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2019年 好きだった国産HIP HOP 15曲

毎年言っている気もするが、今年の日本語ラップは豊作だったと思う。
かつてのヒーロー達の再興と、大好きな中堅のリリース、そしてイカした若手の台頭、その全てが集約された年で追いかけていて本当に楽しかった。
色々と聴いた中で個人的に特に好きだったものを15曲選んだので以下に紹介していこうと思う。
自信を持ってお勧めできる曲達なので、是非購入なりサブスクなりで聴いてみて欲しい。
そして俺の好きなラッパー達の懐を潤して貰えれば幸いだ。

・BIRDCAGE WAR/茂千代
・街の呼吸 feat.切刃/DJ KENTA
・World Is Mine/K.K FLOW × M.O.J.I.
・波の歌/OMSB
・LOSER AND STILL CHAMPION/
 THA BLUE HERB
・No Freedom No Reason/ELIAS
・ロール・プレイン/
 Jambo Lacquer × DUSTY HUSKY
・CREDIT feat.ZEUS/DJ TATSUKI
・飛好奇/umenonaka
・Miles High feat.GEBO,NAGAN SERVER/
 DUFF
・Douglas fir/Campanella
・Do Not Look Back feat.
 PRIDE MONSTER FAMILIA/LAF
・over/BUPPON
・独白/DUSTY-I
・大峠 feat.CQ,D.L,GOCCI a.k.a.大峠影狼,
KASHI DA HANDSOME/GO a.k.a.男澤魔術
※ランキングではないので順不同

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「BIRDCAGE WAR/茂千代」

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7inchシングル、WATARIDORIに収録。
DJ KENSAWと制作していた未発表アルバムの楽曲であり、大阪が誇るリリシスト茂千代が綴る、遥か未来の荒廃した世界を描いたSF的ストーリーテリング。

「空は昔青かった 森って言葉を知ってるか?」
野営地でジョイントを回しながら
隊長の話を聞くのが楽しかった
"BLUES"と呼ばれた枯れたさえずり
もっと聴きたくてうった相槌
悪魔払う極上の子守唄 
終わらすことが出来そうな気がした

1verse頭のこのラインを聴いただけでディストピア映画のようなワンシーンが脳裏に浮かぶ素晴らしい語り口。あくまで空想世界の歌ではあるが、閉鎖的な現代社会を暗喩しているようなワードの数々は真に迫るものがある。
叙情的なリリック、哀愁漂う声、類稀なスキル、その全てがこの曲を傑作たらしめている。
未来世紀日本や禁断の惑星に勝るとも劣らない、SFヒップホップソングの金字塔になるであろう名曲だ。

「街の呼吸 feat.切刃/DJ KENTA」

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沖縄で活動するラッパーをフューチャーしたDJ KENTAのEP「B-LUNCH RECIPE EP vol.2」収録。
MVにもなったこの曲、客演は切刃。このラッパーの愚直なまでの物言いは時に鋭過ぎるけど、それは音楽に対する向き合い方が本当に真摯だからだと曲を聴いていれば分かる。
直向きな音楽愛を感じさせる姿勢、そこにある圧倒的な説得力。
ラッパーの武器は言葉だと改めて思う。

「World Is Mine/K.K FLOW × M.O.J.I.」

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静岡のMC、K.K FLOWとM.O.J.I.によるコラボEP「THE BOOTLEG TAPE」収録。
ロートーンのK.K FLOWとハイトーンのM.O.J.I.の相性が兎に角素晴らしい。
確かなスキルを持つ2MCによる超絶コンビネーションが90'sトラックの上で跳ねる、それは流行風潮に左右されない格好良さ。イナタいHIP HOPの最高峰だと思う。
問答無用に首を振らせるキラーチューン、聴きたかったのはコレだよコレ。

「波の歌/OMSB」

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みんな大好きOMSB、四年ぶりのソロ新曲。
完璧すぎて文句の付けようが無い。ビートもラップもリリックも。
ワードセンスに更に磨きが掛かっている上に、その言葉一つ一つを聴かせる能力が圧巻だ。
これ程含蓄のあるサマーチューンは史上初じゃないか。
前作からインターバルがある故に高くなったハードルを軽く超えていく圧倒的クオリティ、本当に凄い。

