2023年度ISOPの活動まとめ
ISOP(Ishinomaki Save the Ocean Project)では、ウニ駆除や海中造林などを行い、磯焼けによって消えかけている海藻を次世代に残していく活動をしています。2020年からスタートし、これまで海洋環境に合わせて、いろいろな挑戦をしてきました。
2023年の海は、これまでのどの年とも違っていました。夏に三陸沿岸の海水温が異常に高くなり、牡蠣やホヤといった海産物の養殖は大きなダメージを受けました。ISOPでも、海藻が予想通り育たなかったり、駆除や移植対象であるはずのウニが死んでしまったりしました。例年とは大きく異なった2023年度。ISOPがどんなことに取り組んだかを紹介します。
取り組み①ーウニと海藻の密度管理
磯焼けの原因は沿岸開発や生物による食害、海水温の上昇など、複数ありますが、その中でもウニによる食害が一因として挙げられます。そこでISOPでは、ウニを駆除・移植したりと、人の手を加えることで、海藻とウニのバランスを調整してきました。「高級食材のウニを駆除!? 」と思う方もいるかもしれませんが、海藻が減っているウニの身入りはどんどん悪くなっていきます。そこで、ウニを減らしたり、密度を管理しながらウニを海藻のある海域に移植することで、海藻も維持しつつ、ウニの身入りもよくすることができるのです。
昨年度は、2000個のウニを駆除し、2000個のウニを移植しました。結果としてウニの身入りがよくなり、そのうちの一部は漁業者が販売できるようになりました。
しかしある日、海に潜るとびっくりするようなことが起きていました。駆除・移植するはずのウニが死んでいたのです。2023年の夏は海水温が30度を超える日が1ヶ月近く続いていました。その影響を受け、海藻を減らす原因でもあったはずのウニが死んでしまったのです。海藻だけでなく、ウニも減ってしまう海で私たちにできることはなんなのか。大学や研究機関と連携しながら、調査を続けたいと思います。
取り組み②ー母藻の設置
人口的に海藻を増やすことができないか、ということで続けている海中造林。森の植林活動の海版と捉えてもらうといいかもしれません。2023年度には、コンブやアラメを巻きつけたロープ(7m)を22本設置しました。人工的に育てた海藻から胞子が出て、天然の岩盤に付着することを目指しています。
コンブは夏を迎えると死んでしまいます。そのため、6月ごろにはコンブのついたロープをウニがいる海域に運び、ウニのえさとすることで、天然の海藻の減少を防いだり、ウニの身入りをよくするために活用しています。
また、昨年度はウニのえさとするだけでなく、コンブの一部を使用することで、「KAISO」という石けんとハンドクリームを開発しました。多くの新聞やテレビでも取り上げていただき、売れ行きも順調です。
さらに海藻を増やすために、今年度は『貝藻くん』の設置も試験的に始めました。これに海藻の種がついた糸を巻きつけることで海藻を増やせないか試験中です。小型の漁礁の役割を果たすため、魚のすみかとなることも期待しています。
取り組み③ーモニタリング
上記二つの取り組みによる効果を測定するため、モニタリングを定期的に行っています。現在、大きく分けて3海域、11ポイントで観測しています。ISOPによる効果は場所によってかなりばらつきがありますが、海藻が増えている海域も多く見られます。
今後の展望
2024年度では、海の環境が変化していることを受けて、次の3つのことを中心に活動する予定です。
①海藻の胞子が付着する基質(岩盤)の改善
スクレッパーなどで岩盤を削り、胞子が付着しやすい環境づくりを行います。海中造林による効果を最大化を狙います。
②ウニの駆除ではなく、移植を中心に実施
モニタリングを通じて、ウニと海藻の様子を観察しながら、適正な密度を維持していきます。
③子どもたちへの啓蒙活動
磯焼けやISOPを子どもたちに知ってもらうための体験活動(漁業体験や調理体験)を継続して実施していきます。
海水温の上昇は地球全体の問題であり、一部の地域でどうこうできる問題ではありません。しかし、だからといって、だまって海洋環境が悪化していくのを見ているわけにもいきません。私たちは、日々海と向き合い、少しでも状況を改善していくための取り組みを続けていきます。
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