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紹介と広告の間に - 人材ビジネスについての考察

はじめに

人材業界に身を置いて早5年。限られた領域、エリアでしかないけれど、現場で見えてきたことを基に今の考えを棚卸してみようと思います(まぁ、ネット上の1つの落書き程度に思ってもらって差し支えないです笑)。

個人的な考えとして、「転職が一般的になってきた」という表現には違和感を覚えています。新卒3年以内離職率の推移(参考)を見ると分かるように、過去数十年にわたって、新卒で入った会社を早期に辞めるケースは一定数存在しているので。ほんで、その後の入職先を探す方法として「知人・親戚等の縁故」が多かっただけではないでしょうか。それが今では人材サービスという方法に移行しただけなので、要は「転職が一般的になってきた」ではなく「転職の仕方が可視化されるようになってきた」に過ぎないでしょうね。
ただ、こういった風潮は人材ビジネスを扱う企業にとってはとても都合が良いです。なので、TVCM等でポジティブな印象付けを少し加え、今に至るという感じですね。

前置きはここまでにして、僕がこれまで関わってきた、人材派遣を除く正規雇用の分野における2つのビジネス「紹介」「広告」について書いていこうと思います。

紹介ビジネス

まず紹介ビジネスについて。矢野経済研究所によると、2020年度の市場規模は2520億円(参考)です。このビジネスの特徴は、企業、求職者双方にとっての利便性の高さにありますね。企業からすると【欲しい人材をピックアップして選考まで進ませる手間】を、求職者からすれば【無数にある求人を1からリサーチする手間】を仲介業者が担っているので、これを大幅に削減することは双方にとっての大きなメリットとして存在しています。結果として、成約したらその「手間賃」として人材紹介会社は報酬をもらうという具合ですね。

ただ、近年この仲介に対して求職者側が少し引いている雰囲気があるように感じます。その背景として、「紹介サービスがそのビジネスモデルも含めて広く認識された」ことが大きいです。ある程度社会で揉まれた転職希望者だけでなく、新卒者である大学生にももはや共通認識となりつつあります。これによって、「情報提供者や提供手法に疑念を持つ」あるいは「得られる情報が自身で調べられる範囲と大差ないと気づく」というケースが起こっています。ビジネスの利点は失われていないものの、その裏にある業者の「意図性」(悪く言えば「きな臭さ」)を嫌って離れるという人は少なくないのでしょうね。

広告ビジネス

この事業者側の「意図性」を極力なくそうとしているのが広告ビジネスです。全国求人情報協会によると、2020年度の市場規模は4150億円(参考)とのこと。
このビジネスの特徴は、情報が集約されたポータルサイト上における企業・求職者双方の「自由度の高さ」にあります。求職者からすると紹介ビジネスのような「意図性」を感じることがないので、その点のストレスは少ないです。求職者はサービスごとにアカウントを無料で発行して、それらを周回すればある程度十分な量の情報は取得可能です。逆に言えばリサーチする手間は省略できないため、その点の煩わしさはあるでしょうが。

広告ビジネスにおいては、企業側が引いている印象を強く感じます。特に中途採用を考えるお客さんからは、「高い掲載料を払っても、応募なんて集まらないでしょう」といった雰囲気を感じます。正直ポータルサイトには情報を掲載する以上のバリューがないので、企業が離れることも無理はないかなという感じです。「かけた金額分の成果を確約することができない」というのは広告ビジネスモデル上仕方のないところではありますが、正直お客さんには「サイトの価値向上を期待していても仕方ないですよ」と言ってあげたい気持ちです。

両者の間について

双方のビジネスを並行して展開している企業は多い(僕のいる会社もそう)ですが、事業者にとっては歯がゆいところです。広告で行き詰ったから紹介に、もしくは逆で紹介で行き詰ったら広告に、という動かし方をしていたのですが、もはやどちらも意味ないという状況が近いうちに来るかもしれないなと。そこで迫られる決断は、どちらか一方を突き詰めるのか、両者のいいところを残しつつ間を取るのかというものです。
個人的には、間をとる方を選びたいなと思いますが、どちらのいいところも中途半端になってしまう可能性も大いにあります。「組み合わせる」「統合する」「柔軟にスイッチする」など、すでに実装されているサービスもあるかと思いますが、これから追求していきます。

今日はこのあたりで。