「LOSER AND STILL CHAMPION/THA BLUE HERB」

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今年、一番聴いた曲はこれだった。
THA BLUE HERB、7年ぶりのセルフタイトルアルバム「THA BLUE HERB」収録。
今が負け犬でも、道の途中で立ち竦んでいても、自分しかいないステージで戦い続けろという強いメッセージ。
今までを振り返ってもここまで心を揺さぶられた音楽は殆ど思いつかない。それ程までに凄い音と言葉だった。
HookでサンプリングされたBachoの「NENASHIGUSA」の引用がまた泣かせる。

夢の中じゃなくて遠い理想じゃなくて
なりたいようになりたいなら
這ってでもいいからにじり寄って行くような
今日を 明日を、あさってを、

もがき続けろ、そう伝える言葉に背中を押されない人はいないだろう。
最後のverse、BOSSが自らの歩みを歌う箇所がある。単純なセルフボーストじゃない、重い歴史が込められた一節。
聴いていてこんなに胸が熱くなるなんて。ファン冥利に尽きる。

1枚目のアルバムが27歳
未来世紀日本が29歳
2枚目のアルバムが31歳
未来は俺等の手の中が32歳
3枚目が36歳 4枚目が40歳
俺のソロアルバムが44歳
あの野音のライブが46歳
そしてこのアルバムが47歳
解るかい?誰がBOSSだったのか?
長い話なのさ

彼等の持つ説得力には理由がある。それは続けてきた者だけが持ちうるものだ。
歩みを止めないTHA BLUE HERBはまだ進化する。ハイライトはこれからだ。そう思わせてくれた楽曲だった。

「No Freedom No Reason/ELIAS」

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DJ SEIJIのアルバム「Spit Pack Committee」収録。ELIAS、DJ SEIJIという北の名匠2人によるこの楽曲。
ELIASの流れるようなフローは格好良いの一言。この人のラップには何というか、色気があるのだ。聴いていて惚れ惚れするような。
北海道を感じさせる荘厳なトラックと相まって、トラックとラップ、お互いの魅力を最大限に引き出している。

「ロール・プレイン/Jambo Lacquer × DUSTY HUSKY」

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鉄板コンビによるコラボシングル。
聴いていて本当に気持ち良い。今年指折りのchill songだ。
この二人の何が良いってまず声が圧倒的に良い。優しく包み込むような温かみがある上、ラッパー然としてしっかり格好良いという無双っぷり。
それを引き立てるのはBomJa Break(Jambo Lacquer)の最高に心地が良いビート。
つい一緒に口ずさんでしまうキャッチーなHookも素晴らしい。
歌モノだけど安っぽくないHook。それが凄い。
センスの良さ、それに限る。

「CREDIT feat.ZEUS/DJ TATSUKI」

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DJ TATSUKIによるEP「CREDIT」に収録。
Yoと言うだけで格好良いラッパーZEUS。
ズッシリと響く低音ボイスで放たれる最高に格好良い言葉たち。この人は卓越したリリシストにも関わらず、正当な評価を受けていないとずっと思っている。
低音のラップはワードに重みが増す一方抑揚の少ないフローになりがちだが、この曲を聴けばZEUSのラップ巧者っぷりも堪能できる。
単純に物凄く上手い。色んな聴かせ方を知っていて、隙が全く無い。今一番アルバムを心待ちにしているラッパーだ。

「飛好奇/umenonaka」

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96'sで構成されたクリエイター集団RepYourSelfのMC、umenonakaのEP「寿限夢」収録。
ここで挙げている楽曲は殆どが一聴した瞬間から良さを実感したが、これに関しては何度も聴くうちにジワジワとハマった楽曲だった。
緩さのあるフローと特有のワードチョイスの食い合わせが面白い。若干ザラつきを感じさせる音も雰囲気があって良い。特に癖になるのがHook、これはLiveで聴きたいと思わせる。
浮遊感があって広がりのあるトラックに飛好奇というタイトル、期待感を持たせる長めのイントロ、そのスケールと相反する内省的な内容、その全てからセンスの良さが溢れ出している。
今年知ったラッパーだったがすっかりファンになってしまった。

