マガジンのカバー画像

住宅建築と大工の仕事

7
大工仕事の逸話。当社親方へのインタビューを通じて「大工の世界」を公開します。
運営しているクリエイター

記事一覧

ご挨拶

※当社大工親方へのインタビューを通じて「大工の世界」を公開するコラム。連載前のご挨拶です。 当社創業社長の平原末蔵は、現在は経営の一線から退き、専らアイ創建の工事現場での総指揮・総監督を務めています。社長退任後の肩書は、会長ではなく「親方」。一大工職人として職務を全うしたいからという本人の強い意志がその理由です。 15歳で長野県から上京、東京鎌田で住み込みで働きながらスタートした大工人生。半世紀を超えた今でも物づくりへのこだわりは衰えません。しかし一方で、工業化の浸透した

Chap.1 大工の世界

仕事を覚える事。 ※当社大工親方へのインタビューを通じて「大工の世界」を公開するコラム、第1回目です。(連載にあたってのご挨拶はこちら) それでは親方、本日から始まるインタビュー、よろしくお願いします。 親方 よろしくお願いします。お客様に我々の仕事の事が少しでも身近に感じていただけるように頑張ります。 さて親方、大工の仕事に就かれたのが15 歳の時と伺いました。ずいぶん早くから修行の道に入られたのですね。 親方 はい。とにかく勉強が嫌いだったし(笑)、早く働きたか

chap.2 現場

本請と手間受けの違い 1986 年に創業したアイ. 創建。創業当時の親方・平原末蔵は30 代前半。当時を振り返りながら、大工の働き方についての話題をお送りします。 それでは親方、創業時代のお話をいよいよお聞きしたいのですが、30 代前半でアイ創建を創業されたのですね。 親方 はい。それまでは手間受け大工として、住宅会社の現場で働かせていただいていました。施主様が発注した住宅会社から大工仕事を引き受けていました。 手間受け大工を続けようとは思わなかったのですか。 親方

chap.3 渋沢教会堂

苦労した構造材の製作 丹沢の山並みを背景に上品に佇む渋沢教会。平原末蔵はこの教会の新築工事で、現場監督兼大工棟梁を務めました。教会の室内の大空間を、特殊な木構造で実現した教会建築。末蔵と建築士とがお互いの技術を持ち寄り完成にこぎつけた経緯をお聞きしました。 さて親方、本日は渋沢教会の工事についてお聞きしたいと思います。こちらの工事、親方にとっても初めてのことの連続だったとか。 親方 はいそうなんです。ご存知のとおり教会建築は室内に大空間を構成するので、そのために構造の工

chap.4 軸組と耐震

構造設計の進め方 今回は、木造住宅の軸組図を見ながら、住宅の構造(こ こでは住宅の骨格、つまり骨組みを指す)についてお 伝えします。軸組図とは、柱と梁で構成される軸組(住 宅の骨組み)を図面に表したもので、この図面を基に、 柱や梁などの構造材を揃えて現場で組み立てます。こ の組み立てる作業を上棟といいます。 それでは親方。住宅の構造が全て表現されている「軸 組図」を見ながら、この軸組図を決定するときの大 工の役割についてお聞きしたいと思います。 親方 はい。よろしくお願い

chap.5 気密と断熱

「断熱」と「材木の腐朽」は表裏一体 高気密高断熱住宅。次世代省エネ基準。ZEH住宅( ZEHネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設 備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギー を実現した上で、再生可能エネルギー等を導入することにより、年間の一 次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅。) 住宅業界各社は、気密と断熱の性能にしのぎを削っています。建材メーカーの開発競争も激しく、毎年様々な

chap.6 理想の住まいを考える

気密高断熱の賛否両論 親方、前回は木造住宅の断熱工事にあたっての通気層の重要性についてお話を伺いました。そもそも、この通気層は昔からあったのでしょうか? 親方 はい。現代のスタンダードである通気層の施工は、約30年程度の歴史しかありません。1970年頃のオイルショックをきっかけに、暖房費を節約するために断熱性能の高い住宅をつくるべきという風潮になっていきました。そして、住宅金融公庫が断熱材の使用を義務付けた頃でもあります。 断熱材そのものを入れること自体、歴史が浅いので