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戦略ポジショニング論/イノベーターのジレンマ論/ダイナミック能力論・両利き戦略論/戦略ストーリー論

①    戦略ポジショニング論において低コスト戦略と差別化戦略がトレードオフの関係にあると主張される論拠について述べてください。
 
題意について以下に述べる。
 
戦略ポジショニング(競争の基本戦略)と移動障壁①
(1)標的顧客の違いによる移動障壁
「標的顧客の幅が広い戦略と集中戦略とは相互に矛盾する関係にあり、それゆえ、両方の戦略を同時に追求するのは困難」

戦略ポジショニング(競争の基本戦略)と移動障壁②
(2)顧客価値の違いによる移動障壁「低コスト戦略(コストリーダーシップ・コスト集中)と差別化戦略(差別化・差別化集中)は相互に矛盾している(2タイプ(戦略面と組織面)の移動障壁が存在する)ため、これらの戦略を同時に追求しようとすると失敗する」

【戦略的】移動障壁
「低コスト戦略と差別化戦略とでは、その基本的な志向(戦略志向)が異なっている(戦略的移動障壁が存在する)ため、同時追求は難しい』
【組織的】移動障壁
「低コスト戦略と差別化戦略に適合的な組織がそれぞれ異なっており、それが移動障壁となる」『組織は戦略に従う』(チャンドラー命題)

【低コスト戦略】と【差別化戦略】の組織的移動障壁
戦略ポジショニング論の基本的考え方
「トレードオフの認識と選択」~限られた資源をどの戦略に配分するか~
戦略ポジショニング論に対する批判
①    低コストと差別化の同時追求は困難ではあるが、実現可能

中間のポジショニングとブルーオーシャン戦略
②    企業間のパフォーマンスの違いが戦略グループ内にもみられる

資源・能力ベースの競争戦略論の台頭につながる。

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⑤能力ベース論の批判的研究の一つであるイノベーターのジレンマ論の主張のポイントについて述べたうえで、それを評価してください。
 
イノベーターのジレンマ論の主張のポイント

1.組織能力は企業の競争優位の源泉になるが、自社を取り巻く環境が大きく変化すると、既存の組織能力では競争優位の持続が難しくなるのではないか

 
2.「顧客の声に耳を傾けること」の弊害
顧客の声に耳を傾け、彼らの要求に応えるようにイノベーションを実行し続ける既存のリーダー企業(持続的イノベーター)はそれが災いし、やがて新興の破壊的イノベーターに敗れ、その地位を失ってしまう

「イノベーターのジレンマ」エクセレントカンパニーがエクセレントであり続けることができなかった理由の一つ
 
3.イノベーターのジレンマ
「プロセスと価値基準から成る組織ルーティンが 破壊的イノベーションのための組織能力構築の妨げとなる」
 
 上記について以下に評価する。
 優良企業は新規参入企業に対応できないことは、優良企業は、組織が大きく、歴史があるため、仕事のやり方や商習慣に大きな慣性力が働いている。仄聞した卑近な例ですが、〇〇電力の方から伺ったのですが、30万円程度のエアコンを1台修理するのに、1カ月もかかるような手続きが必要であり、組織が大きいために、多くの手続きや時間がかかるようである。これらは、組織が大きいために、イノベーションの為の速度の高い事業行動が出来ない証左であるといえるのではないか。
 また組織の価値基準が明確であればあるほど、それとずれたイノベーションを起こすには、多くの調整や労力が必要であり、それらの検討をしているうちに、時流から乗り遅れるということになるだろう。ざっくばらんに言えば、時流に乗れない、もう儲けの波は過ぎているということなのだろう。
 したがって、いわゆる新興市場で成功を収めるための能力は、破壊的イノベータともいうべき新規参入企業の方がすぐれているといってよい。
 
以上
 
 
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⑥ダイナミック能力論・両利き戦略論の主張のポイントについて述べたうえで、それを評価してください。
 
【ダイナミック能力論の主張のポイント】
 
ダイナミック能力の3要素とは以下である。
感知・変容・捕捉
 
DCというコンセプトを最初に提示したのは、ティース他であるが、定義として、「急速に変化を続ける環境に対処すべく、社内外の能力を統合・調整し、組み替えていく企業能力」とされている。さらにヘルファート他は、「自社の資源ベースを意図的に創造・拡大し、資源ベースに変更を加える組織能力であり、買収やアライアンス、イノベーションを通じた新しい資源の獲得もDCに含まれる」としている。
 
ダイナミック能力(DC)
「環境変化に適応すべく、既存の組織能力(OC)とは異なる新たなOC を構築する企業としての能力」
・DCは持続的競争優位の源泉になり得る
・DCとは具体的に何か。どういう要素で構成されているのか
 
ダイナミック能力の3要素
サクセス・トラップ(成功の罠)
ひとたび成功すると、経営トップはこの成功体験を学習(ラーニング)し、「自分たちのやっていることは正しい」との確信を持ち、そこから抜け出せなくなってしまう(フォードの挫折)
求められるは過去の成功体験の棄却(アンラーニング)、それがないとセンシングは上手く行えない
 
【両利き戦略論】のポイントは以下である。
「両利き」(ambidexterity)の必要性
「隔離せずとも、持続的イノベーション(知の活用)と破壊的イノベーション(知の探索)は同時に実現可能」
「両利きであることが競争優位の持続可能性を高める」
 