「Miles High feat.GEBO,NAGAN SERVER/DUFF」

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ベンタブラックの如くドス黒いビート。
Nimrod Beatsのビートが兎に角ヤバすぎて笑ってしまった。黒すぎる、最高だ。
個性豊かな3MCによる三者三様のラップも全く被る事なく魅力を発揮している。全く想像していなかった組み合わせだが、こんなにしっくり来るものなのかと驚いた。恐らくライブで聴いたら更に化ける曲だろう。
Hookに弱さは感じるがそれ以上にこのビートと3MCのラップは聴く価値がある。何故ここまでイカした曲がスルーされているんだ。おかしい。是非一度聴いてみて欲しい。

「Douglas fir/Campanella 」

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"ラップが上手い"は正義だと体現したこの曲。
坂本龍一をサンプリングしたRamzaのド変態トラックにCampanellaのド変態フローが乗っかって完成した最強のド変態DOPE SHIT。
Campanellaの職人っぷりは最早言わずもがなだが、この曲ではRamzaのビートメーカーとしての凄さを改めて実感した。サンプリングソースの坂本龍一「ZURE」と聴き比べてほしい。

(何故この曲をサンプリングしたのか)(こんな使い方をするのか)(この曲からあんなビートが出来上がるのか)などと思う事は色々あるが、言い表すならただ一言「半端ねえな!」だ。

「Do Not Look Back feat. PRIDE MONSTER FAMILIA/LAF」

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OILWORKSからリリースされたLAFのアルバム「Spirit in the Darkness」収録。
PRIDE MONSTER FAMILIAとしてのこの楽曲、年の瀬に来て真打ち登場と言わんばかりの格好良さ。 否応無しに首を振らせるLAFのサンプリングビートにPRIDE MONSTER FAMILIAによる貫禄のマイクリレー。
胸が熱くなるエモーショナルなHookも完璧。
聴く人を選ばず、誰もが格好良いと思う曲じゃないだろうか。

「over/BUPPON」

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kojoeプロデュースのEP、「i'll」収録。
このEPに関しては以前のポストで触れているので詳しくは下記リンクから。

i'll/BUPPONについて

Hookの無い16小節×2の短い曲だが、その中にこれだけ色々な感情を込められるのは只々凄い。
特に2verse目、言葉一つ一つに物語を感じる。この人は詩人として希有な才能を持っていると本当に思う。心の深くまで染み渡る、素晴らしい曲だ。

「独白/DUSTY-I」

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愛知県豊川市のラッパーDUSTY-Iのシングル。
局所的ではあったが日本語ラップシーンで久々にRemixムーブメントを巻き起こしたこの一曲。
最終的に94名ものラッパーがこの曲をRemixした訳だが、ここまでムーブメントが大きくなった理由はコンテスト形式を取った事に加え、この曲にそれだけの魅力があったからに他ならない。
燻し銀という形容がピッタリなタイトなライミング、リリックの中身、そしてそのスキル。
何もかもが高水準で聴きながらつい頷いてしまう。本当に良いラッパーだ。

「大峠 feat.CQ ,D.L, GOCCI a.k.a.大峠影狼,KASHI DA HANDSOME/GO a.k.a.男澤魔術」

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今年突如発表された、El Doradoの面子が集まって歌うDEV LARGEへの手向歌。
GO、CQ、GOCCI、KASHI DA HANDSOMEの新録verseにD.Lの未発表verseが加えられた最強のご褒美マイクリレー。
聴くまではこのメンツで良くなかったらどうしよう、なんて事を考えていたが杞憂だった。
各々のラップもトラックも、文句無しで格好良い。誰しもの胸をアツくするキラーチューンだ。
かつてのヒーロー達は未だ健在だった。それが何より嬉しい。

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以上。長いわ!アルバムはまた後日。

最後まで読んで頂きありがとうございます。