合理的な人におすすめのバトル漫画3選
バトル漫画なんてのは映画で言うアクション映画。ド派手な演出で興奮して満足感を得る頭空っぽのやつが好んで見るやつと正直思ってしまっている俺がこれは面白いと思ったバトル漫画3選。
亜人
バトル漫画を読んでいて感じてしまうこと。それは主人公補正によるご都合主義展開。主人公が死ぬなんてことはまずない。だから、どんなにピンチになっても結局はどうにかこうにか助かってしまう。もし死んだらそれは逆張りが過ぎるか、最終話いってから。
一歩譲って主人公が助かるのは良いとして、代わりに主人公よりも強い人(上司とか先輩)が身代わりに犠牲になるパターンは全くもって合理的ではない。
将軍が馬に乗る理由は負けそうになった時に逃走できるようにするため。優秀な人材はそこまで育てるのにコストがかかっている。また、才能の有り無しは運によるところもあるので、余計に失うわけにはいかない。本当に仲間や味方を守りたいなら下級兵士をいくらか犠牲にしてでも上級兵士を守るべき。
そんな風に考えているので、主人公が身代わりになってくれた人のことを思ってメソメソしていたり、一念発起するお涙ちょうだいシーンはアホらしと思ってしまう。結果論的には主人公がラスボスを倒す展開にはなるので、主人公を助けておいて正解ってことにはなるんだけどそれこそご都合主義展開で萎えてしまう。
そんな、合理的な人には亜人がおすすめ。なぜなら、亜人のバトルは主人公が死ぬこと前提の戦い方だから。寧ろ、いかに上手く死ぬかが重要ですらある。
亜人はサイコパスVSサイコパスの漫画と紹介されていることもあるが、俺から言わせると生き死にがかかっている中でいつまでも綺麗事言ってる漫画の主人公の方がサイコパス。亜人の主人公は不死となった人間がこの世界観に落とされたらどう行動するかと考えると至って常識的な行動をしていることが多いと思われる。(ヴィラン役の佐藤に関してはサイコパスと言われても仕方がない気もするけど)
合理的な人はよく冷たい人と言われてしまう。しかし、それは本当か?という投げかけが本編でされる。このシーンは合理的な人の自己肯定感アゲアゲシーンなので必見。合理的ではない情動的な人へのフォローもしっかりしていて、客観的に分析して判断を下すことができる合理的な人の素晴らしさを描いた良いシーン。
主人公の圭は人情を持ち合わせつつも合理的な人間である。合理的な人間=感情がなく、冷酷無比と思っている人にはぜひ亜人を読んで認識を改めてもらいたい。
合理的な人間の「戦いに犠牲はしょうがない」というセリフ対して「お前には人の心がない」と(主に主人公キャラが)返して何も言い返せず、綺麗事を言うキャラの人情深さにフォーカスが当たるという展開がたいていの漫画。しかし、亜人はしっかりこれにアンサーを返す。全合理的人間が良くぞ言ってくれたと亜人を読んで思ったに違いない。合理的な人間は事実を述べているだけでそれの良し悪しについて言っているわけではないのだ。
合理的な人間は人の心や思いを大切にするからこそ、“思う”だけでは終わらせないのだ。だから、嫌な奴と言われても合理的に行動し続ける。
そんな嫌な奴としての生き方をできるお前にしかその役目はできないのだと背中を押してくれる漫画。それが亜人だ。
ワールドトリガー
亜人の不死設定のようにワールドトリガーにはベイルアウト(緊急脱出)と言う設定があるので実質死なない。この設定が少年、少女が戦争をしているにも関わらずそこまで殺伐としていないことの説得力になっている。
また、ワールドトリガーの登場人物は全員賢いので「頭の悪いこいつが足を引っ張っている」ということがないのでストレスなく読める。得意、不得意、立場や価値観の違いで上手くいかないという展開はあれど、そこに愚かさはない。
ワールドトリガーは異世界人であるネイバーと戦争をしているわけだが、しっかり戦争をしているところが良い。強い敵に対して数的優位を取る。主目的のために倒すことではなく時間稼ぎに徹する。戦闘員を無闇やたらに損耗させないなど合理的に戦っている。