両利きの経営(2021)
両利きのリーダーシップ
・明確なビジョンと戦略意図の提示(企業ドメインの重要性)
・両利き組織の設計(新規事業部門には既存事業部門とは異なる組織ルーティンを許容する)
・経営陣の関与と支援(両部門が互いに協力し合えるようにする)
 
上記について、以下に評価する。
 結局は、DC理論にエンジンとなるのは優れたリーダーであるとレオナードバートン氏は主張している。すなわち、高いレベルの学習能力を備え、苦痛も伴う方向転換にも取り組めるリーダーである。こういったリーダーの存在がダイナミック理論を実践・実現できるということである。
これらは、両利き戦略論におけるリーダーにも通じるものである。
 私自身の評価を加えるのであれば、ある複数のゴールに向かってあらゆる手段で試行回数を増やしながら、ゴールを同時に達成するような感覚がこの理論の抽象的な捉え方である。
 このような理論が生まれたのは、社会情勢がコンピューターテクノロジーにより、大きく変化し始めた1990年後半であり、例えばマイクロソフトウインドウズ95が発売されるなど、定性的な企業経営でうまく行っていた事業が、定量的に数値解析のできるPCにより複雑化してきた時代であるといえる。だからゆえに、リーダーの判断力や行動力は、コンピュータのようにならなければならないというようなことを示しているのだろう。かつて、田中角栄がコンピュータ付きブルドーザーと呼ばれていたように、そういうかつての時代とは違うコンセプトで経営がされることが求められるようになったのだろう。
 現在から、近未来の展望は、すでにAIによる解析が進み、一般人でも汎用AIが生活に組込まれていくようになって、さらにDC理論や両利きの経営は、AIがリーダーになるような時代になってしまうのだろう。最終判断は人間ではなく、AIによるなんていうことが、現実に起こり得る時代になると推測している。
以上
 
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⑦戦略ストーリー論の主張のポイントについて述べたうえで、それを評価してください。

【戦略ストーリー論】の主張のポイントについて以下に述べる。
戦略ストーリーの5Cは
実際のビジネス場面におけるストーリー
結⇒起⇒承⇒転

戦略ストーリーの評価基準
1.ストーリーの一貫性
ストーリーの強さ(robustness)
ストーリーを構成する要素間の因果関係が強いこと
例)「量産すればコストが下がる」
2.ストーリーの太さ(scope)
3.ストーリーの長さ(expandability)
ストーリーとしての競争戦略は「終わりから考える」
(1)競争優位ストーリーの「結」
利益創出の最終的論理
優れた戦略ストーリーのエンディングはハッピーエンド(競争優位)
①    コスト優位
②    「さまざまな無駄をなくしてコストを他社よりも低くすれば利益が出る」
②WTP優位「顧客がより多く支払いたくなる(Willingness To Pay)状態をつくる」
③ニッチ集中
「競争上の土俵を特定のセグメント に狭く絞り、事実上競争がないような状態をつくる」(2)コンセプト:ストーリーの「起」本質的な顧客価値の定義
「小規模事業所の購買代行と翌日配送」と「空飛ぶバス」
「本当のところ誰に何を売るのか」という問いに対する答えを突き詰めることでコンセプトは生まれる
(3)構成要素:ストーリーの「承」
競合他社との違い
SP(戦略ポジショニング)
「何をやり、何をやらないか」を決めたもの
OC(組織能力)
「資源と組織ルーティン」から成る自社の独自能力
(4)クリティカル・コアストーリーの「転」
独自性と一貫性の源泉となる中核的な構成要素
クリティカル・コアの二つの条件
1)「他のさまざまな構成要素と同時に多くのつながりを持っている」こと
2)「一見して非合理に見える」こと

例えば、スターバックスの戦略ストーリーが有名である。
 バリスタなどにブランド価値を付加し、雰囲気に付加価値を付けた内装で、家庭でも職場でもない第三の場所(日常的な避難場所)を提供するなど、顧客を虜にする戦略が織り交ぜられている。スターバックスの戦略ストーリーが持続的競争優位を持ちえた理由として、「動機の不在」と「意識的な模倣の忌避」があげられる。

戦略ストーリー論について以下に評価する。
 このストーリー論の良いところは、あらゆる商売や事業に適用しやすいということである。たとえば、ストーリーはどの経営者にも個性豊かでオリジナルなものが存在しうることがひとつである。その経営者もしくは事業そのものの成り立ちや生業には、そもそもストーリーがあり、少し客観的に事業や己を見直せば、おのずとやりたい方向ややるべきほうこうが見いだせることから、この理論はそれらの価値観を提供し実践するノウハウを示しているものである。
 あらゆる企業には儲けのからくりや企業秘密などのビジネスモデルが存在しているが、そことは対極もしくは異次元あるような「バカげたこと」「おかしなこと」「奇異な事」にフォーカスし、エッセンスやストーリーを加えて、顧客を満足させるような仕組みであると言える。
 逆に、いったんストーリーが受け入れられない場合は、ストーリーを成功するまでストーリーを組み替えるか、時代がストーリーに追いつくまで待ち続けるというようなサンクコストが生まれやすいのではないかと思慮している。


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