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金持ちジュリエット

 ジュリエットはあまりにも富豪だったので、自分を書いた張本人であるシェイクスピアを雇うことにした。
 まず、面倒な設定であるモンタギュー家とキャピュレット家の確執をなくしてしまう。これで物語は平和になる。次に、ロミオの顔を整形させる。ジュリエットは実は、老年の男性が好みだった。なので、ロミオには長髪の白髪と目尻の皺、鋭い眼光を付け足した。さらに10歳ほど年を取らせた。ティボルト、エスカラス、パリスなどの面々も、すっかり変わった。
 シェイクスピアは嫌になってきた。なぜ自分が書いた登場人物に買収されて、好き勝手に改作されているのだろう。いかに金が必要といえど屈辱的ではないか、と。
 シェイクスピアはジュリエットからの金を突き返した。そして登場人物の容姿も、軋轢も、運命も、元に戻した。

 ただし、ジュリエットに関しては別だった。シェイクスピアは懲らしめてやろうと思い、彼女を死ぬように仕向けたのだった。

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