アメリカの教育制度について
1950年から1970年代にかけてのアメリカの教育制度の概要と展開に焦点を当てています。以下は主なポイントの要約です。
1950〜70年代の教育改革
(1)連邦政府主導による教育政策
1958年に「国家防衛教育法」が制定され、理数科教育の推進が中心となる。
スプートニクショック(1957年)により、ソ連との宇宙競争での敗北がきっかけで、政府が教育に積極的な財政支援を行う。
理数科教育への助成、特別な学級の推奨、奨学金の制度拡充などが行われ、大学進学率が急増する。
(2)公民権運動下での補償教育政策
ジョンソン大統領が「偉大な社会」を提唱し、公民権法(1964年)の成立を含む補償教育政策が重視される。
「ヘッドスタート・プログラム」(1964年)や初等中等教育法(ESEA)(1965年)が導入され、貧困地域の子どもたちへの教育支援が行われる。
(3)公民権運動下での補償教育政策の展開
1960年代から社会問題としての貧困と公民権運動が根強く残り、社会的弱者への補償教育が展開される。
補助金は対象の拡大に伴って増加し、障がいのある子どもや移住者の子ども、英語を母語としない子どもなどにも広がる。
総括
1960年代から社会的な課題に対処する一環として、連邦政府が州・学区の公教育に積極的に関与するようになった。
補償教育の目的は「不利な状況にある子どもの教育の機会の保障」であり、そのために規制が強化された。
1979年には連邦教育省が発足し、教育政策の中心的な担い手となった。
以上が、アメリカの1950年から1970年代の教育政策の概要と展開に関する要点です。
1980〜90年代の教育改革に関する要点の要約:
教育改革の本格化
1983年: "危機に立つ国家 (A Nation at Risk)" 報告書が発表。
アメリカの学力低下や社会的状況の変化を指摘し、改革に向けた勧告を示す。
10年間の学力の国際比較で低水準であり、特に貧困地域の子どもたちの基礎的な能力に不足があることが強調される。
"危機に立つ国家" の影響
報告書の影響で「学力の向上」が最優先となり、多くの改革が実施される。
レーガン政権は「小さな政府」を目指し、連邦からの援助削減や規制の緩和が進む。
各州での教育改革がトップダウンのアプローチで進展。
結果を重視する教育政策の展開
1988年: ジョージ・H・W・ブッシュ大統領による「全米教育サミット」で、2000年までの教育目標が設定される。
6項目の目標には学習準備、高校卒業率の向上、科目別の十分な知識獲得などが含まれる。
1991年: 「2000年のアメリカ:教育戦略(America 2000 : An Education Strategy)」が策定される。
Goals 2000法 (1994年)
1994年: 「アメリカ学校改善法 (Improving America's Schools Act)」が制定され、上記の6項目に2項目が追加された8項目の目標が定められる。
各州に対して学力基準の設定、テストの実施、学校改善計画の作成が求められる。
財政難にある州政府も連邦政策に従い、全国的にスタンダードに基づく改革が普及。
結果を重視する教育政策の拡大
改革は「成果」を強調し、すべての子どもが政策の対象となる。
各州がスタンダードに基づくアカウンタビリティ制度を確立し、成績向上が目標とされる。
これにより、1980〜90年代においてアメリカの教育政策は学力向上と成果主義の方向に進展しました。
3.2000年代の教育改革
8. スタンダードに基づく教育改革の展開
2000年の大統領選挙:
初めて教育政策が重要視され、ジョージ・W・ブッシュが大統領に就任。
テキサス州で成功していたスタンダードに基づくアカウンタビリティ制度をモデルに教育政策を提案。
テキサス州知事時代の政策:
「テキサス学習能力アセスメント」の導入と統一テストの実施。
学校の校長に対するアカウンタビリティの強化。
9. 「どの子も置き去りにしない法 (No Child Left Behind Act: NCLB法)」の制定 (2002年)
NCLB法の目的:
未だに多くの低所得者やマイノリティの子供たちの学力向上が不足している状況に対処。
10. NCLB法の基本理念と具体的な政策
基本理念:
結果に対するアカウンタビリティの強化
地方の権限と柔軟性の拡大
科学的に立証された教育実践の重視
親や生徒の選択権の拡大
具体的な政策:
毎年の学力テストの実施
年間の学力向上の目標設定とその達成
結果に基づく学校改善と罰則規定
読書指導の重視と補助金の柔軟な使用
保護者への十分な情報提供
教員の質の向上
安全な学校づくり
11. NCLB法のポイント
NCLB法の特徴:
教育成果に対する強いアカウンタビリティ
保護者・児童生徒への学校選択権の拡大
人種・所得に基づく学力格差の是正を目指す。
論争と問題点:
NCLB法の手法と改革の結果に関する様々な論争と問題点が浮上。
以上が、2000年代の教育改革における主なポイントです。
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