2.4. 海外から見た不動産投資先としての日本

不動産の総投資ランキング世界1位の東京
コロナ禍で世界の不動産取引が停滞する半面、日本では海外マネーによる不動産投資が引き続き活発です。不動産サービス大手JLLによると、海外勢がけん引し、2020年1~6月の不動産取引額150億ドルと東京は世界トップでした。コロナ禍でアジアの都市での不動産売買が 大きく減少しているなか、利回りを追う世界の投資家の資金の振り向け先になっています。なぜ、他の国に比べて投資されているのかは、過去の歴史や法律を見ると分かります。

1. 外国人が制限なく所有権を取得できる国
日本の政府は昔から外国人の不動産取得に寛大です。日本は、アジア諸国では珍しく、外国人にも土地含めて自分の名義で所有権登記を許可している数少ない国です。他の国は借地権だけ、かつ居住用物件しか登記認めていない国が多いですが、日本は居住用だけでなく商業用もできます。こうした環境が、チャイナマネーやイスラム圏のオイルマネーなど含め海外からの資金が東京の不動産価格を押し上げている一因となっています。

2. 海外マネーの受け皿
バブル崩壊で不良債権処理で苦しんでいた1990年代後半、市場を活性化させるため1998年に資産流動化法という法律が作られました。これは特定目的会社または特定目的信託を用いて資産を流動化するための仕組みです。この法律により、特定の資産を裏付けとした有価証券を発行するために設立された法人、SPC(Special Purpose Company=不動産の証券化などのために活用される一種のペーパーカンパニー)は銀行からノンリコースローンを借りて、それまで買い手がいなかった不動産を取得し再生できるようになりました。当初、流動化の対象となる資産が限定されていましたが、2001年4月の改正で、すべての財産権を対象とした流動化が可能となりました。これが不動産ファンドの歴史が始まりです。これによって、外資からの資金流入が促がされ、海外からのマネーの受け皿となり、日本の不動産が復活しました。

3. 外資系ホテルの誘致
オリンピックやIR法を機に、更に海外からの投資を促そうとしています。その政策は、海外から観光立国としてだけでなく、投資先の日本として見直されています。世界に誇れる観光資源があるにも関わらず観光地としての発展が遅れていましたが、安部政権の下、2030年までにインバウンド旅行者6000万人という目標が掲げられ、「世界の観光地」への道筋が立てられました。その一つに「50箇所に外資系ホテルを誘致する」という政策があります。これが意味するところは、国を挙げて外資ホテルを誘致することによって、海外からの投資を促し、世界水準の環境を整備していくということです。別の言い方をすると、政府主導によって、日本全体の不動産バリューを上げていこうとしているのです。オリンピックが終わったら不動産価値が下がるという世論の予想とは裏腹に、更に不動産価値を上げることが国の至上命題なのです。

4. アジアの成長を取り込める限られた事業
アジアの成長力を享受できるインバウンド向けの宿泊マーケットは2030年には15兆円まで成長すると予測されています。個人レベルでこれを取り込めるとしたら、民泊かホテル投資に限られてくるでしょう。私はこの分野への投資が最も恩恵を受けると考えています。逆に言うと、競争力のない個人が生き残るには国内需要に頼っているだけでは衰退してしまいます。アジアの成長に追い付くには是が非でもインバウンド需要を取り込むことを考えなければいけない時代になったのです。

5. 世界でも有数のイールドギャップ

イールドギャップは、利回りと調達金利の差をいいます。日本の融資環境は世界で見ても稀で、住宅ローンは金利1%以下で調達できる珍しい国ですが、その割には利回りが先進国より高い。世界中で見ても日本ほどイールドギャップがある国はありません。

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