【研究室座談会02】 コミュニケーションデザイン/サステナブルデザイン/コマーシャルデザイン/環境デザイン
今回はコミュニケーションデザイン研究室、サステナブルデザイン研究室、コマーシャルデザイン研究室、環境デザイン研究室の4名にお話を伺いました。(注:本記事は6月上旬に取材を行っており、現在は研究テーマ等が変化している可能性があります。)
普段の活動について
質問者:まず自己紹介がわりにそれぞれの研究室で何をしているのかを教えてください。
コミュニケーションデザイン研究室(以下コミュ):
スマートフォンやパソコンのwebサイトのようなメディアを通して何かを伝えようというときに、どういった方法だったら、より効果的でより魅力的に伝わるかを一番に研究しているところです。
質問者:なるほど、では基本的には情報伝達のためのUIデザインを中心に取り扱っているのでしょうか。
コミュ:そうですね。グラフィックに限らずUX全体も含めて幅広くコミュニケーションデザインとしてとらえているため、やっていること自体は研究室の中でも結構バラバラですが、何か情報をユーザーに伝えるという点は共通しています。
コマーシャルデザイン研究室(以下コマ):
アウトプットはコミュニケーションデザイン研究室と似てくる部分もあります。でも、今卒業研究で動画を作っている人がいたり、私も環境に近い分野の研究をしていたりするため、守備範囲は広いです。
サステナブルデザイン研究室(以下サス):
SDGSという未来に続く社会のための17個の目標に関する研究をしている人が多いです。
持続可能な社会のために何をするかというテーマが決まっていて、そこからプロダクトを考えるのかシステムを考えるのかは、完全に個々人に任されています。そういった意味でアウトプットの仕方がすごく自由です。
環境デザイン研究室(以下環境):
墨田区で行われるプロジェクトに関係する活動が主です。子供の遊びを考えるものや、植物の活用を考えるものがあります。
最近だと、墨田区に新しいキャンパスができたので、どうしたら墨田の町の環境をそこに住んでいる人にとってより良くできるかということを考えています。
質問者:環境というのは具体的にどういうことを指しているんですか?
環境:例えば子供にとっての遊び場であるとか、社会人の方だったらオフィスとか。生活を営んでいる場のことです。
そういう環境をより良いものにしたり、例えばオフィスに植物工場ができたら生活はどう変わるの? というような、新しい環境のあり方をデザインで掘り起こすみたいなことを考えます。
質問者:コミュニケーションデザイン研究室とコマーシャルデザイン研究室が似ているように感じたんですが、それぞれの特徴はなんでしょうか。
コミュ:コミュ研は例えば、何かをこれの魅力を伝えたいっていう思いがまず最初にあります。その魅力を伝えるためにはモーショングラフィックスがいいのか動画がいいのか、それとももっと魅力を味わえるようなプロダクトを作るのか……表現方法はいろいろですが。
本質はこの魅力を伝えたいとか、ユーザーに適切に情報を伝えたいとか。情報の伝え方に力を入れているのが特徴かなと思います。
質問者:なるほど、コマーシャルデザインは商品が先にある感じなのかな。
コマ:私の認識としては「モノと人をつなぐところにあるデザイン」っていう感じ。でも、研究の内容としては本当にそれ以外でも何でもやってるんで。コミュ研とはやっぱり似てる感じがします。
今、なにしてる?
