礒永秀雄の詩の広場
礒永秀雄の歩んだ道について、記事をまとめていきます。
お酒は止して帰りましょう 西のみ空が酔っぱらっていたって 私がのれんをはじくには及ばん 駅前公園の水の上 コポコポと立つ噴水の泡に 喉のあたりがゴクンと鳴ったって ビ…
人生 ついに 復讐の一念 白い刃の雨あられが 決めた まともまんまのくいはずしが みぞおちをゆすって腹はきまった おう にじむ涙のせせらぎも 寄つては一つの小川とな…
ゆすれどゆすれど 実は 落ちず ゆすぶるたびに 落ちる 頬 生えるは 苔か 身の錆び か 骨身に重いよ 傷のかさ 人生万里 夢 茫乎 寄せるは娑婆の濁流とうとう 待…
狼は 藁屋根の下に棲む 柱の林の中に かまどの穴に 客間の床の丘に また嫁たちの涙の谷に 畳の埃を吸っては生き 人の胸倉の肉を食っては太る 夜中に目をさますと 家族の…
錨をおろせ 赤道下 南と北とのどまん中 見事なあかねの雲の下に わが革命の船を止めよ 海は涙の寄るところ そこは珊瑚のあるところ もぐるじゅごんのあとを追って 錨を放…
誰が送れようか おまえを その無垢の身を 花のこころを 向こうの岸へ 霧の彼方へ 白い造花に飾られた町へ どの葦舟で送りえようか たとえ 約束のように 虹の橋が ま…
花束が贈られる 遠い香りの 花束が渡される 私達の掌に しかしむろ咲きのその花々を 私達の手は静かに拒む 私達のこころは もはやそれらの花々を必要としない 私達の眼…
男は眼帯をかけ 男は絵筆を走らせ 女はマスクで口を覆い 女は歌くちずさみ 男も 女も ネツカチーフで頬をつつみ 淡いきらりの首飾りには 四万なにがしの番号札がロケッ…
いつのまにか熟れた青い麦 いつのまにか刈り取られた茶色い麦 すたすたと闇に消えた半歳の誠実 そつぽを向いてわたるのだ太陽 富士は美しい足もとから痩せ 夜毎蹴はずされ…
詩に「現代」と銘うつことは、詩人の責任問題でなければなりません。それほど複雑怪奇な発展をとげたものが、世に罷り通る「現代詩」なのです。ここでは現代詩の定義として…
日は黄金の薔薇 死んだ薔薇 うるしの黒の仏間に似合うよ ぽくぽく木魚の春の日などに そうした想いがしきりであります せむしの軍勢ちよろちよろ行き交い 眼の高さだけの…
う 牛に牽かれて善光寺 う 牛に牽かれて善光寺 う う う う うめけば春 らんまん 心にくいまでの春 ゆ 由良さんだ お金のない ゆ 由良さんだ だらしのない い…
潜水服のような春のたそがれです 僕はしだいに重い空気の沼を沈んで わずかにくゆらせている一本のパイプ おびただしい光の群れはどこへ行ったのでしょう 風も死に 歌も死…
作詞:礒永秀雄 作曲:藤村文夫 Ⅰ 暁鐘さえて峰をゆき こだまは瀬戸の海に散る ああ太陽と風のもと 燃え立つほほはくれないに はつらつとして歩み寄る …
────幼年のころ──── 馬は 笑うのだそうである あいつは そう信じている 耳をひくひく動かしてみせながら 「馬は笑うぞ」と また ささやきに来た …
燃えはじめたまま墜ちていつた星を いかに私たちの手が捉え得たろう 地表を穿ったいん石の あの深い暗黒にむかって おうおうと私たちは徒に吼えるばかりだった するとこだ…
2024年7月1日 06:52
お酒は止して帰りましょう西のみ空が酔っぱらっていたって私がのれんをはじくには及ばん駅前公園の水の上コポコポと立つ噴水の泡に喉のあたりがゴクンと鳴ったってビールはひとが飲めばよろしいお酒をのめばまたトラになるぐうたらぐの字のトラになります純粋 なんぞになれるもんかい帰ろう 帰ろう 街の灯尻目にごくんと生唾をもう一つ鳴らして汽車に揺られて バスに揺られて弁当箱にカラコロとあ
