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踊り場だけどダンスはNG 『ISO通信』第75号

手元に本がなかったので、久しぶりに書店に入りました。Amazonで本を探すときと違い、いろいろなジャンルの本が目に入ってきます。
そして購入したのが『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(ブレイディみかこ著)でした。
2019年6月に刊行された本ですが、すでに文庫化されています。ご存じの方も多いと思いますが、著者は福岡県出身の女性でアイルランド人の男性と結婚し、英国で暮らしています。本のタイトルにある「ぼく」が著者の息子さんのことだと分かると「イエローでホワイトだと、ちょっとブルーになることもあるのだろうな」と想像することができます。そして「人種差別や多様性などについて書いてある本なのだろう」と思い、分かったようなつもりになって、買って読むまでの気持ちになりませんでした。しかし友人の勧めもあって読んでみると、新鮮でとても面白い本でした。
本の一文を引用させてもらうと「多様性は、うんざりするほど大変だし、めんどくさいけど、無知を減らすからいいことなんだと母ちゃんは思う」とあります。ダイバーシティー、移民、格差社会などの問題について詳しい人なら「やっぱり想像できそうな内容なので、一冊まるごと読むのは時間に余裕のあるときにしよう」と考えるかもしれませんが、そんな風に思った人にこそ、是非、読んで欲しい本です。

本を読みながら、半年ほど前のオンラインセミナーでの議論を思い出しました。セミナーのテーマは『労働力人口の減少』で移民の受け入れが解決策の一つとして提示されていました。セミナー後半のフリートークの様子を会話形式で記載してみます。

Aさん「日本社会はまだ、移民を受け入れられるほど寛容ではないので、私は反対です」
Bさん「私は移民の受け入れに賛成です。人手不足の問題を解決するには、外国人と共生できる社会を作っていくことも重要だと思います」
Aさん「近所に外国人がたくさん住んでいる団地がありますが、うるさいんですよ。住民の20%くらいが外国人で、休日になると団地の外からも仲間が集まってくる。昼間っから階段の踊り場で飲んだり、歌ったりしている。常識がないんですよ」
Bさん「近所迷惑にならない範囲でやってもらうように頼むしかないと思うのですよね。頼むという言葉で弱いなら、教育する でもいいかもしれません。日本社会のルールやマナーを覚えてもらうように、日本人も努力すべきじゃないですか」
Aさん「教育して効果のある連中ならいいですが、簡単じゃないんです。他の皆さんにも聞きたいのですが、自分の家のとなりに、家賃が安くて外国人もOKの公営団地が建ちそうになったらどうします?歓迎したい人は手を挙げてください」
オンラインセミナーの画面には20人以上の人が映っていましたが、挙手したのはBさんともう一人だけでした。
Aさん「外国人と共生できる社会をつくることは大切だと思います。でも、いざ自分の家の隣に来るとなったら、心の準備が出来ていない人が多いと思います」
時間が限られているため司会者が場を収めて次の話題に移りましたが、気持ちの中にモヤモヤが残りました。

前述の本を読んでこの件を思い出し、そして義父のことも思い出しました。義父は自治会長を務めていて「外国の人にも盆踊りに参加してもらいたいし、向こうの国の踊りを披露してもらう時間もつくりたい」と言っていました。コロナ禍で地域のお祭りは見送りが続いていますが、次のお祭りのときに外国の人がいたら、話しかけてみたいと思います。

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