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カジュアルな秘湯「加仁湯」を「鶴の湯」と対比しながら (日光市 川俣)

日本を代表する秘湯という言い方も変ですが、本気の秘湯ではないカジュアルな秘湯の代表格が、奥鬼怒川の「加仁湯」と乳頭温泉の「鶴の湯温泉」ではないかと思います。これまでに鶴の湯には3回宿泊していまして、今回はじめて、ずーっと行きたいと思っていた加仁湯に行ってきました。加仁湯は間違いなく素晴らしい温泉でした。

あまりにも有名な加仁湯ですから、ネット上にはたくさんの旅行記や情報があります。私も事前にそれらを参考にして滞在イメージを膨らませていました。そして実際に行った際に、この情報が足りていないなというような点を中心に記事化しておこうと思います。

また加仁湯ユーザーと鶴の湯ユーザーは重なる部分も多いと感じているので、随所でこれらを対比しながら書いてみます。

アクセス方法

まず加仁湯までのアクセスはやや特殊です。普通に自家用車、あるいは電車やバスで宿まで行くことができないからです。そしてこの点が秘湯感を維持できている一番のポイントだと思います。日本には本当に山道を何時間もかけて自力で歩かないとたどり着けないような、湯船も脱衣所もないような本物の秘湯がたくさんあると思います。私は温泉に対してそこまでのこだわりというか根性がないので、加仁湯はちょうど頃合いの秘湯アクセスだと思います。

今回は自家用車で女夫淵(めおとぶち)駐車場まで行き、そこから加仁湯の無料送迎バスで宿に向かいました。この送迎バスは宿泊者しか利用することができないので、日帰り入浴の方は歩くか自転車を使うことになります。自転車と言っても現時点でレンタサイクルはありません。自転車の場合はここから高低差200メートル以上、距離8キロ弱の未舗装の道を登り続けることになります。

女夫淵駐車場
バスの乗降車場と右側の建物は待合室
加仁湯を含む奥鬼怒4湯へのアクセス案内板
近隣マップ
徒歩ルートの入り口
送迎バスはこの「奥鬼怒スーパー林道」を走ります。ここから先は一般車両は通行できません

徒歩の場合は鬼怒川沿いの奥鬼怒歩道を歩いて1時間半ほどだそうです。重装備は必要ないようですが、少なくとも両手がフリーな状態で、靴は登山靴とまでは言わないにせよ履き慣れたスニーカー類は必須です。時期によってはがけ崩れが起きていたり、残雪や水が湧き出すなどするので、トレッキングなどの経験がない僕のような人は徒歩はおすすめしません。また徒歩の場合に奥鬼怒遊歩道ではなく、送迎バスが走る奥鬼怒スーパー林道を歩くこともできますので、その場合は装備や服装はかなりカジュアルにできます。それでももろんスーツケースを転がして行くことはできません。

駐車場までカーナビを設定する時も注意が必要です。女夫淵(めおとぶち)駐車場はそもそも普通読み方がわかりませんし、住所や電話番号がわからないのです。ではどうするのかというと、1キロほど手前にある「こまゆみの里」という宿の情報をカーナビに入れてください。そこから道なりに進めば広い駐車場までは迷うことなくすぐです。

ここまでの道路は完全に舗装されています。ところどころすれ違いにくい場所もなくはないですが、ほとんど大丈夫だと思っていいと思います。季節によっては冬用タイヤが必要なことは言うまでもありません。周辺の積雪状況はすぐ近くの八丁の湯のライブカメラで確認することができます。

4月7日の訪問でしたが、建物の北側にはかなり雪が残っていました

また、女夫淵駐車場までは日光市営バスが東武鬼怒川温泉駅から1日に4本運行されています。運賃は1,570円です。このバスのダイヤと加仁湯の送迎バスのダイヤを確認しておけば、乗り継ぎは非常にスムーズです。自家用車を使わなくても楽勝でアクセスできるカジュアルな秘湯たる所以です。

一方の鶴の湯は自家用車で直接宿まで行くことが出来ます。ただし冬は除雪はされていますがかなりの大雪です。おすすめのアクセスは秋田空港からエアポートライナーという乗り合いタクシーの利用が便利です。


