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NHKの契約ウーマンが来た話。【その2】

《前回の続き》

NHK契約ウーマンの笑顔の雰囲気が明らかに変わったのを感じ取った私は、
「怖い」と尻込みしてしまった。
ここから、このウーマンの一言ひとことで私が気になった(カンに障った)ものを振り返っていく。

「法律で定められてまして〜」
法律があるのは事実である。
しかし、罰則規定が無いことを奴らは絶対に公言しない。
憲法解釈を頭と雄弁さでこねくり回す政治家のよう姑息な手口だと、怖がりつつも話を聞きながら頭の隅で考えた。

「公共料金と同じものなんですよお〜」
それなら電気水道ガス契約のように、事前に不動産や大家から言伝があるに決まっている。
ウーマンいわく「テレビの説明書と一緒に申込書がある」と言っていたが、そんなこと誰にも、どこからも一言も説明されていない。ちなみにテレビを買ったのはもう4年も前の話だ。
大体公共料金なら、未払いを理由に受信を止めてくれて大いに結構である。
民放を愛する者として、残りの人生を謳歌するだけだ。

「払いたくない気持ちも分かりますが〜」
いや分かるんかい。だったら来んな。

後になってからいくらでも、回答が頭にポンポン浮かんでくるのは、私の悪い癖だ。
土壇場に弱いのである。

ドアを開けたり閉めたりを繰り返し、
冷静さを失った私は電話をかけまくった。
両親と彼に、電話越して何度も「落ち着け」と言われる始末。
社会人として大丈夫かと、だいぶ不安にさせてしまったと思う。
ピンポンは鳴り続けるし、挙句の果てに彼奴はドアを叩いて、何かをドア越しに叫び始めた。これも、近所への見せしめのような、奴らのマニュアルなのだろう。
根負けさせ、「契約した方が楽だ」と思わせる手法なのかもしれない。
(いややってることヤ〇ザと同じじゃねーか)

彼との電話で少し平静を取り戻し、
「テレビが無い」はとりあえず
今日は通じそうにないので、
あのウーマンを帰宅させることに目的をシフトした。

そこからの展開は劇的だった。
部屋着感満載の服を着替え、襟付きシャツを着用。
再び鳴るピンポンにインターホンで対応した。
「出掛けだったので、出かける準備してたので待ってください」
一方的にそう言い、相手の返答を待たず
インターホンを切った。

嘘だと丸わかりだが、バタバタと部屋を歩き回ってそれ感を出す。
無駄かもしれないが、それだけこちらも本気なのだ。
とにかく帰ってくれればそれでいい。
インターホンに出てからは、ひっきりなし鳴っていたピンポンが、少しの間止んだ。

次鳴ったら、次鳴ったら、と構えていたら
その3分後、再びピンポンが鳴った。
ドアを開けず、インターホンに出る。

ガチャ。
「すみません、今時間無いですし、それに声出すのも近所迷惑なので止めてください」
それまで恐怖に怯えていた私の、精一杯の抵抗だった。もうここまで来たら、良い顔なんてするだけ無駄なのだと、世間知らずな私はようやく悟った。(焦って対応しつつも、案外冷静さはあったのかもしれない。)

ウーマンの返答はこうだった。
「では契約書のボードを返してください」

勢いでドアを開け、彼奴の顔も見ず、
結局白紙の契約書とボード、ペンを突き返し
急いでる風にすぐにドアを閉める。
普段はしないのだが、鍵をかける音をわざと大きくした。

そこから10分。
再び、インターホンが鳴ることは無かった。

やった…やったのか…?
おそるおそる、ドアスコープから外を覗く。
先程まで佇んでいた茶髪契約ウーマンの姿は
忽然と消えていた。

「やった…やったよ…
僕とうとう、ザーグを倒したんだあぁぁぁ!!」
(トイストーリー2を観てください。)

(to be continued…)

#NHK #受信料 #エッセイ #新社会人 #日記

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