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月収51,500円生活 [脳みその中10秒間]

今日は早起きしたいと思い、深夜1時半に眠ったら、3時間後の午前4時半に目を覚ます。
ここまで早く起きるつもりはなかった。二度寝しようにもなかなか寝付けず、頼まれていたテキストを少し書いたりして過ごす。それでもまだ寝れない。

午前7時半、近所の上間天ぷらで100円そばとマメ天ぷらを買って食べる。ついでにコンビニへ行ってお金を下ろしてくる。立て続けに3人のおじさんが道で寝ていた。

10時頃になるとヒカリちゃんが起きてくるも。ちょうどそのタイミングで眠くなり、12時に起こしてくれと頼む。

気球に乗って宇宙と地球の隙間に行く夢を見た。絶景だと思って浮かれているとヒカリちゃんに起こされた。まだ夢の続きが見たかったが仕方ない。今日はヒカリちゃんの部屋を片付ける日なのだ。

ヒカリちゃんの今の部屋にはこれまでの住人たちが置いていった大量の置き土産で溢れている。こんな物置小屋の状態で女の子を住ますのは心苦しい。

そんなわけで、前の住人たちの荷物を片付けながら、明らかに要らないであろうモノを選別して捨てていった。

その中から、弟の元カノの学生時代のプリクラ帳が出てくる。

弟が写ってるものではないし、この子の残り香は弟にとってあまり良い影響は与えないかもしれないと、そのまま捨てようかとゴミ箱に歩みを進める。
しかし、プリクラが貼られているのは6ページ程度。
プリクラのページだけを破いてただのメモ帳にするべきか。
歩みを止める。
ページの束を手に取り引きちぎろうと力を込める。
その瞬間、僕の"脳内Yahoo!知恵袋"のスレッドが立ち上がった。

脳内Yahoo!知恵袋

弟の部屋に元カノの学生時代のプリクラ帳がありました。
もう、弟は新しく好きな人が出来ている中で、不要なモノだと思っています。
ただ、メモ帳自体には罪は無いので、僕はプリクラのページだけをちぎってただのメモ帳として使えるようにしようと思ったのですが、僕って良いお兄さんだと思いませんか?

するとこのスレッドは多くのコメントで荒れることになる。

「家族とはいえ、やって良いことと、やっていけないことの区別もつかないのですか?弟にとってその元カノがどういう存在かも分からないのにあなたの感情だけで捨てるなんて横暴です。」

「今、好きな人がいたとしても大事な思い出の品かもしれないのに本人に確認もとらないで勝手に捨てるなんて最低!考えられません」

「あなたは自分だけの基準で、他者にとっての必要、不必要を見極める鑑識眼を持っていると自惚れていませんか?もし、同じような事をされてあなたは許せるのですか?」

「たとえ不要なものだとしても、なんの確認もなく捨てられたとしたら、たとえ家族だとしても私なら縁を切ります」

などの批判コメントがたくさん寄せられた。
あくまで脳内での出来事ではあるが、勝手に他者に戒められたような気持ちになった僕は、とても軽率な事をするところだったと勝手に反省し、机の空いてる引き出しの中に収めることにした。


なぜ捨てようとしたのか

僕はつい反射的にそれを捨てようとする動作に入ったことには一応の理由がある。

かれこれ2〜3年ほど前のことで、今は弟本人も含めて、みんな笑い話にしているので、隠すような事でもないだろうし、そろそろ文字に起こしても良い頃合いだろう。

ある日のこと、久米島に住む母親から「シン(弟)がナイフで刺されて今病院の集中治療室にいるらしい」との電話があった。

急いで病院へ向かうと、そこの病院で働く母親の友人がいた。
その人は見覚えのある名前を目にし、急いで母親へ連絡したようだった。

その人から、医師と刑事を交互に紹介され、弟の容体や状況が説明される。
元々は、弟が恋人へ別れ話を切り出したのがきっかけだったと言う。
弟は酒を呑んでいなかったが、恋人は酒によってかなり酔っ払った状態だったようで、逆上したままキッチンにあった果物ナイフで弟を刺したとのことだった。
ナイフは鎖骨部分へ振り下ろされ、骨の隙間を縫うように肺の近くまで届いた。
弟は恋人をなだめたあとに、「呼吸ができないから、救急車を呼んで欲しい」と息も絶え絶えの状態で伝え、病院へ運ばれ、ICUでの治療が行われた。
そして、今は無事に処置が済んで命に別状はないと伝えられた。
ただし、あと1ミリから2ミリほど深く刺さっていたら命を落としていただろうという言葉も添えられて。