部屋の違いはどうか

部屋は建物によって本館。穂積館、アスナロ館があります。今回宿泊した部屋は穂積館の4階最上階の鬼怒川沿いの部屋で、たぶん最も料金が高い部屋だと思います。なのですが、正直どの部屋であっても料金に見合う価格差があるかはちょっと微妙かなと思いました。違いがあるとすれば、川側か山側か、風呂や食事会場までの距離には若干の違いがあります。私は再訪する場合は公式サイトの最安値である「部屋おまかせプラン」で十分かなと思います。加仁湯の魅力は風呂が全てだと思ったからです。部屋のランクによる満足度の増減はほとんど無いと思います。

室内の写真を取り忘れていましたが、ごく普通の広い部屋ばかりだと思います。一方、鶴の湯には3畳一間みたいな、湯治宿みたいな部屋からかなり豪華は部屋までバリエーションがあります。個人的には狭い部屋の方が味があるかなと思います。

バリアフリー対応は厳しい

女夫淵駐車場から加仁湯までは車椅子に対応したタクシーを利用することも不可能ではないようなので、必要な方は事前に宿に確認してみてください。また館内はバリアフリーとは言い難い構造です。少なくとも車椅子のみでの単独移動は不可能です。サポートする方がいればなんとかなりそうですが、露天風呂については風呂までのアクセスが結構大変で、内湯は比較的楽です。


ネット環境

秘湯で気になるのがネット環境だと思います。こんな時くらいはデジタルデトックスすればいいのにとは思いますが、なかなかそうとも言ってられないのは皆さんも同じだと思います。加仁湯館内は3大キャリアは接続できます。楽天やUQはわかりません。またWiFiもあるので部屋によっては室内では接続しないかもしれませんが、館内のどこかに移動すれば十分高速で接続しました。ただし、女夫淵までの途中経路ではドコモは接続できない場所が結構ありました。他キャリアも同様ではないかと思います。


温泉(特に混浴)

加仁湯はなんと言っても温泉です。私は女性専用の第一露天風呂と貸切露天風呂以外の全てに入浴しました。加仁湯では混浴と男女別、そして貸し切りの3種7湯に別れています。混浴ではバスタオル巻きはOKです。水着はNGとなっていますが、外国人男性の中には水着の人もいました。ではそれぞれの感想を。

第一露天風呂

女性専用のためにわかりません。

第二露天風呂

私はここが一番気に入りました。混浴でタオル巻きOKです。ここは時間によって色や濁り具合がかなり違っていました。この日は前日が休館日だったために完全に湯を抜いたそうで、ひょっとすると新鮮な湯は特に透明なのかもしれません。小屋みたいな男女兼用で仕切りのない脱衣所ですので、若干難易度は高めかもしれません。でもここが一番気持ちよかったのでぜひチャレンジしてみてください。

この時はかなり透明でした
左にある小屋のようなものが男女兼用の脱衣所です。脱衣カゴは2つしかなく、2人入れる程のスペースです。中には仕切りもありません。右側に見えるのが浴槽です
夜りなるとかなりにごり湯になっていました

第三露天風呂

ここも混浴でタオル巻きOKです。脱衣所は完全に男女別になっており、湯船への入り口も別々です。鶴の湯の露天風呂と同じような感じです。中央部分に石が並んでいて、ここがなんとなく男女の境界線みたいになっていますが行き来は自由です。左側の女性入口側の方が温度は高めです。湯温は第二露天よりも低かったと思います。泉質はここが一番とろとろでした。

利き湯 ロマンの湯

ロマンの湯というネーミングがピンときませんでしたが、混浴でタオル巻きOKです。源泉が異なる5種類の小さめの湯がブースのように並んていて、利き酒のように異なるお湯を楽しめます。脱衣所は完全に男女が別れています。どれも2人入るのがやっとというサイズ感です。確かに泉質は全部異なりますが、さほど違いはなかったと思います。ただいくつかの湯はやけどしそうなくらい非常に温度が高いので、近くにあるホースで加水しないと入れなかったです。ホースの水は温度こそ冷たいですが、水道水ではないと思います。ではロマンの湯を左から順に写真で紹介します。

それぞれの湯は木製のブースのように並んでいます
奥鬼怒4号
黄金の湯
岩の湯
ガケの湯です。右にあるのがたけの湯
たけの湯をガケノユは仕切りがなく並んでいます。たけの湯は木桶です。