質問者:ではここからは皆さん個人が、今研究室で何してるのかを伺いたいです。
環境:今はデザイン総合プロジェクトを中心に活動しています。その中で僕は墨田区の観光について、それからどうやって人を誘致していくのかとか、墨田区の魅力をどうやって発信していくのかということについて取り組んでいます。
質問者:おもしろそうですね。具体的に伺ってもいいですか。
環境:基本的に墨田区役所の観光課の方と一緒になって活動を進めていて、例えば昨年度であったら墨田区役所の運営するオンデマンドバスのデザインをしました。今は、すみだ区に点在する歴史散策案内板っていう看板をリニューアルデザインすることを主に、墨田区の魅力の発信のため活動しています。
質問者:どんなことを大切にしてデザインされていますか。
環境:デザインしたものを実際に使うユーザーの方や、デザインを依頼してくださった方々の、生活や思いを大切にしたいと思っています。自分達が素敵だと思っても、使う人にそう思ってもらえなかったら意味がないので。
作ったデザインを観光課の方や、墨田区にお住まいの方に見せてフィードバックをいただいたりもします。
サス:夏休み前くらいに海外で行われるコンペがあり、それに向けて作品を作っています。自分の卒業研究と関係する分野でコンペの作品を作る予定です。
コマ:私は卒業研究を進めています。防災に関係するデザインをしたいと思い、今は子供向けの防災イベントを考えてます。ぜんぜん、まだまだ計画段階ですが(笑)
コミュ:自分が結構ゲーム好きなのもあって、スマートフォンゲームのユーザーインターフェースを考えてます。
スマートフォンゲームのインターフェースは、スマートフォンのUIらしい機能性に振り切ったフラットなデザインと、テレビゲームとかであるような装飾の凝った複雑なUIの間、折衷したところに存在するものだと思ってるんです。世界観を伝える魅力的なデザインにしなきゃいけないけれど、スマホと地続きで操作するから装飾を削いだ分かりやすさも捨て難い所がある。どうやって折衷するのかを考えて、最終的には実際にゲームを作れたらなって。
質問者:面白そう。展示が楽しみですね。
コミュ:今は調査の段階です。スマートフォンゲームのデザインをみんなに見てもらったら、予想通り、フラットなデザインと凝ったデザインの中間が好かれやすいことがわかったんです。次は、好ましいと感じられたUIが持つ要素を分析して、制作に活かします。
なぜこの研究室に決めたのか
質問者:では次に、皆さんが今所属していらっしゃる研究室を志望した理由を伺ってもいいですか。
サス:自分の場合はやりたいことが多かった(笑)。配属前はコミュニケーションデザインと環境デザインをメインで勉強していたんですが、ジャンルが結構違うじゃないですか。3Dと2Dで。どっちもやりたいし、他にもやりたいこと色々あるしってなった時に決めきれなかったんで。じゃあ一番自由にできるところはどこかな? と思って。
環境:僕はコミュニティデザインの分野に興味があったんです。人と人との繋がりをどう作るのかを考える分野なんですけど。
それがコミュニケーションデザインや環境デザインに派生して、両者の中でも現実世界の空間や人の生活に密着した環境デザインに特に惹かれ、今の研究室を志望しました。
サス:私は配属前、工業デザインをメインで勉強していて、授業では形のある製品とシステムなどの形のない製品をどちらも扱っていました。どちらも魅力的だったので、自由な媒体でデザインできる研究室が良いと思ったのが理由の一つです。
研究室の先生がナッジ理論を紹介してくれて、それに感銘を受けたのもあります。デザインの力で人を動かすというのが面白そうで。それが持続可能な社会につながることならすごく良いデザインの活用方法だなと思い、この研究室を志望しました。
コミュ:環境とコミュを取ったんですけど……自分は平面の方が向いてるなと思ったんです。UIのグラフィックやポスターデザインの方が自分は得意だなって。自分のやりたいことってこととできることが完全に一致していて、ここしかないと思いました。
研究室を一言で表すと?
質問者:ありがとうございます。では、つぎの質問です。
「皆さんが入った研究室を一言で表すと?」……どうなりそうでしょうか。
サス:『ベンチャー研究室』ですね。サス研は新しい研究室で、あんまり決まった形がありません。だからこそ自分の好きなこと、やりたいことを、やりたい分だけしっかりできる。あと、決まった形がまだないからこそ、自分が第一人者になれる。
コマ:『放し飼い』ですかね。長い時間をかけて自分の卒研を進めるので、本当にそれぞれが自由に自分がやりたいテーマを模索しています。たまに集まってみんなで他の人の研究の話を聞いたり、先生にアドバイスをいただいたりするので、本当に自分がやりたいことができます。反対に、自分でやろうとしないと何もできない。意志が大事です。
コミュ:無難ですが、『居心地が良い研究室』です。先生が二人いらっしゃって、それぞれ角度の違うアドバイスをいただけるため、研究が進めやすいです。
環境:うちの研究室は「みんなの居場所」です。
いわゆる研究室! って感じがしない研究室なんです。研究室の奥にソファがあって、みんなの遊び場みたいな感じになっていて。
例年ならゼミ旅行やゼミが終わった後のご飯会とか色々と企画もあったみたいです。最近は自分達の学年だけで夜な夜な集まってスマブラをする会が開かれてます。そのまま研究室で夜を明かして、そのままゼミに参加したり(笑)。
最後に
質問者:では、最後の質問です。意匠展2023への意気込みなどお願いします。
環境:今年からデザイン総合プロジェクトが復活して、今までとはひと味違った展示になると思いますので、どうぞお楽しみに。
サス:かっこいい見応えのあるものを頑張って作っていきたいと思います。
コミュ:今年度のコミュ研は精鋭ぞろいです。すごいことをしている人がいっぱいいます。期待していてください。
コマ:コマ研の中でも色とりどりな幅広い作品ができると思います。可愛い作品もたくさん出るので楽しみにしていてください。
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