ダイバーシティはコストですか、投資ですか?『ISO通信』第82号
「ダイバーシティとかエクイティ&インクルージョンとか言うけど、結局、日本人はインクルージョンしてもらえないと思うよ。英語が流ちょうなら別だけど」
「いや、これからはAI翻訳でかなりいけるんじゃない」
飲み会の席で、そんな会話がありました。
ダイバーシティはダイバーシティ&インクルージョンに進化し、さらにはダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンに深化しています。
ダイバーシティは多様性を受け入れること
ダイバーシティ&インクルージョンは、多様性を受け入れ仲間として認めること
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンは、仲間として認めた人に公平な機会を用意すること
私はそんな風に理解しています。
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)におけるエクイティ(公平性)を説明するときの例として、ハサミの話を読んだことがあります。
10人の人がいて右利きが9人、左利きが1人という状況のとき、右利き用のハサミを10個用意したのでは公平とは言えません。左利き用のハサミも用意している組織はDE&Iを理解していることになります。
さて、世界各国から10人の人が集まっていて、英語ができる人が9人、できない人が1人という状況のとき、DE&Iを理解している組織は英語のできない人のためにどのような対応ができるでしょうか。
通訳をつけることは解決策の一つですが、それを「公平」と思う人もいれば「優遇」と感じる人もいるでしょう。
飲み会の席で「結局、日本人はインクルージョンしてもらえないと思うよ」と言った友人は、通訳なしで会話ができないと仲間として認めてもらえないと主張しました。そして「AI翻訳でかなりいけるんじゃない」と言った友人は「スマホに向かって話かけるとイヤホンから聞こえるのは母国語というシステムがあれば、英語ができなくても大丈夫」と続けました。
「すると全員がそのシステムを使う必要があるよね。会議の時間はやってくれるかもしれないけど、ちょっとした雑談やパーティーの席では使わないよ」
飲み会の再現はこの辺にしておきますが、さらに進んだ翻訳システムが普及するのは意外と近い将来かもしれません。
DE&Iを推進するためには、たくさんの準備をしておく必要があります。
・左利き用のハサミを用意する。
・工場の女性用のトイレを増やす。
・車いすで移動しやすいオフィス環境を整備する。
・いろいろな宗教に配慮した食事を準備する。
他にもいろいろあると思いますが、多様な人たちに公平な機会を用意することは、コストの増加につながりそうです。しかし「それはコストではなく人への投資」と考えることができた組織に優秀な人があつまり、大きな利益につながる時代になるのでしょう。
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