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成果発信イベント「TOKYO ISLANDHOOD DAY」開催レポート(後編)

「TOKYO ISLANDHOOD with STARTUPS」の成果発信イベント「TOKYO ISLANDHOOD DAY」が伊豆大島のコワーキングスペース「Izu-Oshima Co-Working Lab WELAGO」にて開催され、Zoom・Youtubeによるライブ配信が行われました。

今回も前回に続いて成果発信イベントの様子をお届けします。なお、実際のイベントの様子はYoutubeよりアーカイブ配信映像がご覧頂けますので、そちらをご覧ください。本レポートではそれぞれのセッションを通じて気づいたこと、感じたことなどをWEBメディア「東京都離島区」編集部の千葉がお届けします。


セッションテーマ「島と生きる」
ー 想いをつなぎ未来を続ける責任と覚悟

3つ目のセッションテーマ「島と生きる」では、成果発表者として株式会社ライトライト 地域連携推進チーム 松田稜平さん、アイランデクス株式会社 代表取締役 池田和法さん、ゲストスピーカーとして利島村役場産業観光課 課長の荻野了さん、鹿児島県三島村よりNPO法人みしまですよ 理事長 山﨑晋作さん、モデレーターとしてTOKYO ISLANDHOOD事務局の上田嘉通さんの5名で進行しました。

松田さんは、地域において小規模事業者の事業承継を進めていく際のポイントとして、自治体や地域のキーマンと連携して取り組むことが大切で、自社が手掛けるサービスを効果的に機能させるために、伴走するコーディネーターを手配するのはもちろん、地元のコミュニティのインフラ的存在である自治体や各支援機関の協力を得ることで無理なく地域のコミュニティに入っていくことが出来るとお話されました。

池田さんは、島で事業を行う際に自社の事業アピールや他社との比較はせずに、対お客様、対事業者として一対一で向き合う姿勢を大切にしながら、島への移住という人生にとって大切なターニングポイントに関わらせていただくという気持ちを忘れずに取り組んでいきたい、とお話されていて、池田さんの素直で優しい人柄が滲み出るようなお話に心響きました。

続いて、利島の荻野さんからは、高校のない小さな島だからこそ、子供達は15歳で親元を離れ島を出る運命にある。そんな子供に対して親として島に生まれ育ってよかったと思ってもらいたい、そのために貢献できることはないかと常に考えているというお話にあらためて島が持つ特殊な環境や、別れや出会いが明確な島だからこそ人のつながりが強固になるのだと気づかされました。

三島村の竹島に住む山﨑さんは、人口59人の小さな島だからこそ、自覚と覚悟を持つことはもちろん、楽しむことを大切にしている。住んでいる一人一人が未来に与える影響が大きいからこそ、その自覚と背負っていく覚悟が必要となる一方で、自分の役割を明確に与えられるのはやり甲斐にも繋がっていると、小さな島で生きている山﨑さんならではの視点からのお話に、「島」と一言では片付けられないほど多種多様で、島ごとに独自の世界が広がっていることを実感しました。


「島とはじめる」
ー 島が新たな価値を生む場所になる

ここまで採択事業者とゲストスピーカーによる「島とつながる」「島の未来」「島と生きる」の3つのテーマからなるセッションが終わり、最後のセッション「島とはじめる」では、TOKYO ISLANDHOOD事業総合アドバイザーから東シナ海の小さな島ブランド株式会社代表取締役の山下賢太さんとZebras and Company共同創業者/代表取締役 Tokyo Zebras Unite 共同創設者の田淵良敬さん、TOKYO ISLANDHOOD事務局・一般社団法人離島総合研究所代表理事の上田嘉通さん、株式会社TIAMの伊藤奨と私、そして、モデレーターとして株式会社JTB総合研究所 執行役員 地域交流共創部長の河野まゆ子さんの6名で進行しました。

こちらのセッションではこれまでのトークセッションの振り返りや、TOKYO ISLANDHOOD with STARTUPSが島と採択事業者にとってどんな意味をもたらし、どんな価値を生み出しつつあるのか、それぞれの登壇者よりお話頂きました。

セッションの中でも特に興味深かったのが、山下さんの「右肩下がりでもいいじゃん!と前向きに捉えて取り組んでいくことで、島が最先端の場所になる」という発言。とても共感を覚えました。

革新的なビジネスモデルを持って展開することで短期間に急成長するスタートアップの代名詞である「ユニコーン企業」に対して、社会課題解決に向けて長期的目線から持続的に取り組むことで、地域住民をはじめ多様なステークホルダーに対してさまざまな価値をもたらす「ゼブラ企業」という概念があります。かつて都市化や工業化を是としていた高度経済成長期を起点とするテクノロジーの進化が絶対善だった時代に対して、現在は気候変動や環境破壊、倫理的価値観の変化等を通じて、テクノロジーを多様な価値観に合わせて活用しつつ、ライフスタイルの変容からイノベーションを起こしていく時代へと変化しています。

そんな時代だからこそ、日本の国土のうちの多くの面積を占める島々を含めた海域は日本にとって貴重なインフラになり得るのではないか。そんな場所から「右肩下がりでも喜べる新たな世界や価値をつくっていく」。この事業を通じて、島に関わる人たちとともに今後も継続的に取り組んでいくチームがつくれたら最高だし、実際生まれつつもある。島に関わる者同士、同じ目線に立って挑戦を続けていく「ISLANDHOOD」という名のチームがまさにここからスタートするんだ!そう思えた成果発信イベントでした。

そんな事業に島側から関われたことに感謝するとともに、『島の未来は明るい!』と前向きにとらえながら、島側からできることをしっかり見据えていきたいと思います。

執筆・編集:千葉 努(ちば つとむ)
株式会社TIAM 代表取締役最高技術責任者/トウオンデザイン 2010年に伊豆大島に移住。島を拠点にデザインオフィス「トウオンデザイン」を営み、コミュニティや場づくりをテーマにした多種多様なイベント企画やメディアづくりを行う。南北1,000kmに及ぶ東京諸島の豊かさを未来へとつないでいく株式会社TIAMを21年に設立。11の島々の魅力を伝えるメディア「東京都離島区」や、新しいワークスタイルの創出を目指す「多働海域コミュニティWELAGO」のデザインディレクション・プロジェクトマネジメントを行う。その他、一般社団法人大島観光協会 専務理事など。

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