2024年6月24日 07:01
人生 ついに 復讐の一念白い刃の雨あられが 決めたまともまんまのくいはずしがみぞおちをゆすって腹はきまったおう にじむ涙のせせらぎも寄つては一つの小川となりふところ手した水車を廻す その音は杵に聞け 臼に聞けああ とことん とことん と空白をつく杵のひもじさしくしく更ける胸の谷間に百合が咲こうと 咲くまいと だどうしてくれる この貧と窮!ジャンケンポンは負けつづけに
2024年6月17日 06:56
ゆすれどゆすれど 実は 落ちずゆすぶるたびに 落ちる 頬生えるは 苔か 身の錆び か骨身に重いよ 傷のかさ人生万里 夢 茫乎寄せるは娑婆の濁流とうとう待った と やおら棒桟にわれと わがはらわたで身をゆわえ腕に泣く子ら 肩に 父母──── 大丈夫?──── なんの これしき!水中の陣の搦手には 妻おう 降るわ降るわ雨 白い刃の雨雨 したたかに 横なぐりに胃の腑の壁
2024年6月10日 07:02
狼は 藁屋根の下に棲む柱の林の中にかまどの穴に客間の床の丘にまた嫁たちの涙の谷に畳の埃を吸っては生き 人の胸倉の肉を食っては太る夜中に目をさますと家族の誰彼の寝息がみんな狼のあえぎに聞こえたりして慄然とする乳呑子さえも時おり狼に姿を変えて吼え立てながら母親の肉を食い荒らす家じゅうの空間という空間はびっしりらんらんと 飢えた狼の眼にみち日本の藁屋根の下狼のいる花園
2024年6月3日 07:03
錨をおろせ 赤道下南と北とのどまん中見事なあかねの雲の下にわが革命の船を止めよ海は涙の寄るところそこは珊瑚のあるところもぐるじゅごんのあとを追って錨を放て 沈めてゆけ繰出せ さらせ 錨鋼 わが腸錆びて嚙み合う悲しみの鎖をおお 灼熱の日の下に青いしよつぱい水の下に錨をおろせ 赤道下どろどろどろどろ船をゆるがし珊瑚の林に沈んでいつては天地の語らいをして来ねばならん
2024年5月27日 07:04
誰が送れようか おまえをその無垢の身を 花のこころを向こうの岸へ 霧の彼方へ白い造花に飾られた町へどの葦舟で送りえようかたとえ 約束のように 虹の橋がまた誘ないのように向う岸からおまえの胸にかかつたからとて結ばれた岸 とは誰が言おう招かれたのはおまえと誰が言おう舟を柩とともづなを解き色とりどりの矢車の花におまえの生きたむくろを埋めて静かにお眠り と 安らかにおやすみ
2024年5月20日 07:05
花束が贈られる 遠い香りの花束が渡される 私達の掌にしかしむろ咲きのその花々を私達の手は静かに拒む私達のこころはもはやそれらの花々を必要としない私達の眼は深い憂いを湛えて 野に 山にそれからなだらかな丘の起伏に向かって開かれそこに もつと美しい花々を見る私達には もう 根のない花々はいらない私達には もう やさしい贈物はいらない花束を贈る手の淋しい白さその腕の中に私達
2024年5月13日 07:01
男は眼帯をかけ 男は絵筆を走らせ女はマスクで口を覆い 女は歌くちずさみ男も 女も ネツカチーフで頬をつつみ淡いきらりの首飾りには四万なにがしの番号札がロケットのようにちよこなんと輝き男も女も白いナイロンの服つけ腰には大きなコルセット模様のもの穿めゆらりゆらりと風に揺れ遠眼にも見られる それらくらげの亡霊たち絵かきの男たち 眼帯を外さず歌うたう女たち マスクを外さず笛ふけばゆ
2024年5月6日 07:01
