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仕事帰りに散髪してはいけないのですか? 『ISO通信』第71号(2022.5.29)

「仕事が終わって帰宅する途中に散髪をしてはいけません」
もちろん、こんな規則のある会社はないでしょう。しかし私はかつて、上司から以下のように言われたことがあります。
新入社員か2年目の頃だったと思うので、今から30年ほど前のことです。
ある日私は、帰宅の途中で散髪しました。翌日会社に行くと上司の上司である部長から「昨日、床屋にいったの?」と聞かれました。
「はい」
「あなたは、ずいぶんと暇なんだね」
「えっ?」
「昨日、あなたは残業をしたわけじゃない。友達と飲みに行ったわけでもない。どうしても見たいテレビ番組があって、急いで家に帰ったわけでもない。平日の夜に散髪できるくらい暇なんだな。もっと仕事を与えても大丈夫そうだ」
“そういうことか、これからは平日に散髪するのはやめよう”と心に決めました。当時私が所属していたグループは、それほど忙しくなかったのですが、隣のグループにいる人は全員が遅い時間まで残業していました。部長から見ると、とても忙しいグループと比較的余裕のあるグループの労働時間をバランスさせたかったのだと思います。

働き方改革が進み「帰宅の途中で散髪しない」マイルールも不要になりましたが、世の中には「自分の仕事が終わっていても、周囲の人が残業していると帰れない」といった暗黙のルールが残っている会社もあります。また、最近の転職相談で「サービス残業が多く、上司は長時間の残業をする部下を評価するタイプの人なので、それも転職したくなった理由の一つです」と聞きました。その人に「早く帰れるようになったら、何がしたいですか?」と質問すると「プログラミングの勉強をしたいです」と答えてくれました。

社会人になってからの学習意欲に関して、日本は他の国と比較してかなり低い状態のようです。パーソル総合研究所の「APAC就業実態・成長意識調査(2019年)」ではアジア・太平洋エリアの14の国や地域を対象として様々な調査をしています。その中に、勤務先以外での学習や自己啓発活動についての質問項目があり、「読書」「セミナーへの参加」「資格取得のための勉強」「大学・大学院・専門学校」「eラーニング」のすべての項目で、日本人の参加率や取り組み率が最低でした。(サイトのリンクを張れず申し訳ありませんが、ほとんどの項目がダントツのビリで、軽いショックを受けました。)

終身雇用が大前提の時代なら、社会人になっても勉強を続ける人が少数派になることは仕方がないと感じます。しかし終身雇用を守ると公言する企業は減り、社員は「成長の機会を得るため」や「ブラックな職場を去るため」などの理由で転職することが当たり前になってきました。職場を去ったけど採用してくれる会社がないようでは困るので、社会人にも学び直しや追加のスキル習得が必要な時代であることを意識しておきましょう。

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