カモシカの湯

混浴でタオル巻きOKです。大きな岩をくり抜いたような湯船です。男女別の脱衣所は手前の貸し切り風呂と共用だと思います。温めの湯で加仁湯の中では硫黄臭も少なく、濁りもあまりありません。また目隠しになるようなものは何もありません。川に一番近いのでせせらぎの音を楽しめます。

黒っぽく見えるのは岩の色のせいではないかと思います

内湯

最後に内湯です。完全に男女別で、加仁湯で唯一シャワー付きの洗い場があります。アメニティーは温泉宿でよく見かける馬油でした。結構トロトロのいいお湯です。

角越しに川が見えますが音は殆ど聞こえません
10人くらいは入れそうな大きめの湯船です

このように加仁湯はバリエーションに富んだ風呂を楽しむことができます。それぞれの風呂は場所が離れていて、肌からやタオル巻きで移動できるような構造や配置にはなっていませんので、風呂を移動するたびに脱衣所を使うことになります。

加仁湯も鶴の湯も、広義では泉質は似ていると思います。加仁湯は風呂の数が多く、それぞれ甲乙つけがたい魅力があります。鶴の湯の魅力はあの有名な大きな混浴露天風呂、それもできれば雪のあるときに行きたいものです。小さな内湯も夜入ると趣があって私は好きです。

食事

食事は山小屋に近いような山の宿ですし、料金から考えても過度な期待はしないでください。と言っても、夕食も朝食も素朴でとてもおいしい食事をいただくことができます。

夕食
これは到着時にお昼ごはん代わりに頂いた山菜そばです。料金は宿泊料には含まれていません。冷まで持ってきてくれます。

鶴の湯の食事は芋鍋がすごく美味しいですね。食事だけで言うと鶴の湯の勝ちだと思います。

予約方法とおすすめの宿泊日

私が加仁湯に宿泊をした日は、たまたま休館日の翌日でしたので、宿に12時半ごろ送迎バスでに着いた時点でお客さんは誰もいない状況でした。同じ送迎バスに乗ってきた一人と、別の宿から徒歩で到着した台湾からのご夫婦だけでした。さらに10日ほど前に発生したがけ崩れによって奥鬼怒歩道が通行止めだったので、日帰り入浴の人が誰もいなかったのです。そのため夕方までの間、全ての風呂をほんの数名で独占することできました。休館日明けは狙い目かと思います。

なお加仁湯でのすべての支払いは現金以外は利用できません。公式サイト以外の楽天トラベルをはじめとする全てのOTAサイト経由でも、事前カード決済はできず、すべて現地での現金決済だけです。館内はもちろん、自力で行ける場所にATMなどありませんのでご注意ください。

また公式サイトだけのお得なプランとして、平日限定ですが「【ホームページ・平日限定】ロビーでリラックス!選べるドリンク2杯付き♪生ビールorサワーorコーヒー」というプランがありました。下の写真のようなドリンクチケットを1泊につき一人2枚付いてきます。私は生ビールにしましたが、グラスビールだろうと思っていたら普通の中生ビールで、温度と炭酸の具合がとても良かったです。注ぎ方と管理がしっかりしているということです。

このチケットはロビーでのみ有効で、食事のときには使えません

学生の頃からずっと行きたい行きたいと思い続けてきた加仁湯。確かに秘湯ですが、アクセスが送迎バスを利用すれば案外楽でした。高級な温泉宿ではもちろんなく、山小屋とは言いませんが湯治場の雰囲気もある鄙びた感じの素晴らしいお湯でした。

一泊2食で1.3万から1.8万円というのはなかなか魅力的な設定です。建物や部屋は古いです。いろいろなところが綺麗で新しいかと言うとそうではありません。かといって汚いとか不潔ということもありません。本記事の写真や動画を見ていただいて直感的に許容できそうと感じられたら、加仁湯は本当に素晴らしい宿です。

帰りの送迎バスは9時と11時20分発です。時間が許すようでしたら、朝食後に近隣の日光澤温泉、八丁の湯、手白澤温泉まで歩いて日帰り入浴をして、11時20分のバスまでに戻ってくるのがおすすめです。それぞれ歩いて10分から20分ほどで、また趣の異なる湯を楽しむことが出来ます。

今回3ヶ月有効のディスカウントチケットを頂いたので、期間中にもう一度行きそうな気配です。







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