見出し画像

喪主あいさつ_7月30日

本日は厳しい暑さの中、またお忙しい中
父 の葬儀にご参列くださり誠にありがとうございます
少しだけお時間をいただいて父の話をさせていただき
挨拶にかえさせていただければと存じます

父は
若き日は祖父 の秘書として国会でのお仕事に情熱を傾け
後年は検定試験の実施や問題集の作成など社会教育の振興に尽力いたしました
秘書時代のことは、まだ私は幼く、母や周囲から伝え聞くのみですが、国会や選挙区でのあれこれが、おそらくは父の青春であったのだろうと想像しています
検定試験の実施においては、試験の度に全国各地の試験会場に赴いていました
ものが好きな人でしたが、愛用の革の旅行鞄が、柔らかくくたくたに草臥れるまで、よく出掛けておりました
最後は母も出張に同行していました

普段の暮らしの中では
古いものや美しいものが好きで、休日はよく骨董市に出かけていました
骨董と言いましても、床の間に飾るような大仰なものではなく、小さな器や、時計や、デスクに置く写真立てやペーパーナイフや
身近に置けるものを求めてきては、それは嬉しそうに、
これはこういうものなんだよ、と
わたしに話して聞かせたり
あかずながめたり磨いたりして週末を過ごしていました

病のため
徐々に歩くことが難しくなりました
車椅子になり、やがて車椅子での外出も、簡単ではなくなりました
歩けないということは
誰にとってもですが
出かけることの好きな父にとって
それはつらいことであったに違いないのですが、父はただの一度も、歩けなくてつらいとか、足が痛いなどとは言いませんでした
ただ、何かの折に一回だけ、「夢の中ではスイスイと歩いてるんだ」

夢の中では
すいすいと歩いているんだけどな

と言ったことがありました
いま
父はようやく、スイスイと歩けるようになったのだと思います

背が高く、手先が器用で
何でも知っていて、何でも持っていて
ーほんとうに、お父さんあの道具ある?と聞くと必ずそれはあってー
癇癪持ちで、細かいことに口うるさい、
頼もしい父でした

ここ一年ほどは
ほんとうに穏やかで
やさしい人になり
最後の朝は、お父さん、と呼びかける母と私に「だいじょうぶ」

大丈夫

と答えて
旅立っていきました

ほんとうにこんなにきびしい暑さの日にお運びいただき恐縮に存じております
生前 父が賜わりましたご厚情に
心より御礼申し上げます
父のことを思い出していただける時がありましたら
どうか颯爽と歩く姿で思い出していただけましたら
本人も喜ぶのではないかと思います

ありがとうございました



いただいたサポートは災害義援金もしくはUNHCR、ユニセフにお送りします。