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続報4 新型コロナ感染者の一元管理システムは役に立つのか

感染者情報一元管理システムが稼働する

これまで、新型コロナウイルスに関する厚労省データについて、色々言ってきた訳ですが。

5月1日、新型コロナ感染者情報を一元管理する新システムが、5月中に稼働する見込みであることがわかりました。

厚生労働省は2020年5月中旬をメドに、新型コロナウイルス感染者の情報を全国で一元管理する情報システムを稼働させる。全国の保健所や病院が感染者情報を新システムに入力することで、国や自治体などが感染状況をいち早く共有できる体制を整え、医療機関は患者の治療にも活用する。自宅などに待機する軽症者には健康状態を報告するスマートフォン用アプリを提供し、症状が悪化した際の迅速な治療につなげる。


このシステム導入が成功すれば、その効果はかなり大きなものがあるでしょう。

①保健所や自治体・厚労省の事務処理負担が著しく軽減される。
②その結果、業務処理のボトルネックがなくなり、PCR検査が増やせる可能性が高まる。
③政府や自治体が、リアルタイムで現状をより正確に把握しやすくなる。
④民間も含めた集合知が機能しやすくなる。

あまりに遅きに失するとしか言いようがないですが、とりあえず一歩前に進んだことは評価したいと思います。

ともあれ、以前の記事で私は以下のように指摘していたのですが、残念ながら懸念は正しかったとも言えます。

しかし、厚労省の公表する情報を見る限り、そもそも「元データ」なんか存在しないんじゃないか、という疑念をどうしてもぬぐいきれません。厚労省のデータの扱いの杜撰さと無理解を見る限り、すべての検査者と検査データを把握していて、その上でわざと子供だましのデータを公表している、とはちょっと思えないのです。

システム開発の経緯

実は、新型コロナウイルスが発生するたびに、医療機関から都道府県に、FAXか郵送で書式を送付することになっていました。

電子カルテに付属の書類作成アプリからプリントアウトできる、との情報もあります。しかし、同じ書類を郵送なりFAXなりで送られてきた都道府県の人たちは、これを再入力しなければいけません。指数関数的に陽性確定者が増えると、この無駄な事務処理作業も指数関数的に増大することになります。

郵送でもFAXでも、どうしてもリアルタイム集計は不可能ですし、郵送なら病院内の新型コロナウイルスが付着して感染を拡大する恐れさえあります。

このシステムが導入された経緯は、以下の通りです。

4月23日、「キュート先生 呼吸器内科医」さんが、この問題について以下のようにツイートしました。

このツイートを、河野太郎防衛大臣が拾いました。

で、平将明・内閣府副大臣がそれを拾って、システム化につなげたのです。

現場の声を拾って制度設計につなげた今回の出来事は、とても良かったと思います。ただし、これは本来なら、感染拡大最初期に、政権内あるいは官僚から、持ち上がっていないといけない話のはずです。すべての自治体が、統一されたフォーマットでデータを都度アップロードして、それを政府が全データをリアルタイム集計し、また集計データと元データを全国民に公開すべきだったのです。

それがずっと放置されてきたことの恐ろしさは、強調してもしきれません。

ともあれ、河野防衛大臣は、今回のパンデミック対応については、現政権内でほぼ唯一まともな人間に思えます。グダグダだったダイヤモンド・プリンセス号で、自衛隊の対応だけは迅速かつ的確でしたし。まあ、ただのオムレツですが。Twitterでブロックされてますけど(笑)

システムの欠点と改善案

とりあえず、このシステムについて「厚生労働省新型コロナウイルス感染症
対策推進本部」が書いた「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(仮称)の導入について(システム概要、準備の御案内及び先行利用保健所の募集)」と題された書類に、目を通しました。

↓タイトル未設定になってるけど、これが文書のリンクです。

どうやら私のNoteを厚労省関係者(橋本副大臣など)が読んでいたこともあるらしいので、1つだけ重大な指摘しておきます。

これどこをどう読んでも、「感染者」の情報把握しか考えていないように、どうしても読めてしまうのです。これだと、政策決定のための統計データとしては、価値は著しく減ってしまいます。

検査結果で陽性になった人だけではなくて、検査者全員をデータベース化しなければいけません。

実際、毎日新聞の記事では、陽性率を政府が把握できない理由として、次のような指摘があります。

国内の感染状況を分析するための重要な指標だが、検体を採取する機関が多数ある上に、その検査結果が判明する日にちもバラバラになりがちで、陽性率の算出に不可欠な「分母」(新規検査人数)と「分子」(陽性者)を全国的に把握する仕組みが存在しない。https://mainichi./articles/20200503/k00/00m/010/138000c

検査の母数がわからなければ、当然のことながら陽性率は把握出来ません。感染疑いの人の一部しか検査できない現状において、感染が拡大しているのか縮小しているのかを見極めるために、陽性率は極めて重要な指標です。それが今わからないのです。

大事なことなので繰り返しますが、陰性の人も含めた全検査者について、データベース化する必要があるのです。それがわかれば、属性別の陽性率も、地域別の陽性率も、時系列陽性率推移も、ごく簡単に把握出来るのです。

わかりやすく言い換えれば、どういう人たちが発症しやすいのか、どこで流行ってるのか、流行が収まりつつあるのか拡大しつつあるのか、誰でも目で見てわかるようになるのです。

ここが最も肝心の点なので、ぜひとも厚労省としてはデータ設計を見直していただきたい。

ついでながら、新型コロナに対応している病院の現状把握システムを付けてもらいたいなとも思います。つまり、政府や各保健所や自治体が、病院ごとの空き病床数を把握したり、サージカルマスクなどの防護具過不足状況を把握できるようにする必要があります。

現状、保健所が、感染者の受け入れ先病院を探すのに、いちいち電話連絡しているという話を聞きます。これが、PCR検査数拡大や治療拡大の、1つのボトルネックになっている可能性が高いです。

また、医療機関の物資の状況については、オープンデータとして全国民に公開してもらえれば、寄付などによって状況が大幅に改善する可能性があります。

厚労省さん、読んでいたら、上記の件、ぜひご検討ください。

追記

さっきの厚労省文書、読み直したら凄かった。冒頭からこんなこと書いてました。

新型コロナウイルス感染症に関する患者等の情報については、日々のご報告・ご連絡等をお願いし、メールや電話等により、お問合せをさせていただいているところですが

やはりか・・・orz

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