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ITで解決するか、気持ちで解決するか。 『ISO通信』第72号(2022.6.24)

「指差し確認」の習慣に今でも助けられています。
新卒で入社した会社がメーカーだったので、指差し確認をしっかりと教えられました。指差し確認は「指差し呼称」や「指差し喚呼」とも言われ、見たものを指で差し、声に出して確認することでリスクを回避します。
駅のホームに入ってきた電車を駅員さんが指で差し「停止位置よし!」と言っている場面を見ることがありますが、停止場所のミスを防ぐための有効な手段だと思います。

私の場合、毎朝自宅を出る前に、財布、定期入れ、スマホなどの忘れ物をしないために指差し確認をしています。「財布よし!」「スマホよし!」とまでは言わないものの1、2、3、4と声に出しながら指で差し、忘れ物を防いでいます。
忘れ物をしがちな長男に「指差し確認すれば、忘れ物しなくなるぞ」と言ったら、意外な答えが返ってきました。
「指差し確認することを忘れたら意味がないじゃん。指差し確認したり、コツコツ努力することが苦手な人もいるからね。だから、忘れ物をしないようにITで解決したいんだよ。財布や定期券をスマホに入れようと考えた人は忘れ物の名人だったかもしれないよ」
プログラミングを覚えた長男は、不便なことがあるとITで解決しようと考えるようです。
長男の言葉を聞いたとき「何でもITで解決しようなんて安直だし、指差し確認で十分だ」と考える自分と「待てよ、不便なことがあったらテクノロジーで解決しようと思う人間が世の中を進歩させてきたのかもしれない」と思う二人の自分がいました。

私自身は、面倒くさいと感じたことを心の持ちようで解決しようとするタイプです。例えば、通勤。自宅でリモートワークできると楽ですがコロナ以前から通勤が苦ではありませんでした。電車の中は読書の時間、それ以外は歩行運動の時間と考えていたからです。在宅で仕事をしていると読書の時間と運動の時間をひねり出す努力が必要になります。通勤では読書と運動の時間を自動的に確保でき、街や季節の様子が目に入って来るので脳も刺激されます。そうは言っても、毎日通勤しているとリモートワークが恋しくなったりもします。

毎日オフィスに出たい人もいれば、全く行く必要を感じない人もいるでしょう。最適な出社率は人それぞれです。自分では60%の出社率が快適と感じた場合でも、もっとも生産性の高まる出社率は別な数字かもしれません。AIやITを活用して、本人が快適と感じる出社率と生産性が最高になる出社率をバランスよく計算してくれるアプリを開発してみたらどうでしょうか。「今週のあなたは3.5日の出社が最適です」とリコメンドされてその通りにしたら、周りの人は週に一度しか来ていなかった、ということがあったら、納得しがたい気持ちになりそうです。

勤怠管理にはITシステムが有効ですが、出社率は職場の雰囲気や労使交渉などのアナログな手法で決めた方がよさそうです。米国のアマゾンやアップルでも労働組合が結成されることになったそうですが、その背景に出社率をめぐる労使の攻防があったりして、と考えると最先端企業にも人間味を感じます。

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