学院現代社会研究科紀要』第12巻、pp25-44


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