いつのまにか熟れた青い麦いつのまにか刈り取られた茶色い麦すたすたと闇に消えた半歳の誠実そつぽを向いてわたるのだ太陽富士は美しい足もとから痩せ夜毎蹴はずされる人々の枕あげひばりの声はいまだあんなに天の深みを探っているのにいつのまにか毀されたねぐらいつのまにか荒らされたふるさと一日 叫びつかれて落ちてくるひばりにたといどんなやさしい花のしとねが編まれていようと巣を奪われたひ
2024年4月29日 07:02
詩に「現代」と銘うつことは、詩人の責任問題でなければなりません。それほど複雑怪奇な発展をとげたものが、世に罷り通る「現代詩」なのです。ここでは現代詩の定義として、「現代詩とは現代人の内外の生活を知性と感性で高度に圧縮して、新しい世界の意味を伝える短文芸である」とでも申しておきましょう。「詩」という時、一般の人々に浮かんでくるのは藤村であり、白秋であり、またカアルブッセの「山のあなたの空遠く」な
2024年4月22日 07:06
日は黄金の薔薇 死んだ薔薇うるしの黒の仏間に似合うよぽくぽく木魚の春の日などにそうした想いがしきりでありますせむしの軍勢ちよろちよろ行き交い眼の高さだけの風はそよそようたて うたて とラッパも鳴ります吹き手は サボテンラ ラ 悲しもの春景色空には空で藪がありがらがら蛇はかくれ蓑着て只今 ゆるゆる 巡察中日は黄金の薔薇 死んだ薔薇トヨアシハラの チイホアキのいちめん
2024年4月15日 06:53
う 牛に牽かれて善光寺う 牛に牽かれて善光寺う う う う うめけば春らんまん 心にくいまでの春ゆ 由良さんだ お金のないゆ 由良さんだ だらしのないいわしの腐った目ん玉で足は かげろう歩けば 体がこわれそうで走るのなんざあおつくうでへなへなと坐るそのお尻にもえあがるぬくみに てれかくしの焼酎一杯破産だ 屑だ 空中分解だ などと呟くうちにもやしの根はつきああ 糞
2024年4月8日 06:59
潜水服のような春のたそがれです僕はしだいに重い空気の沼を沈んでわずかにくゆらせている一本のパイプおびただしい光の群れはどこへ行ったのでしょう風も死に歌も死にああ 僕の口臭を封じこめるこの沈鬱な季節の底に溢れひたす不確かなイオンを感じながらそれでも 創生の層を求めて神様 ──── あなたのように僕も立ちつくしてしまうのです 初出不明 詩集『海がわたしをつつむ
2024年4月1日 07:08
作詞:礒永秀雄 作曲:藤村文夫Ⅰ暁鐘さえて峰をゆきこだまは瀬戸の海に散るああ太陽と風のもと燃え立つほほはくれないにはつらつとして歩み寄るわれら室積中学校Ⅱ南風灘を吹きくればうしおはよせてはだに鳴るああ天駆ける群像は五百の汗と意志の雲うたごえ高く励みゆくわれら室積中学校Ⅲ山野は光り風香りみどりは映えて胸にありああ友垣はなおかたくみさおをかえ
2024年3月25日 07:15
────幼年のころ────馬は 笑うのだそうであるあいつは そう信じている耳をひくひく動かしてみせながら「馬は笑うぞ」とまた ささやきに来た 〇あいつは 五つか六つのころ鳶職のおやじといっしょに流れてきたおふくろのことをたずねたら「東京に待たせてある」といった「おまえ とし いくつだ」ときいたら「さあ 五つか六つだろう」とよそを向いて答えたそれ
2024年3月18日 07:13
燃えはじめたまま墜ちていつた星をいかに私たちの手が捉え得たろう地表を穿ったいん石のあの深い暗黒にむかっておうおうと私たちは徒に吼えるばかりだったするとこだまは甦ったキリストのように死んだものだけに許されるあの厳かな声でルカに伝えられた言葉をかえした「平安 なんじらに 在れ」と君は君の拒んだキリストの中に甦っていた「死んでもまだ十字架を背負って往くのか」君の真実がやりきれなかっ