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効率至上主義になっていませんか? 『ISO通信』第70号(2022.4.24)

「やらない!磯君に頼まれたことは一切、やならい!」
今から25年くらい前のことですが、先輩の女性社員(Aさん)にピシャリと言われたことがあります。
当時私が在籍していた会社には総合職と一般職の採用区分がありました。総合職の社員は基幹的な業務を行い、一般職の社員は補助的な職務を遂行する役割でした。(現在は総合職、一般職の区分は廃止されています。)
Aさんは私よりも15歳くらい年上で、社内のいろいろなことを知っている先輩です。「磯君に頼まれたことは一切やらない」と言われる前に、私が発した言葉の詳細は忘れてしまいました。しかし、私の中に「総合職社員と一般職社員とでは、時間当たりの単価が違うのだから、これくらいの仕事はAさんにやってもらいたい」との思いがあり、その気持ちが態度に現れていたのだと思います。
そして、当時の上司から「お前はバカだねえ。普段から『磯ちゃんの仕事なら、手伝ってあげたくなる』と思わせるように接しておかなきゃ」と諭されました。
その一方で、別な先輩からは「総合職と一般職では、役割も時間単価も違うのだから、最も効率的な時間の使い方を考えなさい。何でもかんでも自分でやろうとするな」と教えられていました。
効率的に働きなさい。生産性を考えなさい。全体最適を忘れるな。
そんな風に教えられ、仕事に感情を持ち込まないことが正解だと思うようになっていたのです。
しかし「お前はバカだねえ」と言われ、人は、効率や生産性よりも感情で動くものだと気づきました。ちなみに「お前はバカだねえ」と言われたとき、ムカッと腹が立つのではなく、素直に助言を聞く気になれたのは、この上司の部下への接し方がいつも適切だったからだと思います。

先日、某社の社長を退任した人(Bさん)と会話して、自分の過去の失敗を思い出しました。
Bさんは、大手企業の役員を務めた後、グループ会社の社長に就任し、引退した現在は地域での活動に力を入れています。
「いつの頃からか、自分の1時間には10万円以上の価値があると思ってやってきました。昔は、マンツーマンで誰かと1時間を過ごしたら『この人との1時間は10万円以上の価値があった』『この人は私の時間の価値に気づいていない』なんて思っていたのですが、単価を気にしなくなったら、交友関係が広がりました」
とBさんは笑っていました。
「自分の1時間には10万円の価値がある」と常に意識していたら、仕事の時間はもちろん、 プライベートでも誰と会うべきかを選別してしまうのかもしれません。

「幅広い交友関係が自身の幸福度を高めている」と考える人もいますし「誰と会うかを選別して効率性を追求したい、それが自分にとっての幸せにつながる」と考える人もいます。
価値観は人それぞれですが、効率至上主義に陥ると地域活動においても職場でも、ちょっと浮いた存在になりそうなので気をつけたいと思います。

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