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磯森照美のエッセイ集

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#言葉

エッセイ | ねぇ 、 じょし きいている?

天然な人は「天然だね」と言われると否定する。逆に、天然キャラの人は「天然だね」と言われるとうれしそうにする。 こういった認識のせいで私は確固たる天然として生きてきた。 「天然だね」と笑いながら言う人を前にすると、「魔女狩りと一緒だな」と思いながらも天然キャラにはなりたくないため、やんわりと否定する。 そうすると相手はうれしそうに「天然な人は否定するんだよ」と言う。 「天然な人」に明確な根拠がないために、今日もどこかで魔女狩りが行われている。 goo辞書で「天然」につ

エッセイ | そんな日

私が注文したメニューと同じものが、私より後から来た人に提供されている。私はまだ待っているのに。 スタッフが間違えたまま提供しているのではなかろうかと思うが、その後すぐ私にも提供されたため、タイミングの問題だったのだと思った。 斜め前方に座っている人も私と同じメニューを注文していたようだ。そうなると、私たちにはもう1皿料理が届くことになる。きっと同じタイミングで出てくるのだろうなと思いながら、届いた料理を口に運ぶ。 届いた料理を半分ほど食べた頃に次の料理が届く。先に提供さ

エッセイ | 好かれづらく嫌われにくい私は、熱しやすく冷めやすい

「なんで付き合えないんだろうね」食事に行くたびに友人はこう言ってくる。 一足先をいく友人は地に足をつけた生活を送っているため、浮いた話を提供してほしいのだろう。しかし、私に浮いた話などないため友人の発言は迷宮入りしてしまう。 そもそも交際できない理由がわかっているのであれば、どうにかして対応している。 「こっちはずっと考えているんだよ。既婚者の視点で俯瞰して見たときの意見をちょうだいよ」私は少しだけ友人にあたる。 「人に無関心なところがダメなんじゃない? もっと能動的

エッセイ | 大丈夫? ってきかないで

「『大丈夫?』って聞くとみんな『大丈夫です』って答えるから、こう聞くのはダメだな」そう言った人は、それ以降「大丈夫?」と聞いてくることはなかった。そう尋ねられると「大丈夫です」と答えていた私にとっては非常に助かった。 世間には自分が陥っている状況を隠してしまう人が少なからずいる。本人たちからすれば伝えられないだけで、隠しているつもりなどないのだが。 ただ、「大丈夫?」という聞き方は非常に危険だ。「大丈夫です」と答えるか、「大丈夫じゃないです」と答えるかのどちらかしかない。

エッセイ | 私にとっての『書く』と言うこと

書き出しはこうだ。 「改まったタイトルにしてしまったが、難しい話でも暗い話でもない。本記事で50回目の投稿となるため、私にとって『書く』ということの位置付けをしておきたい」磯森照美はキーボードをたたく。以前から始めていたnoteに投稿する記事を書いているようだ。 磯森はnoteを知ってから始めのうちは人の書いた記事を読む専門だった。それは彼が人の話を聞くのが好きであったからだ。彼自身から話をすることもあるが、彼の周囲には話好きが多いため聞き役に回ることが多くなっている。知ら