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潟と瀉

海外にいるときに、日本人だと言うと、日本のどこ出身かと聞かれることが多い。欧米人の場合、知っているのは東京、大阪、京都くらいだったりするので、新潟のことをなんて言ったら良いのか、返答に困っていた。結局、日本の北部で、東京から新幹線で2時間、なんていう説明に落ち着いていた。米と酒と美男美女で有名だ、と軽い冗談ぽく言えば、多少は場もなごんだりする。「Like you?」と相手が冗談で返したら、状況に応じて「Yes」とか、「No. I think I'm the ugliest man in Niigata.」などと答えておけば笑いを取れることもある。

台湾の場合、新潟の米が有名なので一応知っている人が多いが、別の問題がある。新潟の「潟」の字は、中国語ではほとんど使われない。一方、「瀉」の字は日本語でほとんど使われない。そのため、台湾人でも日本人でも、大部分の人は中国語の「瀉」の日本語版が「潟」だと思っている。だが、実はこの2つの漢字は別物で、中国語でも日本語でも、「瀉」と「潟」の両方の字が存在し、読み方も違う。日本語の「瀉」は、「止瀉薬」とか「瀉血」で使い、「シャ」と読む。一方、「潟」の音読みは「セキ」。

そこで困るのは、どう発音するかだ。おそらく95%以上の台湾人は新潟の「潟」の正しい読み方を知らない。だから、「新瀉」って言わないと通じない。でも、わざわざ間違った方で言うのもなんだなー、と思って、「新潟」と言ってみたりするが、私の発音が悪いこともあり、さっぱり通じない。ただ、台湾の南の方に「潟」を使った地名があるらしく、稀に読み方を知っている人に会うことはある。

一方、新潟でも「さんずい+写」で潟の字を使うことがある。あれは「瀉」の簡体字だ(日本語の「写」を台湾では「寫」と書く)。新潟に帰ってきて気づいたが、新潟駅の中の中国人向けの簡体字表記も「さんずい+写」になっている。中国大陸に潟なんて無さそうだから、中国では台湾より更に死語になっているようだ。間違った方が定着しちゃったっていうことなのかな。

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