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久高島の雨音はショパンの調べ、ではなくて自然のリフレクション (沖縄 久高島)

久高島は沖縄本島東南端に位置する知念岬の東海上5.3kmにある、周囲8.0kmの細長く、起伏も少ない平坦な島です。全域が沖縄県南城市知念に属しています。人口は238人、世帯数は153世帯です。安座真港という港からフェリーで25分ほどの島です。

ここは琉球の創世神アマミキヨが天からこの島に降りてきて国づくりを始めたという、琉球神話聖地の島、とのことです。

ここまでは、ネットで検索するとすぐ分かることです。久高島はいわゆる聖地とされていて、パワースポットということになっています。私もここを訪れたきっかけは、そういう不思議な力を感じたいと思ったからです。なのですが、実際に行ってみてわかったことは、神の力というよりは自然の力、あるいは自然そのものを感じられる場所なのでした。

島の北側にある久高島休憩所からの海。曇りでも海はご覧のとおり美しい
こちらも久高島休憩所

沖縄の離島は、訪問順に久米島、宮古島、伊良部島、来間島、池間島、大神島、屋我地島、石垣島、小浜島に続いての久高島の訪問です。これらの島々と比較すると、久高島はかなり異なる存在であり、全く異なる空気感を感じられる場所です。

多くの離島と異なり、沖縄本島からは5.3キロしか離れていないにもかかわらず、ほとんど開発が行われていません。宿泊施設は少なく、それもリゾート感ゼロの民宿か、合宿所のような久高島宿泊交流館しかありません。食事ができるところは5軒しかなく、それらの多くが不定休だったりして食事難民になりかねません。Google Map上にある情報では営業していることになっていても、ほぼアテになりません。通算4泊していますが夜は毎日1軒だけしか営業していなくて、かつそれらも5軒中2軒です。

またどの宿も食事の提供はしていません。朝食が食べられるのはたった1軒だけ、「久高島宿と朝食のおかめや」さんだけです。ここの朝食はとてもおすすめです。

おかめやさんの朝ごはん スープが美味しい
とくじんさんのイラブー(ウミヘビ)汁。かつおに近い風味だが身は食感も含めて正直美味しいものとは言い難い。残すくらいなら頼まない方が無難

食べものを購入するにも離島によくある共同売店が2軒しかなく、1軒はほぼ営業していないようです。そこで購入できるものも非常に限定的です。オリオンビールや酎ハイ、あとは泡盛でさえ「請福」と「まさひろ」しか置いてありません。波照間の「泡波」はもちろんありません。つまみ類も缶詰くらいです。

島にはプールはありません。ビーチは何箇所かありますが、港に隣接しているメーギ浜を除いて泳ぐことはできません。浜はどこも聖地だからなのです。そのメーギ浜も南の島のビーチのイメージとはほど遠い、漁港の中の生け簀みたいな感じです。海の透明度は十二分に綺麗ですが、このあたりだと宮古島には透明度にはだいぶ敵いません。

こんな具合ですから、沖縄でバケーションというイメージで島に来ると見事に何も達成できない島なのです。そしてそれこそが久高島の魅力なのです。

冒頭に書いたように、パワースポットとして知られている部分があります。確かにそうです。というよりも島の大部分が聖地です。ですがここは自然と全身で感じられる場所なのです。特に私はここで感じる雨音の違いにすっかり魅せられています。

今回は2度めの訪問で、最初の訪問のときの雨の音の違いにとても驚きました。今回も雨目当てだったりしたわけですが、夜になって降り出した雨の様子をぜひ感じてみてください。できればヘッドホンでお聞きになってみてください。

雨の音が高い、硬い、短いと感じませんか? 本土の雨音は細かくて、連続的で、サーとかザーという風に私は聞こえます。時には雨音はショパンの調べという感じがすることもあります。ところが久高島の雨はそうではありません。ドラムロールのような短くて硬い音がします。これは私の想像ですが、雨粒が大きいのと、雨粒が当たる対象が本土とは異なるからだと思います。

先程の動画を撮影した場所は、こういう樹木が生えています。これは「モモタマナ」という木です。決して珍しいものではなく、沖縄など何処にでもあるような木です。モモタマナに限らず、久高島の木々はどれも葉が大きく、硬いのです。これは本土とは異なり、ある程度水を蓄える必要があったり、大粒のスコールや台風に耐える必要があるからだと思います。その結果、先程の動画のような音になると私は感じています。

また都会では雨は建物やコンクリートやアスファルトに落ちることになります。これらに当たる時の音と、葉に落ちる音が明らかに異なるのです。本土でも葉に雨は落ちますが、葉の大きさが違うのです。大きな葉に落ちる雨音は大きな音がするのです。まさに雨がドラムを叩いてる感じです。音による自然のリフレクションです。

モモタマナ

同じ場所の翌朝の様子です。ヘッドホンで聞くとわかりますが遠くで波の音が聞こえます。島の東側のリーフに波が当たる音です。これは一日中聞こえます。それに風の音、虫の声、そして鳥が鳴きます。

島の東にあるのがイシキ浜です。ここももちろん聖地です。五穀の種子の入った壺が漂着したという五穀発祥伝説の浜とのことです。ここにいるとニライカナイという発想に至った理由が分かる気がします。ニライカナイとは、海のかなたや地底にある,常世国(とこよのくに)と信じられている聖なるところで、東の水平線の彼方にあるとされるようです。久高島から日本列島はニライカナイではありません。そして久高島の東西南北のすべての海を感じると、東だけが特別であることがよく分かるのです。久高島からは東側だけ何も見えないのです。そしてそちらの方向から日が昇るのです。何か畏敬の念を感じてもおかしくない、いや私も感じます。

久高島では五感が研ぎ澄まされます。あるいは五感が試されます。自然がある場所は日本にもいくらでもあります。そのなかでも離島というロケーション、数々の伝説神話と、それが生まれた理由を感じられること、そして風が他とは一線を画しています。ここでは本を読むこともなく、リラックス目的でもなく、ただひたすら何もせずに、かと言ってボーっとするのではなく、自然を感じて対話するために行くべき場所です。久高島は私にとってそんな場所です。

久高島の情報はこちらの公式サイトから。久高島は一人旅がおすすめな気がします。

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