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断罪のイゴーロナク


 ……その日、俺は連続首切り殺人犯を追っていたんだ。


「続けて、刑事さん」


 そいつは有名な殺人鬼だったんだ。犠牲者の首をチョンパした後、遺体に魔法陣かなにかの証を残すんだ。オカルト狂いだと思うだろ?

 だが、タレコミから犯人のねぐらを特定して……奴が築いた生首の祭壇を見たとき、奴の異様な風貌を見たとき、俺は得体のしれない恐怖を感じたんだ。多分、バカみたいに固まってたと思う。


「それから?」


 奴の犠牲者の仲間入りさ。鉈か何かが、俺の首をスッと抜けて、フィクションみたいにピューって血が飛んでいくのを見たよ。一発で首は落ちなかったんだろうな。それから仰向けに倒れた俺に馬乗りになって、あいつは何度も刃物を振り下ろして……他人事みたいに見てたら、いつの間にかこうだった。

「なるほど、そんな経緯だったんだね」

 なるほど、じゃないだろ。普通、首が飛んだら人は死ぬはずだ。じゃあなんで俺の意識がまだ残ってて、アンタは質問できてたんだ?

「……そっか、自覚がないんだ。自分で触って確かめてみたら?」

 …………。

 ………頭が、ない?

「私から見ても、君の首から上はすっぽり切られてる。でも、首から下はまだ生きてるんだよね」

 おいおい、頭がないんじゃ喋れない筈だろ。あんたがエスパーなだけか?

「違う違う、ちゃんと声を聴いてるよ。君の右手に口がついてるんだ。そこから喋れるようだし、さっきなんて、カロリーメイトを無意識に齧ってたんだよ」

 信じられない。

「他の器官も、多分どこかについてるんじゃないかな。私の声もちゃんと聞こえてるでしょ?」

 確かに。女性の声だってちゃんと分かる。


 ――そうか、俺はまだ生きているのか。

「もっと驚くと思ってた」

 仮にトラックに轢かれてこうなってたなら、もっと信じられなかっただろう。原因が原因だ。

「それで、これからどうするの?首無しの異形になってまで、これからどうしたい?」

 勿論、復讐だ。


【続く】

 


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