1.2 これからの不動産投資の新常識

2012年に東京オリンピック開催決定後、アベノミクスが功を奏して不動産投資がメジャーになった日本。そんな中、普通のサラリーマンでも簡単に融資が組めて手軽にできると不動産投資がブームとなりました。そのブームに乗って、仲介を始める業者が竹の子のように登場し、将来の年金不足に備える資産形成として『不動産投資』を推奨する広告が巷にあふれました。しかし、多くの広告は、投資家が儲かるのではなく、不動産業者が儲かる仕組みです。 2012年以降の上場不動産会社のIR情報で利益率を見れば一目瞭然ですが、ワンルームマンション投資、首都圏近郊の新築木造アパートのパッケージ商品、田舎の築古物件の三為案件(中間省略)などのほとんどがまともな利益が出る投資ではありません。業者が多額の広告費をかけて不動産投資が一般化したため、今まで全く不動産に見向きもしなかった素人が投資デビューし、プレイヤーが急増しました。その情報弱者を狙ったかぼちゃの馬車問題や三為業者によるスルガの不正融資問題で明るみになりましたが、ほとんど儲からない「ババ物件」を引いた個人投資家が続出しました。
また、規模拡大を重視した投資も流行りましたが、売却すると売却損が出てしまう物件、買い手の融資がつかず、流動性がなく売却できない物件、大規模修繕の発生や空室に怯える時限爆弾のようなリスクの塊を抱えている物件、債務超過になってしまう物件などに投資するメガ大家も増えました。何人かメガ大家さんにもヒアリングしましたが、売却がうまくいったケースは、「たまたま」投資した時期が良かっただけで、きちんとした投資戦略がなく再現性がないものが多いように感じました。地方築古物件を高値掴みしてしまい、将来どうやって売却するか悩んでいる投資家も少なくないようです。融資環境が変わってしまい、築古物件に融資する金融機関がほとんどなくなった環境下では、買うことも売ることもできないので、このやり方で規模拡大は難しいでしょう。融資基準を満たす優良物件を見つけるのは簡単ではありません。慣れていない投資家が利回り重視で迂闊にキワモノ物件に手を出すと、負の資産を背負うことになりかねないので、細心の注意が必要です。

こうした背景から、不動産投資で新しいトレンドとなりつつ投資法があります。それは都心で土地を仕入れて企画し、建築する開発型の新築不動産投資です。新築不動産投資は、土地活用とも呼ばれますが、不動産デベロッパーが過去何十年も利益を出してきたビジネスモデルです。設計建築は十人十色、誰がやっても同じ企画になることはなく、土地活用案件は企画次第で、利益率50%以上、なかには100%超えに化けることもあります。

高利回りにするには特に設計企画が重要で、業者が土地からセット販売されているアパートやマンションを画一的なものではなく、エリアや物件の特性に合わせてホテル、オフィス、店舗、トランクルーム等、柔軟にプランを変えて開発しています。例えば、新宿のホテルはNOI10% 、渋谷のオフィスならNOI9%の物件に仕上げています。融資環境が悪くなったと言っても、都内新築RCやS造物件は銀行評価が高く、融資もフルまで近く出るケースもあります。個人の属性が低い、自己資金が少ないから投資できないというのは、銀行の選び方が間違っているのか、評価が低い物件を打診したのか、やり方に問題があるのだと思います。

今まで当たり前だと思っていたことが通用しなくなり、これまでになかったことが常識になる、そんな時代が来ています、本書では、「開発型」×「非居住用物件」×「AIによる自動化」にフォーカスし、次時代の不動産投資法を語ります。

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