ベイルアウトの設定で好きなところは、使用トリオン量が他の兵装より格段に大きいというところ。そこがそうまでして戦闘員を保護する重要性をこの組織は理解しているだぞ、と作者が言っている気がしてうんうん分かるぞーと言いたくなる。多くのバトルマンガは戦闘員が無茶して簡単に死に過ぎ。もっと貴重な戦闘員大切にして(カミカゼアタックいくない)。
そして何より戦闘だけでなく、敵情調査や交渉、工作といった政治活動まで描いているところが良い。勝利とは倒すことが全てではない。寧ろ、戦わず敵を殺さず取り込んで活かすことこそ完全勝利である。
戦いの中で友情が芽生え最後は和解してハッピーエンドという展開は俺的にはありえない。個人の喧嘩ならまだしも集団対集団になったらもうどちらかの殲滅か合理的な利害調整による停戦しかない。だからこそバトルものできっちりハッピーエンドをやりたかったら、戦う理由を極めて合理的なものにしなければならない。普通はそれを描ききれずなんとなく主人公のカリスマでラスボスが改心し表面上和平を結んで終わりとなってしまう。しかし、ワールドトリガーはネイバー勢が侵略してくる理由や細かい情勢をしっかり描写していて、かつ先に述べたように登場人物全員賢いので、話し合いにより利害調整が取れて大団円ルートがワンチャンあり得そうな気がする。今後が楽しみである。
少年漫画だけど子供だましではない漫画。それがワールドトリガー。
進撃の巨人
メジャーになってくれて本当に良かった漫画。ヒットしてくれてなかったらタイトルや表紙から「奇をてらったパニック系かな?」とスルーしていたに違いない。
ワールドトリガーの項で集団対集団の争いは殲滅or合理的停戦と書いたがそれをリアルに描いた作品と捉える。争う理由が合理的なことばかりだったら話し合いで解決できるかもしれない。しかし、現実は合理と非合理が混じり合いかつ異なる立場の人間がそれぞれ異なる世界を見て生きているので話し合いで解決はまぁ不可能だよねと思わされる。
進撃の巨人は視点が目まぐるしく切り替わる。見る立場によって世界観や物語が変わる。被害者が加害者にヒーローがヴィランに未来が過去に。
合理的な人は良いとか悪いとかをすぐに言う感じ苦手だと思う。どの観点から見るかによって良くもなるし悪くもなる。さらに言えば、絶対的な善や悪はなく組み合わせや切り取る時間軸の長さで物語は変わると思っているのではないか。よって物語を読むときに表現としてヒーローやヴィランという言い方をしてもこれは主人公から見た時の物語では主人公がヒーロー、みたいな読み方をする。なのでずーっと主人公からみた主人公にとって都合の良い描写ばかりされると物足りないと感じてしまう。そんな人は進撃の巨人を読もう。様々な視点から進撃の巨人ワールドを描写してくれるので、自分なりに納得のいく読み方が模索出来ることだろう。
進撃の巨人のメッセージは平和と愛だと思っている。本編は読めば分かるが描写としては平和はなく殺戮の連続、愛は皆無とは言わないがそれ以上に憎悪や怒りに満ち溢れている。何かを語るにはそれと真逆の価値観をも全力で語らないと伝わらない。平和を語りたかったら、戦争を語らなければならない。中観、中庸、中道、世間ではバランスが大事だなどと偉そうにいう者が多いがそういう奴のほとんどは片一方しか見ていない。
進撃の巨人は視点を右左に動かされたあと今度は上下さらには自分が今いる場所から別の場所に移動させられ再度前後左右上下を見させられる。そんな多次元俯瞰視点力を鍛えられるIQ向上漫画。それが進撃の巨人だ。
おわりに
他にバトル漫画といったらHUNTER×HUNTERがあるんだけど、これは殿堂入りということで良いでしょうということで3選からは外している。完結できるんかなぁ?
漫画家は命削り過ぎ感あるのでベイルアウトさせて上げたいけど、そうなると続きが読めなくて悲しいのでどうにかなって欲しい。
人は腹だけ満たせば生きていけるわけではない。心も満たさなければ。そういう意味でエッセンシャルワーカーと呼ばれる職業の中に漫画家などのクリエイターは含まれると思っている。パンとサーカス上等。飯と娯楽の為に生きてやるぞおい!
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