面会に向かおうとすると、刑事からは「弟さんから事件の概要を少しでも聞けたら聞いてみてほしい」と言われた。

体に繋がれたパイプで呼吸を補っている弟に声をかける。
肺に穴が空いているため、痛みで喋ることが苦しそうであったが、弟は開口一番「"被害届出さないからとりあえず俺のところに来い。"って彼女に伝えて欲しい。」と言っていた。
僕はそれに対して「今、彼女は留置所にいるから会いに来れないはずだ」と伝えた。

一旦、弟の無事を確認した僕は、すぐさま母親に電話をした。
母親は冷静を装いながらも、弟を刺した恋人には、自分の行いの重要さを知ってもらうためにも罪を償って欲しいと言っていた。

弟に会うまでは僕も同じように思っていた。
犯人を絶対に許さないという、怒りなのか悲しみなのか行き場のない感情に支配されていたが、当の弟自身は殺されかけておきながらもそんなことは一切望んでいなとわかった。

だから、僕は弟のその気持ちを汲もうと思い、母親へ「彼女が逮捕された場合、最も苦しむのはシンかもしれない。俺は自分の感情よりもシンの気持ちを優先する。ごめん。」と伝え電話を切った。

ユウ「シン、喋るのきついかもしれないけど、ひとつだけ聞きたい。刑事がロビーの方で話を聞きたがっている。彼女を逮捕させたくないのなら、刺された別の理由が必要だ。俺はなんて伝えたら良い?」

シン「ナイフで…遊んでただけ…って伝えて…。」

ユウ「え?!いや、無理があるだろ!!!」

シン「そういう…プレイ…」

ユウ「え?!?!」

シン「いつも…それ使って楽しんでたって…ことにして」

ここで、さすがに僕も、シド&ナンシーじゃないんだからと笑ってしまう。
なんだか妙に肩の力が抜けてしまい、相変わらずだと思って病室を後にした。
その後、僕は刑事へ対し真剣な面持ちで語るほかなかった。

ユウ「弟にはSMなどの性癖があって、いつもナイフを使った行為なんかも行ってるみたいで、今回はちょっと刺しどころが悪かったみたいです。」

刑事「え?え??いや、でも彼女さんの証言では"痴話喧嘩のもつれ"だと聞いてますが?」

ユウ「いや、彼女酔っ払ってたんですよね?うちの弟は一滴も酒を呑んでないじゃないですか。弟の証言の方が正しいと思います。彼女もきっと罪悪感からパニックになってるだけだと思うので、弟がちゃんと話せるようになったら本人から聞いてください。今回のは事件ではなく事故のようです。」

刑事「???????????」

そんなこんなで、その恋人は本当に不起訴になった。
ただ、僕はあくまで弟の意思を尊重しただけであって、その子に対する不信感を拭うことができるかというとそれは別問題になってくる。
できるなら、もう二人の人生が混じり合わない事を願ってしまっていたこともあって、そんな個人的感情の末にプリクラ帳を捨てようとしてしまったのだ。
どんな過去があれ、それを清算するのは本人次第である。
プリクラ帳を捨てようかと迷う10秒程度の間にいろんな感情が渦巻いた。

と、話が長くなったので、今日の日記はこんなところにする。
ちなみに、今日は梅シロップ作ったり近所に軽く呑みにいったりした日だった。

余談

弟が刺されて約半年後、弟が逮捕されたと電話がかかってきた。
「おいおいおい!今度は加害者側かよ!どんな事件を起こしたんだよ」と不安の中、警察署へ行った。
酒を呑んだ直後に仕事が入ってしまい、急いで仕事に向かおうとしたところ飲酒運転で捕まったとのことだった。
弟が面会室の向こう側から「よっ!」と声をかけてきた。
肩の力が抜けた。

その警察署からの帰りに作った曲がアルカシルカのロボトミーワルツである。


そういえば、この日記を書きはじめてから一回もバンドの宣伝をしたことない気がする。
僕がやっているバンドはアルカシルカと言います。
BandCampで音源を全曲無料ダウンロードができるし、Apple MusicSpotifyなど各種配信サイトでも聴けるので、もしよければぜひ。


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