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生身の人間のコミュニケーション限界が分かる古代劇場(プロヴァンス オランジュ)

プロヴァンスの古代都市の一つ、オランジュに出かけたのは2016年の9月のことです。プロヴァンスはお気に入りのエリアでこれまでに6,7回は訪れていると思います。オランジュにあるローマ時代の劇場は世界遺産に指定されています。旅の目的はこの劇場です。

パリからTGVでアヴィニオンまで行き、そこから乗り換えてオランジュに到着しました。

TGVのファーストクラス
オランジュの駅
ごく普通の街中にある公園
アパートメントの素敵なドア
雑貨屋で売っていたこのイラストが好きです
そんなに雰囲気のある街でもありません

駅から宿までは荷物もあったのでタクシーを使いました。

宿泊したB&Bへのアプローチ 別のお客さんが散歩から帰ってきたところ
B&B Villa Aurenjoの全景



目的であるローマ劇場です。私は歴史に興味があるのではなく、建物や構造物に対して関心があります。誰が作ったとか、政治的歴史的背景にはあまり興味がありません。とは言えども、一応ウイキペディアは見ておきました。

古代劇場 (Théâtre antique) とも呼ばれる。1世紀、アウグストゥスの治世下で建造されたものであり、1951年に3.55メートルのアウグストゥス像も発見された。この像は、現在はもともと置かれていた場所と推測される壁龕に納められている。この劇場の収容人数は8000人から10000人程度だったと推測されている。
4世紀には劇場は放棄されて廃墟となったが、中世には防衛拠点としても用いられた。
1825年からはプロスペル・メリメの発案による修復計画が着手され、建築家シモン=クロード・コンスタン=デュフーに委託された。
1869年からは毎年夏に芸術祭が開催されている。当初「ローマ祭」(fêtes romaines) と名付けられていた祭りは1902年にコレジー (Chorégies d'Orange) と改称され、現在に引き継がれている(コレジーはギリシャ語で「舞踏」などの意味)。

Wikipedia オランジュのローマ劇場とその周辺及び「凱旋門」より


1世紀に作られたということですから1900年以上の時を重ねていることになります。こういったマイクもアンプもない時代のステージが私はとても好きなんです。

一番高いところから舞台を見下ろす
下手側
上手側 結構な高さです。

客席の大部分は復元ではなくコンクリートで新たに作られたものです。それでも大きさやステージまでの距離感は当時の状態を感じることができます。

収容人員は1万人程度とのことですから、現在のアリーナとそんなに変わらないわけです。これ以上大きいと音(声ですね)が聞こえなくなりますし、ビデオスクリーンも当然無いので見えなくなるからですね。つまり人間が生身でコミュニケーションできる物理的限界はこういうものなんだと思います。

それなりの音響設計がされていますので、ステージから客席に向かって声を出すとちゃんと客席の奥まで聞こえます。もちろん聴衆の歓声があれば聞こえないです。とうことは、当時は王などの為政者の声を黙って聞いていたに違いないわけです。また逆も真で、客席の声が壇上の王にもよく聞こえるのです。これは同じプロバンスのニームのやはり古代劇場で実際に体験したことがあるのでいつか別記事にします。

ステージ前から見上げる
アウグストゥス像
最前列の真ん中の席からステージを見る
最前列から客席上部を見上げます
客席の裏側にはぐるっと通路があります
ステージ背面を外から

劇場のすぐ隣では、復元作業が進んでいないエリアがあります。劇場もおそらく相当長い時間こんな状態だったのでしょう。

復元されていない状態(かと言って放置されているわけでもない)


オランジュの街は、プロヴァンスの他と比べるとあまり面白くはないです。結構都会になっていますし、アート感も少ないし、劇場以外には見るべきものはない感じです。食も全体的には今ひとつという印象でした。オランジュはピンポイントで劇場一本に絞っていいと思います。

中心部の細い路地
イタリアンっぽいリゾットというよりは冷静サラダのようなものでチーズがとても美味しかった




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