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磯森照美のエッセイ集

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投稿したエッセイをまとめています。
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#自分

エッセイ | 祝うの不得手

友人とLINEでメッセージのやり取りをしていた時に「今日誕生日なんだ」とメッセージが届いた。大学時代からの付き合いであるが、友人の誕生日をこの時初めて知った。 2月や3月、8月や9月のように、長期休暇中に誕生日がある人はお祝いをする機会がないために知らないこともあるのだが、その友人は長期休暇に当たらない月の生まれだった。 「初めて知った! おめでとう!」とメッセージを送ると、喜んでいるスタンプが返ってきた。 メッセージのやり取りがひと段落ついた時に、「これでいいのだろう

エッセイ | 流れを渡れる人

「社交的な性格のため誰とでも仲良くなれます」 人生の中で自己紹介を聞く場面は多い。その中でもこういった内容を言う人がいる。 この言葉を言える人は性別に関係なく目立つ顔立ちをしているし、爽やかだ。主人公みたいな人であって、引き立て役には回らない。 誰にでも分け隔てなく話しかけ、笑顔も絶やさない。他人から嫌われるなんてことはないのだろうなと思ってしまうが、きっとそうでもないだろう。 大学を卒業すれば、こういったことを言う人にも出会うことはなくなるだろうと思うとなんだか安心

エッセイ | 近くて遠い

身近な存在になっているものほど、その存在に気付けないことがよくある。その逆で、身近にあるがために、自分が意識しすぎているものもある。 私だとコンビニエンスストアがその代表的存在にあたる。 私は以前からコンビニエンスストアを使用してきた。外出時に飲み物を購入したり、昼食を買ったり。夜遅くに家へ帰っている時は夜食を買っていた。 新商品が出れば気になり、用もないのに店内へ入っていくこともあった。私の生活はコンビニエンスストアを中心に動いていると言っても過言ではなかった。 ど

エッセイ | 行きたいくない

私は「行きたくないけれど行きたい」ということがよくある。「行きたいけれど行きたくない」とは少しだけ違う。最近もこの衝動に悩まされたのだ。 コロナの影響で2020年頃からライブはどんどん減っていったが、最近はその時期を取り戻すような勢いでライブが開催されている。うれしい限りだ。 私はあまりライブに行かないのだが、行きたくないわけではないのだ。行ける日程に好きなアーティストのライブが開催されないだけなのだ。 ライブが開催される会場と日時、そして私の都合といった全条件が合致し

エッセイ | 私よ、ゲームに遊ばれるな

私はゲームが好きなのだけれど、あまりゲームをやらない。好きな作品の新作が出れば買うし、クリアもするだろう。けれど、そのゲームをとことんやり込むことはまれである。 休日になれば時間もあるためたくさんゲームを遊べる。ただ、気乗りしなければ絶対にやらない。それが好きなシリーズもののゲームであってもだ。 私はいくつかゲーム機を持っている。PlayStation5、Nintendo Switchや、Meta Quest2。それらをテレビの隣やソファの近くにセットしており、コントロー

エッセイ | 大丈夫? ってきかないで

「『大丈夫?』って聞くとみんな『大丈夫です』って答えるから、こう聞くのはダメだな」そう言った人は、それ以降「大丈夫?」と聞いてくることはなかった。そう尋ねられると「大丈夫です」と答えていた私にとっては非常に助かった。 世間には自分が陥っている状況を隠してしまう人が少なからずいる。本人たちからすれば伝えられないだけで、隠しているつもりなどないのだが。 ただ、「大丈夫?」という聞き方は非常に危険だ。「大丈夫です」と答えるか、「大丈夫じゃないです」と答えるかのどちらかしかない。

エッセイ | 口角を上げて

「なんで笑ってるの? いいことでもあった?」友達が笑いながら聞いてくる。私としては笑っているつもりはなかったので否定すると、他の友達からも「笑ってたよ」と言われて困ってしまった。 大学生の頃は講義と講義の間が空くと、学食やフリースペースで時間をつぶすことがよくあった。やることがないと1コマ分の時間をつぶすのは暇だった。だからか、みんな話題の提供を他の人から求めたがり、少しでも気になったら口に出していた。 最近はマスクをしないで外出することも増え、他人の表情がよくわかるよう

エッセイ | 今までと今とこれから

日本の片田舎に生まれて30年がたとうとしている。車がなければ生活できない地域のため、高校を卒業したら大学に入学式する間に大急ぎで免許を取得するのが通過儀礼のようになっており、自動車教習所は同窓会会場のような雰囲気になる。ちらほら高校生以外の人も居るのだが、どこか居ずらそうな様子のため、見ている私の方も申し訳なく感じてしまう。 大学進学を機に上京したのだが、夏の暑さに1年目はついていけなかった思い出がある。ただ、冬の暖かさにも驚かされた。地元とは違い、比較的暖かい上に、電車や